サンスクリット語翻訳練習 カーリダーサ メーガドゥータ1.9(10)

20220601

読み直しました。理解がぐっと進んで嬉しいです。

Megh9(10)
徐々に 押す 風は そして 好都合なは ~するや お前を
左側にいるは そして これは 吠える 甘く チャータカ鳥は 水|貪欲なは
胎児|もたらす|絶えず|知るようになること達は きっと 目をむける|列達は
それらは讃えるだろう 目|良い|美を 空において あなたを バーラカ鳥達は

好都合な風がお前(雲)を徐々に押し、お前の左側にいて、雨滴を貪るこのチャータカ鳥が甘く鳴くや―
お前がバーラカ鳥達(妾)の目をうっとりさせつつ空を漂えば、それらはきっと冠状に並んでお前を称えるだろう(ハーレム?)。なぜなら、いつものように(しっかりと?)、お前の到着がそれらに受胎(セックス?)の時を告げるからだ。

vAmaz
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以下、昔書いたもの

カーリダーサはサンスクリット文学において最も偉大な詩人、劇作家と考えられています。 彼の生涯に関する多くは謎に包まれており、作品より推し量る以外にありません。5世紀の人物ではないかと考えられています。

メーガドゥータは抒情詩。邦訳名『雲の使者』。中部インドに流謫の日をおくるヤクシャ (クベーラ神の従者) が,空ゆく雲に託してヒマラヤのふもとに残した妻に贈る愛慕の詩。

ヨーロッパでも評判だったらしく、ゲーテが好んで読みました。サンスクリット原文で読んだのか、独訳か、それ以外か、は不明です。

雄大で華麗で美しい恋愛詩ですが、大変難しいです。それだけに読みごたえがあります。雰囲気だけでもお伝えできれば。


(原文)*1

詩型 mandAkrAntA
| – – – – | u u u u u – | – u – – u – x |

mandaM mandaM nudati pavanaz c'
ânukUlo yathA tvAM,
vAmaz c' âyaM nadati madhuraM
cAtakas toya|gRdhnuH.
garbh'|AdhAna|sthira|paricayA
nUnam Abaddha|mAlAH
seviSyante nayana|su|bhagaM
khe bhavantaM balAkAH.


(日本語訳)
雲の使者、1.10

好ましい風がゆっくりゆっくりお前を押す、
この水を貪るチャータカ鳥がお前に甘えるように鳴く。
絶えず子孫をもたらす母胎に慣れ親しんだバラーカ鳥の結集した飛行の列は、
いつの日か空で、良い旅をする幸福なあなたに仕える(性交する)だろう。


(Sir James Mallinsonの英訳)*2
A favorable breeze is gently, gently
pushing you along
and this beautiful chátaka bird,
greedy for water,
is cooing sweetly at you.
You are lovely to behold
and the cranes,
well aquainted with the rites of conception,
will doubtless line up in the sky
to wait upon you.


(読解)
mandaM adv. langsam ゆっくり
mandaM
nudati √nud 3.sg.pres. stoßen 押す
pavanaz pavana m.sg.N. Wind 風
c' ca konj. und そして
ânukUlo anukUla m.sg.N. geeignet, favourable 好ましい
yathA wie ように 今回、翻訳に反映させられませんでした。
tvAM, yuSmad pron.2.sg.Ac. dich お前を

vAmaz vAma m.sg.N. lieb 好きな、strebend 求める、versessen 執着のある
c'
âyaM idam pron.m.sg.N. dies これは
nadati √nad 3.sg.pres. brüllen 吠える、schreien 叫ぶ
madhuraM adv. süß 甘く
cAtakas cAtaka m.sg.N. eine Art Kuckuck チャータカ鳥、郭公の一種
toya| n. Wasser 水
gRdhnuH. gRdhnu m.sg.N. gierig 貪欲な
/
garbh'| m. Mutterleib 母胎 Inneres 内部
AdhAna| n. bes Rit Opferfeuer Anlegen 儀式で祭火を燃やす、Bewirken もたらす
sthira| fest 固く、dauerhaft 絶えず
paricayA paricaya m.pl.N. Bekanntschaft 知っている
nUnam adv. jetzt 今、künftig 未来の、gewiß 確かな
Abaddha| adj. tied on 結びついた
mAlAH mAlA f.pl.N. line 列

seviSyante √sev 3.pl.fut. bedienen 仕える、kohabitieren 性交する
nayana| n. Fahren 旅をする、行く
su| adv. gut 良く
bhagaM bhaga m.sg.Ac. Glück 幸運
khe kha n.sg.L. Luft 空
bhavantaM bhavat m.sg.Ac. der Herr あなた
balAkAH. balAka m.pl.N. Reiherart バラーカ鳥、青鷺の一種
//


(注)
*1 Kali・dasa, Dhoyi & Rupa Go・svamin, Messenger Poems, translated by Sir James Mallinson, Clay Sanskrit Library, New York University Press & JJC Foundation, 2006, p.28
*2 前掲書、p.29


・追記 同日
早速最終行を修正しました。鳥が空で性交するモチーフは、アニメ「獣の奏者エリン」でもありました。壮観です。エリンでは王獣同士が性交しますが、メーガドゥータでは主人公と鳥達が性交する、というような含み(言葉遊び?)があります。サンスクリット文学は本当に詩的で面白いです。

・追記 200220

2行目「お前に甘えるように」と修正。

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