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【なろう分析】今から小説家目指す君に知っておいてもらいたいこと

本が好きな人間は一度は「小説家になりたい!」と考えるものです。

最近は、様々な小説投稿サイトが存在しており、やる気があれば誰でも自分の小説を全世界に公開することができます。

そして、ゆくゆくは・・・。

でも現実はそんなに甘くないかもしれません。
この記事では、小説投稿サイト「小説家になろう」様が提供している API を使って、小説家になることの大変さを分析してみます。

この1年で投稿された小説の数

作家は自己と向き合い作品を形にしていく生き物ですが、皆さんが小説家になりたいと思っているなら、自己だけでなく時には敵と向かい合うことも重要です。

みなさんはこの一年でどれくらいの小説が投稿されたかご存じですか?

「小説家になろう」だけで、実に ”105,635 作品” です。

”105,635 エピソード” ではありません。
あなたのライバルたちの手によって "105,635 作品" が 2023年度に公開された訳です。

もしあなたが2023年度に小説を公開していたとしたら、それは 1 / 105,635。
数ある作品のたった一つでしかないのです。

この一年でランキングに掲載された小説の数

それでは、これほどのたくさんのタイトルの中からランキングに掲載された小説の数はいくつでしょうか?

小説家になろうでは、多種多様なカテゴリのランキングを公開していますが、今回は小説家になろう API で調査できる「総合デイリーランキング」を見ていきます。

小説家になろうでは、以下のようにランキング集計ポイントを算出しています。

ランキング集計ポイント=評価ポイント[★×2pt]+ブックマーク件数×2pt

出典:https://syosetu.com/helpcenter/helppage/helppageid/171

2023 年度はうるう日を含んでいるため全部で 366 日あります。

一日のランキングには 300 作品が掲載されるので、
366 日 × 300 作品 = 109800 作品が最大で掲載されることになります。

では、実際にランキングに掲載された作品の数はどれほどあるのでしょうか?
実際にデータを分析してみたところ、ランキングに掲載された作品の数は "10,328 作品" です。

先ほど調べた一年間で公開された作品の数は ”105,635 作品” だったので、なんと 1/10 以下の作品しかランキングに掲載されていないのです。

そして、そのうち一度しかランキングに掲載されていない作品は "2,210 作品"、二回載った作品は "1,135 作品"です。
掲載回数が 5 回以下の作品だけで、一年でランキングに一度でも載った全作品の過半数を閉めます。

補足:
実際のところ、ランキングにはいくつか種類があり、またデイリーランキングも一日に3回更新されるので、どこかしらのランキングに載った作品ということであればもう少し多くなります。
しかしながら、ランキングに関するより詳細なログは提供されていないため、現実的に解析は不可能です。

あくまでここで皆さんに言いたいのは「ランキングに掲載される小説は全体のほんの一握りだ」ということです。

ランキングに載ることってそんなに重要?

楽しいから小説を書いているだけ!

他人からの評価は重要じゃない!

このような人の場合は、ランキングは重要ではないでしょうが、しかし、このような人は稀でしょう。
みなさん、わざわざ小説投稿サイトに作品を投稿しているのですから、少なからず人に見てもらいたいという意識があるものと思っています。

では、多くの人に見てもらいたい、小説家になりたいという人にとってランキングに載ることはどれほど重要なのでしょうか?

【そもそも】どうやってランキングが作られるの?

先述の通り、ランキングは以下のような計算式をもとにして作成されます。

ランキング集計ポイント=評価ポイント[★×2pt]+ブックマーク件数×2pt

出典:https://syosetu.com/helpcenter/helppage/helppageid/171

ビュー数ではなく、「評価」と「ブックマーク」です。

評価とブックマークの例
小説部分の下に、この図のような「ブックマークに追加」ボタンと「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」評価機能が存在する。なお「いいねで応援」ボタンはランキングに影響しない。

評価は「★ ~ ★★★★★」の 5 段階、ブックマークは「する or しない」の二値なので、ユーザは最大 12 pt の評価点を持っていることになります。

ノベライズとランキングの関係は?

