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ショート風)泡沫の夢

心をすり減らし自らを削って得た対価
僅かな額でも右手に握ればズシリと重い
片手で大事に握りしめ街にでた

ネオンに集まる羽虫のごとく
猜疑心と好奇心の狭間で右手は開かず
目は右へ左へと落ち着く事のないピンボール
きらめく光に照らされて背中を丸め歩く道

知り合いの様な道化に声をかけられた
死んだ目をした道化に騙され重い扉に手をかけた
眩い光と蛾が化粧をした様な派手な蝶
訳もわからず声を上げ飲めない酒を煽る
下手な歌を歌えど賛辞を得れば誤解も生じる
泡沫の夢は時を忘れ、刹那に終わりを告げる

道化に運ばれる薄い紙切れ
露わにされた無残な現実
生一本が私の対価に化けた夜
ビールの泡と一緒に消えし摩耗した心

東京で夢は目を開けていなければ見えないと
謳った人もいた
田舎では目を見開き、目玉を出さねば
夢さえも見れなかった

突きつけられた現実に目を開けてはおれず
夢の続きが見られる様にとそっと目蓋を閉じた