見出し画像

ボーカロイドの深淵を覗こう #32

こんにちは。ボカロが好きです。ボカロはいいぞ

 さて、「アンダーグラウンドボカロジャパン」「感性の反乱β」「POEMLOID」「VOCALOIDよれよれ曲リンク」「ボカイノセンス」の全曲周回を目指して感想を書いていくシリーズの32回目です。第一回はこちら一覧はこちら

 クレジットについて、概要などに表記がなければ作詞作曲を投稿者本人が行ったとして表記します。絵や動画については概要欄/タグ/動画内にクレジットがある場合のみ表記します。

 万が一ですが、クリエイター様御本人で自分の曲を紹介してほしくないということがありましたらご連絡ください。

 数日前に「感性の反乱β」を中心に数百曲からタグが消されるタグ荒らしが発生していたのですが、すべてタグが復旧し、数日様子を見ましたが今のところ大丈夫なので再開します。荒らし、ダメ。ゼッタイ。

 それと、このシリーズはあくまで「レビュー」ではなく、「私が聞いた印象録」として受け取ってくださるとありがたいです。聞いてみて全然違う印象でも、各々が各々の内奥に起きた情動を信じてください。そして自分の感動(それは言葉としての「感想」でなくてよい)を大切にしてください。


それではいきます。


0311. Electrocardiogram / フィンクス

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:フィンクス
イラスト:てことま
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/6/13

 題名の意味は「心電図」。あやしい電子音と切れ切れな歌詞の切れ目が不思議で惹きこまれます。1:56からの少し激しくなったサウンドが特に好きです。
 「集中治療室にて―電子ドラッグを処方された少女は頭は過去へトリップ。錯乱し、嘆き、叫んだ。」(概要欄より)とのことで、頭の中で闘いが起こっているようなコンパクトな攻撃性を少ない音数とエレクトロな激しさから感じました。

0312. グッドジェネレータ / あぼんギャルP

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:あぼんギャルP
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/6/17

 左耳からはじまる激しいギターとドラムの奔流。不安定なミクの声がいい味で好きです。後半の高速歌唱も良いです。偽善で注目される人間への僻事でしょうか。思いの丈を率直にさ献じている感じがします。

0313. スペア / 問題児P

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:問題児P
ボーカル:歌愛ユキ
投稿:2010/6/18

 ユキの幼さと夢から覚めた寝ぼけた時間のようなふわふわした曲。サウンドも可愛さと不思議さが両方感じられます。「いつもはだめでも ときにはやれるさ」と自分に言い聞かせるような、か弱い生の苦しみのようなものを感じます。
 そして展開がとても面白い。これはぜひネタバレなしで聞いてほしいです。その展開が複雑な心情とリンクしているようでとても好きです。

0314. 根音ネネはどこいった! / 市蔵

タグ:感性の反乱β
作詞・作曲:市蔵
イラスト:さら
ボーカル:根音ネネ
投稿:2010/6/19

 UTAUの根音ネネ(ねね ネネ)のボイスで作られたノイジー動揺アレンジインスト曲。ノイズ感とピコピコ感が古ぼけたゲームセンターのような、不思議なファンタジーさやノスタルジーを感じます。すこし怖いけど、好奇心に惹かれて奥へ入ってしまうような、ひと夏の冒険の始まりのようなドキドキを感じるサウンドです。

0315. アンシクロペディストの見た夢 / k_zero+A

タグ:感性の反乱β
作詞・作曲:k_zero+A
イラスト:しいら
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/6/28

 もともと知っていて大好きな曲です。曲入りの優し気なピアノのフレーズ、49秒からのピアノとドラムがとても好きです。サビの伸びやかさと複雑さを同時に感じる美しさ、間奏のフレーズのかっこよさにやられます。アウトロのピアノの余韻もとても素敵。Aメロのシンプルなピアノの伴奏とギターのフレーズ、Bメロの上昇していくような音、緩急のとりかたもとても好きです。

0316. ビザール・システム / bunji

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:bunji
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/6/29

 激しいエレクトロな音がかっこいいです。添えられるミクの声を音として使っていて、呪文のようなミクの声がダークさを感じます。最後の打ち鳴らされる一定のリズムのドラムもラストスパートの疾走感があってかっこいいです。

