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類似性あり?なし?         ~著作権判例~

ここでは、実際の過去の判例を通して、著作権というものを学んでいけたらと思ってます。

これは、「タウンページ・キャラクター事件」(東京地判平成11年12月21日判決速報298号9256)からの引用ですが、  

下のキャラクターが描かれた左右の絵を見比べて似ているでしょうか、似ていないでしょうか、考えてください。


いかがでしょうか?
左側が原告の「古本物語」という漫画の作品で、右側が「ハローページ東京 都渋谷区版」(NTT発刊)に掲載された作品です。

この2つの作品、似ているところもあり、似ていないところもありで、言い切るのは難しいですが、裁判所は下記のように判断しています。

類似性の否定

つまり、似ていないという判断ですが、その理由が大事ですので、判決理由を列挙します。

①原告漫画のキャラクターと被告イラストのキャラクターは、本を擬人化したという点は共通しているが、それ自体はアイデアであって、著作権法で保護されるものではない。
②原告漫画のキャラクターの本の形状は、背表紙の付近が丸みを帯び、やや本が開いた状態のものもあるが、被告イラストのキャラクターの本は、全体的に角張っており、表表紙の上辺よりも裏表紙の上辺の方が長い独特の形状となっている。
③被告イラストのキャラクターは、目が斜めに配置されているが、原告漫画のキャラクターは、目は真横に並べられている。
④被告イラストのキャラクターには、大きく鼻が描かれているのに対し、原告漫画のキャラクターには鼻が存在しない。
⑤被告イラストのキャラクターは、本の中央から腕が生えているのに対し、原告漫画のキャラクターは、本の表紙、すなわち顔の面から、腕が生えている。また、被告イラストのキャラクターの腕及び手は立体的で、手は黒く塗りつぶされた丸形であるが、原告漫画のキャラクターの腕及び手は立体的でなく、手も白い丸形である。
⑥被告イラストのキャラクターの額にあたる部分にはタウンページという文字が描かれているが、原告漫画のキャラクターには何らの文字もない。
⑦原告漫画には、ストーリーがあるものと認められ、それについて、原告が主張するように「起承転結」が存するとしても、被告イラストにおいては、原告が主張するような起承転のストーリーがあるとは認められないし、また、仮に、被告イラストに何らかのストーリーがあるとしても、そのストーリーは、原告漫画とは異なっている。

以上、主に7つのポイントでもって、類似性を否定しています。
この中でも大事なのが、
原告漫画も、被告イラストも、キャラクターの目、口、腕等で表情を表現しているということができるが、そのこと自体はアイデアであって、著作権法で保護されるものではなく、原告漫画と被告イラストとでは、キャラクターが異なるという点です。
著作権は表現を保護するものであって、アイデアを保護するものではないという点を、この判例を通して、学べたらと思っています。


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