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『鏡の国のアリス』象蜜蜂と巨大な花

『鏡の国のアリス』第3章冒頭で、アリスが象の蜜蜂と巨大な花を見る場面があります。

ここは、チェス手順では2.●Nf7と3.○d4の間ですから、白のポーンであるアリスがいるのはd2のマス。後方に見える巨大な花はf1にいる白のルークということになります。

チェスのルール上、d2のポーンは、いったんd8まで進んでプロモーションしないことには後方に進むことができません。だからf1には行けず「後回し」になるのですね。

私の回答。

まず象蜜蜂ですが、「象」は大型の四足獣。
大型の四足獣は(広義の)bull。bullは狭義では「雄牛」となります。
象→bull→雄牛

次に「コテージの屋根を取り去ったような巨大な花」ですが、採蜜植物といえば英米ではクローバーが代表的。
f1にいる駒は白のルークなので、花の色も白と考えられます。
「屋根の無いコテージのような形の白い花」となればwhite clover=シロツメクサで間違いないでしょう。
クローバーといえばキャロルの時代の人々はshamrockを思い浮かべたはず。
アイルランド・カトリックの聖人パトリックが三位一体の教義を説くのに用いたのは厳密には別の植物だったようですが、時代が下るにつれて変化していき、ヴィクトリア朝ではクローバー派がほとんどでした。
白花の採蜜植物→white clover→shamrock

ここで、雄牛といえばアルスター神話群の「クーリーの牛争い」に代表されるアイルランドの象徴(特に北部)。
Irish bullなんて言葉もあります。

加えて、shamrockはかつてのアイルランドの国花。

キャロルの時代には、まだアイルランドの国は南北に分裂しておらず、1つでした。

従ってbullとshamrockで「アイルランド」を表現しているということになります。

Jabberwockyの詩は、ウェールズの象徴でした。
象蜜蜂と巨大な花は、アイルランドの象徴でした。
第7章のLion and Unicornは、イングランドとスコットランドの象徴です。

これらを合わせてBritain四王国。
愛国心溢れる御当地ネタですね。
この仕掛けは『不思議の国』にもあります。

余談ですが、Lion and Unicornのライオンをキング、ユニコーンをナイトとすると彼らが街中で激しく争う場面はチェス手順で円軌道を描いてナイトがキングを追い回す13手目~16手目あたりを表しているのでしょうか。
もしこの考えが当たっているとしても、「87回」という数の意味が不明です。
やけに具体的な数値なので、何らかの意味が込められているような気はするんですけど。



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