体験型職務分析
私は障害者福祉事業所に勤めているのですが、障害を抱える方の就労支援を中心に業務に従事させてもらっています。
その中で、福祉事業所が一般に企業から業務の一部を切り出してもらい、その業務について事業所と企業で相対取引を行うことがあります。
一般的に施設外就労や内職と呼ばれる業務形態です。
企業に赴き、どのような業務レベルであれば、引き受けて業務を遂行できるのかを調査することを職務分析と呼ぶことがあるのですが、今回は「職務内容の明確化」という意味で用いていこうと思います。
よく人事評価等で、どの部署にどのような業務があり、どのような働き方をすることが生産性向上であったり企業の利益となるのかを調査することがあると思うのですが、それに近い概念だと思ってください。
さて、このような調査において、評価を受ける側にも「やってもないのに評価なんてされてたまるか!」という言い分があると思います。
このような場合、職務分析には「体験型」と呼ばれる調査方法があります。
それは、実際に作業をすることで、実務の表面上の工程だけでなく、作業中の作業者の意識や疲労度などを洗い出す際に用いる手法です。
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障害者福祉の現場において、障害を抱える方の作業は障害を抱える方の職業訓練であって、支援者は、いかに効率的に作業できるかや、その人が作業しやすい環境を調えることが業務の主眼となっています。
つまり、福祉従事者、支援者は現場監督者であって、実労働を担う障害者を管理することが仕事であると考えられています。
しかし、一般的に考えて、自分が大変な作業を行っているときに、作業に参加せずに口頭指示のみ行うような管理者と信頼関係が構築できるでしょうか?
まさしく「お前がやってみろ‼」と思うのではないでしょうか?
また、労働の対価として賃金を得るのですが、繁忙期の作業量と閑散期の作業量は異なります。
にもかかわらず、同一賃金であることに障害者が不満を抱えた際、管理だけを行っていては説明責任を果たしても、納得感を与えることは出来ないのではないでしょうか?
私の福祉職経験は、わずか1年強です。
福祉として間違っているのかもしれませんが、二つの軸を置くようにしています。
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一つは、実際に体験をし、障害を抱える実作業者から評価を得ること。
精神や発達の障害をお持ちの方の中には、「想像性の欠如」といって、事実として目に見えるものでなければ理解できないという特性を有している方がみえます。
彼らに対して「社会人らしく振舞ってください」は、まったく想像のつかないことです。
ですから、どんな姿勢で臨むのかを見せることで、「とりあえず、あの人みたくやればいいのか…」というモデルケースが必要だと感じており、複数の作業において、誰にも負けない早さと正確さを身につけることを私自身の課題としています。
結果として、身体を動かす作業においては、私と共に汗を流してくれている障害者の方の作業効率は飛躍的に向上しました。
また、作業に取り組むことだけでなく、あいさつや時間管理などについても意識的に改善してくれるようになっています。
もう一つは、作業量と賃金の基準を設けることです。
極端な話、サボらせないだけでなく、働かせすぎないという軸を取り入れました。
対価以上の働きをしないというのは、搾取されない働き方を意識してもらおうと思って始めたことです。
繁忙期にガンバり過ぎてしまう方がいた場合、途中で作業を止めてもらうことがあります。
その結果、現場レベルで手が足りない場合は私が作業に入ります。
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これは、本来の支援とは異質なモノかもしれません。
ですが、自分だけがガンバっているわけじゃないと分かってもらうことで、チームとして働く意識も持ってもらえるような働き方を感じてもらいたいからです。
そして、ダメ出しされる評価だけでなく、正当な労働には正当な評価が与えられることを知ってもらいたいからでもあります。
障害を抱える彼らが、社会に進出するには、まだまだ身につけてもらうことがたくさんあります。
しかし、それは苦しいことだけでなく、働く中で楽しみもあるのだということを身につけてもらう期間でもあります。
これからも、多くのことに躓くかもしれませんが、それも楽しみに支援をさせていただきたいと思います。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
今回の投稿は以上です。
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