詩)人になる
ヘドロとなって這いずり回る
時には空気の中に隠れ
時には海の上に浮かび
ある日は電車の中で
ある日は工場の隅で
ギョロリとした目で辺りを見回し
匂いを嗅ぎ取って聞き耳をたてる
私は人でありたい
人の形が分からず
人の温度を知らず
人の匂いや声もわからない
それでも人でありたい
人でありたいと願っては
貪欲に草を喰み
額を擦り付け泥水を啜る
人を知らねば人にはなれず
来る日も、来る日も人を探す
人にならねば
人にならねばと
流体の異形は
整った形をした入れ物に入り
溢れ出さぬように
足りぬ事がないように
誤魔化した笑顔を振りまいた
這いずり回る…はいずりまわる
喰み…はみ(食べる事)
擦り付け…こすりつく
流体…りゅうたい(スライムみたいな状態)