【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~
あらすじ・目次
第三部 六章
リベルタドーレス ~解放者たち~
1169.ゴブリン観察①
塀に近付いて覗き込んだレイブの目には聞いた通りの緑のニンゲン、的確に言えば緑の小鬼の姿が映ったのである。
下段の広場の奥寄り、手前とは違いゴツゴツとした自然由来に見える岩壁に空いた洞穴から、周囲の様子を窺いながらオズオズと姿を表していた。
数は多い。
まだ洞穴の中にも残っているだろうに見えているだけで軽く百を越えている様だ。
男女に幼体、子供もかなりの数だし中には誕生から間もない個体、所謂赤ん坊を抱いた親らしい姿も見える。
衣服は殆ど裸である。
みすぼらしい腰みのを申し訳程度に巻いているだけで、羞恥の姿を見せていない所から察するに、事前に聞いていた通り、知性が低い事が見て取れる。
体躯は総じて小さい。
この隠し穴で生活している事を鑑みれば、いづれ例の小槌で小型化させられているのだろうが、男の背丈はレイブやグフトマの肩まで届かない程度で、女は更に小さく見える。
縮小率が同じだと仮定すれば、まあ、小人と呼んでも差し支えない大きさだろう。
身体の形状は二足歩行の人型、体色は緑がかっている物の個体毎の濃淡の差が大きい。
全体から見ればごく小数、一割に満たない個体が薄緑で一番薄く、対して体はやけに大きくレイブを上回る者が多くを占めている。
鬼と表現した主な理由は口元から覗く鋭い犬歯と、長く分厚く伸びた爪の存在に因る所が大きい。
とは言え、角を有する者も少なからず散見される。
いづれも彼等の小指の先位の短い物で、寧ろ瘤と呼んだ方が相応しく見えた。
本数はバラつきがあり、一本から十本近くまで様々である。
注意深く観察すると、無角の者は女性と幼子に集中している事が見て取れる。
サイズと色目こそ独特に見えるが、総じれば人々が暮らすニンゲンの里、それと大差ない個体差を有している事がビシビシと伝わって来ていた。
聞き及んでいる通り、ニンゲンのモンスター、正しくその姿なのだ、改めてその事に思い至るレイブであった。
何より共通して見えたのは、里にあるニンゲン同様、飢えて痩せこけたであろう苦境に生きる姿、それである。
彼等の住む居住区である下段に姿を表したグフトマとホブゴブリン達は、慣れた動作で作業を進めていった。
主に四つの班に分かれて作業に取り掛かっているようだ。
下段の広場に数箇所見て取れる水瓶を回収し、持ち込んだ新しい瓶に交換し始める者。
そこかしこに無造作に撒き散らされた排泄物を一纏めにした上で回収し、先程別の班が回収した古い水を散布し清め始める者。
広場の中央にある岩を並べたサークルから石の欠片の様な物を回収し、入れ替える様に同様の欠片を流し入れている者。
そして周囲を睥睨しつつ、迫力有る視線を油断無く送り、近付こうとしているゴブリンを威嚇し続けているグフトマと大柄なホブゴブリン三体。
忙しく働いていた三班はそれぞれ自分たちの作業を手際良く終わらせると出口の近くに戻り中央のグフトマに視線と頷きを送ったのである。
アイコンタクトを受け取ったグフトマは、暫らくの間、そのままで周囲のゴブリン達を威嚇し続けている。
何かを警戒しているかの様に見えるゴブリンたちはジワジワと距離を詰めていたが、申し合わせた様に一定の位置で進みを止めて様子を窺っているようだ。
傍目で見ているレイブにはグフトマと三人のホブゴブリンがゴブリンたちに囲まれて身動きが出来なくなってしまったかに映った。
襲われる? その懸念は次の瞬間杞憂に終わる。
「良しっ!」
叫びながら身を引いたグフトマ達と入れ替わるように、サークルに向かって躍り掛かるゴブリンの群れは、我先にと新たに置かれた欠片を奪い合い始めたのだ。
グフトマ達には一切の興味を示していない。
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まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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