詩)空中ブランコ
観客の目は一同に此方に集まる
堕ちてしまえば柘榴に変わる高さで
精一杯の笑顔を作り彼方に手を振る
震える膝が暴露はしないかと
光の行き先に目を奪われる
縄の付いた取手が行ったり来たり
小太鼓の刻む拍子が段々と早くなり
心臓も拍子に合わせてはしゃぐ
次に此方に取手が来たらと
焦る気持ちと裏腹にゆっくりと時計が進む
己を鼓舞して脳内麻薬に酔いしれる
その時が来て精一杯手を伸ばして飛び付く
指は取手を掠めたがテントの屋根は遠ざかる
ぐしゃりと鈍い音が沈黙を壊した
色鮮やかな柘榴になった私の上を
取手は小刻みに揺れながら往復する
悲鳴の中に嘲笑う声がチラホラと混じって
オルゴールは不協和音を奏でていた
止まった針が再びカチカチと時間を刻む
呆気ない幕切れに道化師すらも呆れ顔
柘榴は声を殺して満足気に笑う
赤黒い世界が何処までも広がっていた