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【あべゆみこ界隈のゆるい怪談・1】

次男は小さい頃からどうやら少し見えるらしい。
そもそも、うちには何かいる。
私にはわからないだけで、
旦那や遊びに来た赤ちゃんや次男は
気配を感じたり見たりしているようだ。

友達の赤ちゃんがうちに来たときは、
誰もいない空中をみあげてにっこりわらいかけ、
それを見た旦那は
「ああ、いるよね」と話しかけていた。
すぐそこに何かきた気配を旦那は感じていて、
その子はそれがきた場所を見て笑っていたのだそうだ。

次男は赤ちゃんのとき
おやつを自分で食べながら見えない誰かにも
「ハイ!」と差し出していた。
私も少し慣れてきたので
「…もらってくれなかったでしょ」と言うと
しょんぼりしながらうなづいていた。

さて
次男が通っていた保育園に歩いて行く途中
その昔は町で唯一の結婚式場だった古い建物がある。
結婚式場はとうの昔にやめていて
でも廃ビルではなくなにかしら使ってはいた。
昼間暗いけれど人は出入りしていたし
夜はちゃんと電気がついて囲碁サークルとか
何か寄り合いのようなことをしていた。
息子が保育園児のとき
そこを通るとよく「ここ、おばけやしきだよね」「ここ怖いよね」
と言った。
そのたびに「え、そう?そんな怖くないよ?」と
私は不思議に思ってそう答えていた。
まぁ、昼間も外から見る建物の中は薄暗いし
保育園のみんなとお散歩で通るときに
みんなでわざとそういう風に言い合ってふざけてるのかな、
くらいに思っていた。
保育園も年長さんになったある日
その建物は取り壊しを始めた。
「あ、見て。ここなくなっちゃうんだ」
と言うと
「ここ、僕が赤ちゃんでベビーカーにのってたとき
中からオニの手が伸びてきて僕えーーーん、て泣いたよね」

初めて怖かった理由を話したのだった。

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