見出し画像

キャラクターに命が宿る瞬間 〜ピーキーモンスターズ世界観小説を読んで〜

*本記事は下記の3部作短編小説の感想です*


主人公、マンドリル?
マンドリルって、あの、猿みたいなやつ?
意外なところを攻めるんだな〜。
可愛い、といえば可愛い…かも…?
万人ウケとなると…好みが分かれそうかもなぁ。



これが、ピーキーモンスターズの主人公「ノートン」を見た時の正直な感想だった。




作者のハムスタさんのことは、ニコ動の琴葉姉妹の実況動画で知っていた。
テンポが良く、漫才と調声のクオリティの高さはまさに作品と言えるほどの出来栄えで、1本あたり10分のシリーズ物を次々に見てあっという間に時間が過ぎてしまう。

完結していないシリーズ物は次回作が待ち通しいものの、あの編集を見るとそりゃ連発も出来ないだろうなと納得してしまうし、「作者さんのペースで十分。次回作が出るのをただ待ち続ける」という立派なファンの1人になっていた。


作者が一次創作もやりたいと思っていることは、動画やTwitterで何度か目にしていたので、ピーキーモンスターズを見た時は「へぇ、前言ってた一次創作の始まりなんだな」という印象だった。最初こそ不思議な人選ならぬ動物選だなという感想だったキャラクター達も、見慣れていくうちになんとも言えない愛着が湧いていったし、単純にギャグ漫画を楽しむために、投稿を見かける度に見に行ってはいた。




ある時、本編では触れられていない、彼らの背後にある世界の短編小説を掲載しているとの投稿を目にした。


私がそれに気づいた時はすでに3部作の投稿が終わっていたので、どんなものだろうと何の気なしに小説のリンクに飛んだのだが、




まさに、
『衝撃』だった。



世界がひっくり返る、というのだろうか…
月並みな表現であるが、
彼らの見方が、それまでとは
まるで別物になってしまった。


それは、決して悪い意味ではない。

それまでのただの娯楽の対象であり、
漫画の登場キャラクターでしかなかった
「ピキモン」という存在が、

突然体温を持って脈々と血が通い出し、
生き生きと動き出すのを目の前で見たような、


そんな体験だった。



これまでも漫画を追ってきていたので、キャラクター達にはある程度の愛着はあったが、小説を読んだその日から、私はピーキーモンスターズに"落ちて"しまった。

漫画の中で楽しそうに動き回るピキモン達全員が、大切で、愛おしくて、堪らない存在になり、
「万人ウケはしなさそう」な主人公ノートンは、私の1番好きなキャラクターになっていた。




町長はどれだけ苦しかっただろうか。

罪の意識を持ちながら、せめてもと毎週彼らの好物を供え続け、20年という歳月を過ごすのは想像するだけで胸がぎゅっと苦しくなる。長く辛い時間だっただろう。

それだけに、彼が最期に観たピキモン達の姿は、心から愛情を持って彼等に接していたからゆえに天から贈られた、最後のプレゼントだったのだろうと思う。彼はどれだけ救われただろうか。



小説内で、町長は亡くなってしまったけれど、
私はこれからもピキモンの姿を見守ることに対して、どことなく使命感を感じていた。



この小説は、本当にただの作り話なのだろうか?

もしかすると、これは本当にどこかの国で巻き起こった話で、私が今この目で観測しているピキモン達は町長が最期に観たという「幻」の中の姿なのではないか?

私たちが目にするピキモン達の姿はいつだって平和で楽しそう。勿論漫画の中ではあるけれど、時間軸は私たちと同じ(のように見える)。
だとすれば今私たちもまたその「幻」の中に居る訳で、、


といったように、どこまでも彼らの世界に入り込んでいけるのだ。

没入感と言ってしまえばそうなのだが、このピキモン小説はいったん読んだら終わりではなく、読後以降も、彼らの様子を見守りたくなってしまう。
物語の背後にある世界観というジャンルの作品として、抜群に優れた傑作だと思う。



ピーキーモンスターズの本編はあくまでもギャグ漫画である以上、今後も湿っぽいストーリーが展開される可能性はきっと低いだろうし、この小説の存在を知らずに、単純に漫画として楽しんでいる読者も居るだろう。それはそれで大変に喜ばしいことだ。


だが、私は、この小説を読み、彼らの背景を知ってしまった。

縁あってこのnoteにたどり着いた人も、町長に代わり、これからも平和でヘンテコな世界に生き続けるピキモン達の様子を見守り続けてくれる同志となってくれたら嬉しい。

そして、ピキモン達への弔いの気持ち…と言うのは幸せに生きている彼らにはあまりにも似つかわしくないので。

「ヒトが滅んだ世界で
ペンギンとマンドリルが
キッチンカーでバインミー屋をしながら
いろんな動物たちとのんびり生きていく」

彼らの物語を、1人でも多くの人が末長く一緒に楽しんでいってくれることを願って、

ここに感想を書き留めておく。


小説リンクhttps://note.com/hamsta_crowned/n/nf905ad67448d

漫画本編リンク
https://hamsta-crowned.com/archives/17692488.html



#創作大賞感想 #ピーキーモンスターズ #ピキモン