見出し画像

書評 『日本語教のすすめ』

鈴木孝夫『日本語教のすすめ』(新潮新書、2009年)

「日本語は英語に比べて未熟で非論理的な劣等言語である」―こんな自虐的な意見に耳を傾けてはいけない。われらが母語、日本語は世界に誇る大言語なのだ。「日本語はテレビ型言語」「人称の本質とは何か」「天狗の鼻を“長い”ではなく“高い”と表現する理由」等々、言語社会学の巨匠が半世紀にわたる研究の成果を惜しげもなく披露。読むほどに、その知られざる奥深さ、面白さが伝わってくる究極の日本語講座。(本書、帯より引用)

要約

1. 日本語は勘違いされている

・日本語は、言語使用者数の上位10番前後に位置する大大言語である。

・漢字の音読み・訓読みの二重読みには、漢字の知識を大衆に広く開放するというメリットがある。

・日本語は音声だけでなく、文字も重要な一部をなしている。

2. 日本語に人称代名詞は存在しない

・日本語は、目上目下という日本人の伝統的な人間関係を支配する上下の意識によって・家庭内での自称詞、他称詞が異なる。

・日本人は相手と自分を共に含むその場に相応しい何らかの社会的な枠組みを設定し、その中での相互の位置関係を表すような言葉を自称詞、対称詞、そして他称詞として使っている。

3. 日本語に対する考えを改めよう

・歴史的に、一般の日本人は苦労して外国語を使って生活する必要も、外国人相手に英語で仕事をすることもなかったため、対外言語活動が弱い。

・日本語を世界でひろく理解される国際語にしたい。


感想

 気になる方はぜひ一度、読んでいただきたい。というのも、この本は具体例に面白さがあるからである。

 この本には、言語社会学の研究者である鈴木の研究の成果が詰まっている。

 私が特に面白いと感じたのは、人称代名詞の話である。自分の家族を想定していただきたい。私は母を「お母さん」と呼ぶが、母は、私を、「息子」や「娘」とは呼ばない。また、私は祖父母を「おじいちゃん」や「おばあちゃん」と呼ぶ。しかし、祖父母は、私のことを「孫」とは呼ばない。

 いったいこれをどう説明すれば良いのだろうか・・・

 このような、日本語の特質や奥深さを味わえるのがこの本だ。この本を読むと、「言語は文化である」という主張には、非常に納得感がある。

 



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?