詩)私だけのもの

グチャグチャと無音の部屋にノイズが走る
甘い嘘をのたまっていた口も半開きのまま
キョロキョロと他のひとを見ていた目も
動く事なくずっと此方こちらを見ている
無邪気な笑顔も
寂しそうな目も
腕の中の温もりも
全てなくなってしまったけれど
誰かに奪われる位なら
私の中に溶かしてしまいたかった

包丁を握る感覚さえ失い
音も色さえも失った頃
赤く染まった貴方の顔を抱きしめながら
大声を出して泣いた

大きく開いた穴が悲しみで溢れた後
私は冷たい鉄を手首にあてる
一瞬の熱さが駆け巡り
世界は赤く染まった
皮肉にも私の赤と貴方の赤が混じり合い
一つになって世界を色付けていく

これで良かったのかと
無意味な疑問が頭蓋の壁を叩き
答えを出す前に
世界はプツリと終わりを告げた


まつおさんが毎週金曜日にやっている“ブラックポエムフライデー”、これを10/15の金曜日だけキノコさんが、間違えた、ヒスイさんが下記の祭りをやるって言うんで、それに参加しました。
基本的に普段から書いてる詩が暗いから、ブラックポエムなんすけど…。

この詩のモチーフは、数年前にあったホストに騙された女性がホストを刺した事件です。
事件直後に読んだネット記事に、このホストは、女性に馬乗りになられて、『好きだから一緒に死んで』と言われて刺された後に、『好きだから一緒に生きよう』って言って包丁を奪って抱きしめて一命を取り留めたって書いてあって、この状況でも最後まで騙し切るなんて、やってる事は悪だけど、ホストの鏡みたいな人だと思いました。

実際には一回刺されて、のたうちながらも命辛々逃げ出してなんとか助かったって話らしいです。
しかも刺された後も不死鳥ルナって形で売り出してホストに復帰したみたいです。
この図太さと根性は凄いっすよね。

ヒスイさんの企画記事↓

まつおさんのブラックポエムフライデー↓