0317. さしこみマウス / Bitstar(載しますP)

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:Bitstar(載しますP)
ボーカル:初音ミク / 月読アイ
投稿:2010/7/15

 「さしこみマウス」という言葉が面白いです。有線のPCのマウスのこと? 自由な打ち込みの間に「さしこみマウス」という声が音程やリズム関係なく散らばっていて面白いです。それでいて全体としてキャッチ―さも感じます。

0318. 初音ミクと一緒にがんばる / akitico1

タグ:感性の反乱β
作詞・作曲:akitico1
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/7/19

 10分の大作インスト曲。始まりのデスボイスからかっこよくダークでファンタジックな世界観を感じます。そこから切なげなピアノのメロディーになったり、ミクのコーラスが美しいメタルロックになったりと、一曲の中で語らずして物語を感じます。映画の劇伴のような壮大な世界です。特に好きなのは5:10からのシンフォニックな展開です。

0319. サイケな夢 / キャプテン・ハートビートP

タグ:VOCALOIDよれよれ曲リンク
作詞・作曲:キャプテン・ハートビートP
イラスト:さら
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/7/22

 イントロのシンセサイザーに惹きこまれました。「サイケな夢君に見させてあげる」という宣言のような歌の後、3:25くらいからの歪んだギターによる間奏も好きです。サイケらしく雰囲気が「よれて」いる感じがします。「トゥルトゥルルル……ワッ」というコーラスもかわいさとかっこよさがあって好きです。

0320. Guitar pop / どどんごP

タグ:VOCALOIDよれよれ曲リンク
作詞・作曲:どどんごP
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/7/22

 ミニマルなギターフレーズがとても気持ちいいです。乾いたようなギターの音色がかっこよくさわやかさも感じます。ミクの声が左右に動いているようで面白いです。2:50頃から始まるアコギの音色もきれいです。


今回はここまで!

← ボーカロイドの深淵を覗こう #31

320 / 3246曲(総曲数前回+27*):進捗9.86%

ボーカロイドの深淵を覗こう #33 →
*荒れていた時期をとばして6/25からの増加数です

周回の中で特に気に入った曲をマイリストに入れておきます



日記:2022/07/01

アンッグラッタグ~~~~私は~~帰ってきた~~!!

↑これは「俺の妹がこんなに可愛いわけがない。」アニメ二期で秋葉原に着いた時の桐乃の声で再生してください(あのシーンBD1巻のCMかなにかでめちゃくちゃ流れてませんでした?)

 大規模に荒らされたことを私が報告してタグが付いていた動画一覧を公開したその日の晩に全部つけなおしてくれた方がおりまして、問題を早期に鎮静化することができました。逆恨み等があったら大変なので公表は差し控えますが、本当にありがとうございます。大感謝です。

 そして反動か曲がめちゃ増えてる! うれしい悲鳴です。ガンガン聞きます、書きます。新曲のほうも6月以降すべて聞いてTwitterでシェアしています。

 というわけで結局いつもと大して変わらないくらいの期間で再開できました。再開というかもはや休止してないですね。

 とはいえ再開は再開ということでこれを機に「それと、このシリーズはあくまで「レビュー」ではなく、~」という文言を最初につけるようにしました。過去の記事などでこのシリーズのことを「レビュー」と表現してしまっていたところも少しあったのですが、そちらも修正しました。すみません。

 というのも、「語彙を尽くしてレビューすることの功罪」みたいなことを考える機会があったからです。

 「罪」として、まず、他社への影響の面から、他の人が同じ曲を聴いたときに感じた「うまく言葉にできない感動」を奪ってしまうのではないか、ということです。

 人は作品を聞いたとき多かれ少なかれ、快にしろ不快にしろなんらかの感動や情動が内的に発生するはずです。しかしすべての人が、あるいは一人の中でもすべての作品に対してその思いを具体的に言葉にすることができるとは限りません。そして、言葉にできないのは何一つ悪くありません。

 むしろ、「言葉にはできないがとにかく好きなんだ」という想いこそ感性に従った純粋な感動であり、芸術として最も価値のあるものなのではないかとすら思います。もちろん知識や語彙力、己の感性を磨くことや、作品を分析的に考えることも、その作品の良さをつまびらかにするという目的においてとても重要です。しかしながら、個人としては別にそんな高尚なことを考えなくても「好きをもっと信じるのさ」という気持ちを大切にしてほしいと考えています。

