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ソフトウェアが垣根をぶちこわすデジタルトランスフォーメーション時代

世界金融危機後、世界の株価はテクノロジーセクター(Information Technology)が牽引してきた。

ITバブル(ドットコムバブル)時の異常なバリュエーションが剥落し続け、ようやくS&P500の平均にサヤ寄せ完了した2011年頃から、スマホ・クラウドの2大トレンドの波の中心となった米国テック勢が急激に拡大していった。

このようにテクノロジー上場企業比率の低い欧州勢はGAFAなどに対し規制を今更強化するなど後手にまわっており、一方で、中国は予め金盾的な狡猾な防壁と規制によって自国企業を保護しアリババ・テンセントなど自国勢力が伸びやすい環境ということもあって、

このように新興国株式インデックスにおいてもアリババ・テンセントのWeightは肥大化し、それに伴い全体におけるテック比率も高まった。

株価パフォーマンスは分かった。では利益は伴っているのか?ITバブルと同じではないのか?という点については

Source: KKR

このように、むしろテクノロジーセクターは効率よくスケーラブルな高い収益性の果実を享受していたところだ。利益面でもはっきりとした強さがあらわれている。(クラウド等の波が落ち着いた先にどうなるかは不明)

Source: KKR

KKRもテクノロジーセクターには強気だが、S&P500(米国主要500社の株価指数)におけるWeightが高いことを懸念しているようだ。

このようにITセクターの存在感はITバブル以来の大きさとなっている。

では本題、垣根をぶちこわすとはどういうことか?

ソフトウェアが垣根をぶちこわすデジタルトランスフォーメーション時代

Microsoft サティア・ナデラCEOが2015年に

Every business will become a software business, build applications, use advanced analytics and provide SaaS services.

と発言しています。(Source)

また、2018年11月5日の日本における講演でも

すべての企業がソフトウエア会社になる。
・テクノロジーはどんどんコモディティー化していく。
・テクノロジーを取り入れるスピードと、テクノロジーでどのように顧客体験やビジネスを変えるかが企業の競争力を左右する。

と発言しています。(Source)

「すべての企業がソフトウェア会社になる」といえば2011年にマーク・アンドリーセン氏が書いたコラムが印象的でした。ナデラCEOも2015年に言っていたことが全く変わっておらず今も同様の考えなのですね。

最近だとファーストリテイリングの柳井氏のインタビューも印象的でした。

小売業はどう変わりますか?の質問に対し、この回答、ユニクロのトップがこういった考え方を持っているということが面白かったです。

柳井氏曰く「デジタル化は消費者個々人の嗜好を生産に直結できる可能性を持つ。」(競争過多で苦戦はしていますが、アパレルでいうStitch Fixなんかはまさにそうですね。顧客との接点をアプリで確保し、Land and ExpandでPB化をすすめています。)

スマホをあたりまえのように所有し「デジタル人口」も増え続けている。

ラッキンコーヒーなど"顧客に一番近い店舗"のようなアプリファーストの新興企業の台頭や、

ゴーストレストラン/クラウドキッチンなど、フードデリバリー(出前)プラットフォームに最適化した座席のない店舗などもスマホベースで従来の立地によって集客が左右されていた飲食店と違った戦い方を模索しています。

かといって店舗が不要かというとそういうわけではなく、ボノボスなどのようなガイドショップも有効に機能しています。

端的にいってしまえば顧客中心に考えていけば従来の発想を超えて(垣根をぶちこわして)面白い戦い方ができるというわけですね。

デジタルトランスフォーメーションという単語がバズワード化してCEOの多くがデジタル化のプレッシャーを感じているというのが以下のBVの資料でも分かりますが、

有力なSaaS企業の決算は全てウォッチしているのですが、とにかく米国勢はSaaSプロダクトを取り入れていくのが早い印象です。

*aaSプロダクトが爆誕し、ありとあらゆる領域にテクノロジー×???=の新しいプレイヤーも登場しています。

米国勢のソフトウェア領域における強さはR&Dにも裏打ちされています。

これだけソフトウェアにおけるR&Dが伸びているのも

もちろんスケーラブルに儲かるからで、勝ち戦のターンでケチる理由はないわけです。

また、ビジネスとしてもこんな見解があります。

投資家としても、やはり予測可能性が低いボラタイルなハードウェアのビジネス(たとえばAppleのiPhone)よりも、チャーンレートや既存顧客維持率、CAC、ARPS、LTVなどをウォッチしていれば不意打ちで突然やばくなったりしにくい(じわじわ兆候がある)*aaSビジネスのようなソフトウェアビジネスの方が投資しやすいですよね。(もちろんそれを理解しているAppleはサービス収入比率を引き上げようと努力しています。)

ただ、ECに対して店舗がダメかというと必ずしもそういうわけではないように、ソフトウェアに対しても顧客の面をとるためのハードという視点でみれば非常に有用ですし(SquareなんかはハードをLand and Expandの突破口にしています)、垣根を超える、というのはそういった意味でも、ビジネスとしての濠を強化していくために顧客中心で(遅れているビジネスは)再構築していきたいというところですね。

——— ✂ ——— おわり ——— ✂ ———

月刊 米国株決算祭り」が明日から決算シーズンが加速して忙しくなるので、しばらく決算以外の記事が大幅に減りますが、毎週土日に株価チャートの大量チェック記事など、定期コンテンツを投入していこうと思っています。

これです。

明日はユナイテッドヘルスの決算を最低でも記事化したいですね…頑張ります。

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