ほぼ毎日ほぼ500字短編:その8「ボタン」
通勤途中、住宅街の道のど真ん中に、ボタンが落ちていた。
ボタンの下には「押すたびに天気が変わります」とある。
ためしに1回、押してみた。
すると晴れていた空に雲がわき、あっという間に曇り空になった。
もう一度押すと、今度は雨が降ってきた。
もう一度押す。降っていた雨が止んだ。
さらに押すと、快晴の空になった。
どうやら晴れ→曇り→雨→曇り→晴れの順で変わるらしい。
これは使える!
俺はボタンを持って、ダムが干上がっている地域に飛んだ。
そしてボタンを押し、水不足を解消させた。
気を良くした俺は、さらに海外へ飛んだ。
干ばつに苦しんでいる地域では、ボタンを押して雨を降らせる。
逆に雨続きの地域では、ボタンを押して太陽を引っ張り出した。
いつしか俺は「天気王」と呼ばれ、あがめられるようになった。
日本に帰ってからも、ボタンを使って天気を変え続けた。
3年後――
世界は慢性的な天候不順となった。
暗殺された俺の横には、効かなくなったボタンが落ちていた。
2024年11月12日 pixiv創作アイディアより
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