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ボーカロイドの深淵を覗こう #27

こんにちは。ボカロが好きです。ボカロはいいぞ

 さて、「アンダーグラウンドボカロジャパン」「感性の反乱β」「POEMLOID」「VOCALOIDよれよれ曲リンク」「ボカイノセンス」の全曲周回を目指して感想を書いていくシリーズの27回目です。第一回はこちら一覧はこちら

 クレジットについて、概要などに表記がなければ作詞作曲を投稿者本人が行ったとして表記します。絵や動画については概要欄/タグ/動画内にクレジットがある場合のみ表記します。

 万が一ですが、クリエイター様御本人で自分の曲を紹介してほしくないということがありましたらご連絡ください。

それではいきます。


0261. 燃料 / ゆうちゃんP

タグ:VOCALOIDよれよれ曲リンク
作詞・作曲:ゆうちゃんP
イラスト:問題児P
ボーカル:鏡音リン
投稿:2010/1/31

 電子音の繰り返しがきもちいエレクトロ。音は気持ちいいですが、繰り返されるフレーズとひらがなで書かれるつぶやくような歌詞にミステリアスさがあります。どこか人外の化け物のような無機質さと異常さを感じます。その不気味さが人を惹きつけます。

0262. 電気猫の奇妙な散歩 / トーマ

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:トーマ
ボーカル:マクネナナ
投稿:2010/2/2

 ノスタルジーとマクネナナのにゃーにゃーがかわいいチップチューン。投稿者は「バビロン」や「オレンジ」などのあのトーマさんとは別の方です。ゆったりとしたテンポとブロックノイズがファミコンのゲームミュージックのようでとても落ち着きます。途中から重なる不規則なピアノも好きです。

0263. はな / politru

タグ:感性の反乱β
作詞・作曲:politru
ボーカル:雪歌ユフ
投稿:2010/2/11

 おちついたサウンドがユフのダウナーな声にとても似あうエレクトロ。間奏のピアノがとても綺麗で好きです。おちついたサウンドですがフレーズは感性の反乱βらしい複雑で聞き入ります。ユフの歌は歌詞を聞くというよりVOCALOIDインスト曲として美しいです。

0264. みらい / あぼんギャルP

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:あぼんギャルP
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/2/16

 これまでのあぼんギャルPの曲よりもスローなテンポです。内容は抽象的で難解な精神世界のようです。個人的には主観と客観のあわいを描いているような感じがして、その微妙な世界観を「点線 そこのおじさん二倍」などのユーモラスな歌詞で詩的に表現しているような感じがあります。

0265. コエラカントゥス / 145(難解世界P)

タグ:感性の反乱β
作詞・作曲:145(難解世界P)
ボーカル:雷歌ヒビキ / デフォ子
投稿:2010/2/17

 UTAUによるインスト曲。映像もサウンドも激しいです。クラゲやシーラカンスなどの深海の幻想さと厳しさを表現しているような感じがします。アウトロの電子音が好きです。

0266. road / ManHoleManP

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン / VOCALOIDよれよれ曲リンク / 感性の反乱β
作詞・作曲:ManHoleManP
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/2/21

 逆再生によるエレクトロ。ミクのコーラス、インストすべてがとても美しく癒されます。2:16からの展開もとても美しく好きです。歌詞のないインスト曲ですが4分40秒のあいだずっと聞き入り、永遠に流れていてほしいと願ってしまうような、精神に溶け込む音楽です。

0267. はすむかい / ぷれいらP(ppppp)

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:ぷれいらP(ppppp)
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/2/28

 怪しげな低音が響くインスト曲。中盤のかき鳴らすようなギターのサウンドがかっこいいです。終盤には民族楽器のような打楽器の音も響きミステリアスです。一貫して流れるフレーズが全体をまとめ上げてどこか映画の劇伴のような雰囲気もあります。

0268. 最終話「end of earth -miku's world-」 / AIR田F

タグ:感性の反乱β
作詞・作曲:AIR田F
使用画像:niru / EyesPic / フリー素材屋Hoshino
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/3/6