 そこにつけて、具体的な感想の共有はむしろこれを奪ってしまうのではないか。もちろん<私>は<あなた>ではないのだから、私の感想は究極的には<あなた>のもつ感想とは無関係なものです。しかしながら、この個人という概念が希薄化していくまでの極端な情報共有的社会において、そう言い切ることは難しいです。

 また、<私>と<あなた>の感想が異なっていればまだ「違う意見だ」と割り切れますが、「漠然とは似た意見だ」というときより質がわるくなり、似てはいても微妙には異なるその絶妙な感性のニュアンスを具体性が塗りつぶしてしまい、均一化してしまうのではないかという危惧があります。

 もう一つ、自分への影響として、具体的な言語化を通して内省を無意識に変質させるバイアスがかかるのではないかということです。人の表現力には限界がありますから、自分の考えたことを100%そのまま言語化するというのはよほどの文豪でない限り難しいです。

 そんなときに起きる言語化と内的な感動の間のギャップを、「こういう感想を書きたいから、最初からこういう風に聞いていたことにしよう」というように内的な情動のほうを言語に寄せることで解決しようとしてしまうことが無意識的/意識的におきます。はたしてそれは誠実な感想といえるでしょうか。

 もちろんわざわざ「嫌いだ」ということを表明する必要はない(必要があったとしてもそれは「好きだ」と表明することの何百倍もデリケートに考える必要があるでしょう)ですが、作品を鑑賞して思ったことは率直に言うのが自分に対して素直でしょう。
 言語化が具体性を伴えば伴うほど内情と言語化のギャップは鮮明になります。そのギャップに対し、いかにバランスをとるかを考える必要があります。これについてはできるだけ素直に感想を書くように心がけようと思います。

amazarashiの「独白」というポエトリー(これがめちゃくちゃすごい)の中で次の様な一節があります。

「言葉にならない」気持ちは言葉にするべきだ
「例えようのない」その状況こそ例えるべきだ
「言葉もない」という言葉が何を伝えてんのか
君自身の言葉で自身を定義するんだ

独白 / amazarashi(作詞・作曲:秋田ひろむ), 2020

 これは感想などではなくもっと広く信念や言論について語ったものですが、翻って、「感想の言語化」というのは「内的な感情の言語化を通した固定」そして「自身の定義」であると言えそうです。
 感想はあくまで感想を通した「自身の定義の開陳」であって、その曲の本質を伝えるものではない、ということは紹介のような文章を書いている人間として、考える必要があるなと思った次第です。

 また、そういうことを言っている人を直接観測したわけではありませんが、もしも「具体的な感想を言えないことは悪い」あるいは「具体的な感想を言えることより劣っている」と考えるのは上記のようにともすれば漠然とした感動こそ純粋な内的情動であると考えている点で、私はそうは思いません(この感想に関する話題はこういう意見に対するTwitterでの議論から始まったようです)。

 この意見が推し進められた場合、感想という行為が特定の専門家だけのものになったり、「感想のアウトソーシング」とでも呼べるような主体性の欠如、あるいは感性の格差のような概念が生まれてしまいそうで怖いです。
 もちろん作者に対して「この曲のこういうところが好きでした!」と伝えることは励みになるでしょうが、言葉にできなかったところで「好きという感情」そのものが劣っているわけではありません。衝動と愛を大切にしていきたいです。

 そんなわけで、前者の影響を少しでも軽減したいと思い載せた文章でした。批判や感想という行為について色々な人の考えも聞いてみたいです。


 というわけで、今後は(今後も?)「自分の印象」の垂れ流しとして書いていく所存です。そんなでも読んでくれる人はとてもありがたいですね。本当にありがとうございます。マイペースに進めていきます。

 土曜日は初音ミクシンフォニーサントリーホール公演! 私は昼も夜も行きます。前回の公演は別のライブとかぶってしまいいけなかったのでとても楽しみです。
 日曜日はボーマス! ボカロイベ盛りだくさんですね。まだ新譜のチェックできてません。どうしましょう。頑張ります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?