それでは、ここからは「ノベライズとランキングの関係」について見ていきます。

まず、ランキングへの理解を深めるために、ランキングに掲載されるハードルについて確認します。

適当な一日をピックアップして、デイリーランキングで最もポイントを取っている小説(ランキング 1 位)とランキング掲載のボーダー小説(ランキング 300 位)のポイントを見てみましょう。

  • 1 位:9,396 pt

  • 300位:134 pt

これを 12 で割ると

  • 1 位:9,396 pt / 12 pt = 783

  • 300位:134 pt / 12 pt ≒ 11.17

となり、1 位になるには最低でも 783 人に評価をしてもらわなければならず、300 位であれば、12 人に評価をしてもらえればよいことになります。

この結果だけ見ると、
正直、12 ユーザからの評価でよければ、サクラや複数アカウントでの自作自演でもいけそうじゃない?」(やっちゃだめですよ)
なんて思った方もいらっしゃったかもしれません。

ここで重要になってくるのが、「ノベライズされる作品は何度ランキングに掲載されているのか(何度掲載された作品がノベライズされるのか)」です。

たった一日のランキングへの掲載を狙って自作自演を行うことは可能でしょうが、おそらく一日のランキング掲載で夢の小説家になることは不可能でしょう。

「小説家になろう」には殿堂入り API というものがあり、その作品がいままで掲載されたランキングの一覧を見ることができます。

実際に以下の方法でランキング掲載回数を見ていきます。

  1. まずは「小説家になろう | 書報 - 出版作品紹介」で最近ノベライズされた作品を適当にピックアップします。(小説名を出すとご迷惑をおかけするかもしれないので、小説名は出しません。)

  2. ピックアップした作品に飛び、ncode を調べます。
    (URL 内の "n1111aa" みたいなやつです)

  3. 以下の URL を使うとランキングの掲載回数を確認することができます。
    "https://api.syosetu.com/rank/rankin/?ncode=<ここを調べたい作品の ncode に置換する>"

この方法で 10 作品をピックアップして、ランキング掲載回数の平均値を求めたところ、平均値は "52.5 回" でした。
やはりランキング常連がノベライズしていると見て、間違いないですね。

【余談1】電子書籍化ならランキング掲載回数は関係ない

ノベライズされている作品のランキング掲載回数の平均値が 50 回を超えているにも関わらず、5 回ほどのランキング掲載回数でノベライズ化している作品もいくつか見受けられました。
ただし、それらは総じて「電子書籍化」された作品でした。

電子書籍化ならコストもかからないので、出版社側もちょっとした作品でも書籍化してくれるということでしょう。
(でも、電子書籍化だったら自分で kindle とかに出した方が得な気がしますが。。。)

【余談2】ノベライズを目指すなら、複数サイトに浮気をするな

昔、どこかで「ノベライズを目指すなら、複数サイトへの投稿は行わず、一つのサイトに絞って投稿をすべきである」と聞きました。
その方曰く、「権利関係がややこしくて話が来づらくなる」ということだったと記憶しています。

以下は正確な解析結果ではないので、話半分で聞いてもらえるとよいかと思いますが、
今回の分析をするにあたって、ある程度の人気作品の「ランキング掲載数」と「ノベライズの有無」を確認していると、実際に「複数サイトへの投稿の有無」と「ノベライズの有無」には相関関係があるように思えます。

というのも、「ランキング相当な回数掲載されているにも関わらず、ノベライズされていない作品の作品名で検索すると、他小説投稿サイトへの投稿が確認できる」という事象が複数回確認できたからですね。

正確な回数は計っていないので「その可能性があるかもね」と話半分で聞いてもらえたらと思いますが、「権利関係がややこしくて話が来づらくなる」というのも論理的におかしくないので、可能性は高そうです。

それでも小説を書かないという選択肢はない

このように、一年間で数多くの小説が投稿されており、その中の一握りのものだけがランキングに載り、そして幾度の掲載を経て書籍化されます。

もしあなたが小説家を目指すのであれば、常に他者から評価され続ける必要があるということです。

ちなみに、総合ランキングに掲載されている作品のジャンルやキーワードには偏りがあることがわかっています。

もしあなたがこれからノベライズを目指すなら、「自分の書きたいものを書き続ける」のではなく、「売れるものを書く」必要があるかもしれません。

今回の分析はここまでとして、次回はジャンルの分析を行いたいと思います。

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