詩)旗振り

目の前には行列が出来ていた
少し目線を上げれば赤い旗が揺らめく
誰かが叫びながら旗を振る
よくわからないまま行列に並ぶ
ここにいても何も出来ないならと
取り敢えず前の人について行く

行列はどんどんと前へ進む
何かに悩み押しつぶされる位なら
何も考えずに歩いていた方がマシだと
逸れない様にと夢中で後を追いかける

己の足跡を風と埃が消していき
元いた場所に戻る事も出来なくなった
雨が降ろうと傘もささずに前へと進む
いったい何処に向かっているのかと
前の人に尋ねてみても自分と同じで
前の人についていっているのだと言う

時間も景色も流れていき随分と歩いた
歩く事にも疲れて限界が近づく頃
我慢する事に耐えかねて人混みを掻き分ける
急ぎ足で旗を目指して息を切らせる

旗持ちに追いついて行き先を尋ねると
天国を目指しているのだと答えた
私は頭を抱えて地に膝を着く

行列は私を飲み込みこみ
砂煙を起して私を追い越して行く
いつの間にやら旗も見えなくなった

天国なんて何処まで行っても見つかりはしない
1人になった私は天を仰いでため息をつく
白くなった頭が過ぎさった時間を告げる

逸れない…はぐれない


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