 終わりを迎えた世界をミクが旅するAIR田Fさんのシリーズの最終話です。このシリーズはAIR田Fさんがマイリストでまとめていますので是非ご覧ください。

 「ポストアポカリプスと初音ミク」というテーマが既に好きで素晴らしいです。
 終わった世界を映しながらミクが美しいコーラスを響かせます。地球を抱きしめるミクとコーラスが神のようなミクの大きさを想像させます。世界の通奏低音としてミクの歌声が響き渡っているかのような壮大さです。

0269. Miku as the Virus / かめりあ

タグ:感性の反乱β
作詞・作曲:かめりあ
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/3/12

 「コンピュータウイルス」というテーマにふさわしいノイズの乗ったミクの声がかっこいいエレクトロ。不規則なメロディや電子音ががウイルスという不安感と未来感を感じさせます。オケはとてもスタイリッシュでかっこいいです。
 ウイルスに感染して「空き容量」になったミクが「新しいミク、迷わず 入れて/そんなあなたが、大嫌い」というのが機械のミクとマスターの関係性が好きです。

0270. アメバコ展開図 / ドンガリンゴP

タグ:感性の反乱β
作詞・作曲:ドンガリンゴP
写真提供:mua
ボーカル:初音ミク / 巡音ルカ
投稿:2010/3/14

 ギターのサウンドが梅雨のけだるさを吹き飛ばすような曲。ミクとルカの伸びやかな声がとても綺麗です。実写とイラストを合わせたPVも素敵で小さな世界に閉じ込められているかのような不思議な世界観がとても良いです。「時空の狭間に閉じこめられているかもしれない…。そしてこの雨の中で同じ時間を繰り返し永遠に待つだけ…。」という言葉の意味が最初と最後で深みをもって締めくくられる構成が素敵です。


今回はここまで!

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周回の中で特に気に入った曲をマイリストに入れておきます



日記 2022/06/19

 特に話すことがないので好きな本の話をします。話題に困ったら好きな音楽か好きな本の話に逃げる。引きこもり人間なので生活に変化がないので……。

 今回紹介するのは笹井宏之さんの『えーえんとくちから』です。短歌集です。

 笹井宏之さんは2009年に26歳という若さでこの世を去ってしまった夭折の詩人です。この『えーえんとくちから』は死後に刊行されたベスト歌集です。

拾ったら手紙のようで開いたらあなたのようでもう見れません

笹井宏之『えーえんとくちから』, ちくま文庫, 2019=2020, p.11

 笹井さんの詩はあまりにも美しい日常の描写、瑞々しい感性と喜怒哀楽をやさしさで包んだような繊細な表現がとても好きです。

 療養生活をはじめて十年になります
 病名は、重度の身体表現性障害。自分以外のすべてのものが、ぼくの意識とは関係なく、毒であるような状態です。テレビ、本、音楽、街の風景、誰かとの談話、木々のそよぎ。
 どんなに心地よさやたのしさを感じていても、それらは耐えがたい身体症状となって、ぼくを寝たきりにしてしまいます。

同上, p.182

とあとがきで語っているように、私たちには些細すぎる日常の出来事であっても、ご本人とってはあまりにも鋭いナイフとなっていたのかもしれません。しかしその繊細さを掬い上げるような歌には美しさがあふれています。

「はなびら」と点字をなぞる ああ、これは桜の可能性が大きい

切れやすい糸でむすんでおきましょう いつかくるさようならのために

廃品になってはじめて本当の空を映せるのだね、テレビは

「とてつもないけしごむかすの洪水が来るぞ 愛が消されたらしい」

同上, p.9, 22, 51, 120

また発想の跳躍や表現のなかにユーモラスさを感じるのも大好きです。

この森で軍手を売って暮らしたい まちがえて図書館を建てたい

かまきりに祈られているおばさんを優しくよけて公園に着く

同上, p.6, 44

 つらい事があって自分のことも人のことも、この世界のことも何もかもが嫌になってしまったような夜に、この歌集を読むと荒んだ心が洗われるような気持になります。どんなに絶望してもこの世界の美しさを思い出してくれるような歌で、おちこんだときに何度も何度も大切に読んでいます。

なんど読んでも、どれだけ時が経っても瑞々しさがある笹井宏之さんの歌がとても好きです。

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