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映画感想

「リリーのすべて」

世界で初めて性転換手術を受けたリリーと、その妻ゲルダの伝記。
ここまで深い夫婦愛、人間愛って、ないんじゃないかなと感じる。

以下ネタバレ含みます

画家の夫妻。
風景画家だった夫アイナー(リリー)と肖像画家の妻ゲルダ。妻が 女性モデルを夫に頼み、ちょっとしたジョークゲームから 夫の中に眠っていたリリーが眼を覚ます。

本来の自分に気がついたリリーは、妻を愛していながらも、男性として妻に向き合えないことに苦しみ
ゲルダも 子どもを望んでいたり、男性との夫を求め、探して苦しむ。

それでも女性、リリーの存在は、あまりにも強く美しくて、
リリーは自分を抑え込めないし、
妻ゲルダも葛藤しながらも リリーの美しさを肖像画にすることで成功をつかみはじめる。

夫婦は、苦しみながらも医者を転々として、
性の混乱の答えを探し続ける。

そしてとうとう、
アイナーは自分は女性リリーである。
妻ゲルダも、夫は女性である。
という答えにいきつき、
世界で例をみない、
「性転換手術」の存在を知る。

危険を伴う手術だと知っても、
リリーはようやく、自分になれる喜びで溢れ、
妻ゲルダはこの手術で、
男性としての夫を葬ることになる
寂しさ、悲しみ、を覚悟で
リリーの幸せを願って応援する。

術後、痛みや副反応に苦しむリリーを
優しく抱擁し
「リリー」と呼びかける
妻ゲルダが 切ない。


この話は実話で、
ゲルダは生涯リリーの肖像を描き続けたことを
知らせるテロップで締められている

この映画は美しい。

最初はぎこちなく
だんだんと 大胆に楽しげに
女性を解放していくリリーも。

自らの理想とする「夫」の形ではなくとも
強い、愛情を貫き通し
リリーを支え続ける
ゲルダの精神も。

美しさの背後には、
夫、妻、両方が抱える
孤独とか、恐怖とか、苦しみとか、
情熱とか、希望とか、儚さとか

そういうものが控えていて、
すごく危うく
均衡が保たれているのが魅力なんだと思う。


実話だというからすごい。

近年よく聞くトランスジェンダーの苦悩や
まだ拭いきれない生きづらさとか、
すごく考えるきっかけになった。

全然キャラクターは違うけど、
りゅうちぇる&ぺこのことを
思い出して、
2人にしかわからない苦悩とか葛藤とか、
きっとあるんだろうか、などと考えた。


良い映画でした

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