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巻き毛のアン

ぼくの会社に、安(あん)さんという韓国人男性がいる。軽くウェーブのかかったいわゆる天パーが目印だ。うちで働き始めてから1年以上経つけれど、フロア=部署が違うし、用もないのに行き来をすることを、あまりよしとしない文化なので、週に何回かしか顔を合わせることしかない。

ぼくは外国語が趣味で、韓国ももすこし話せるので、安さんを見かけると、韓国語で話しかける。安さんはニコニコして、「発音が上手ですね」とほめてくれるけれど、いつもきまって返事は日本語だ。安さんは日本語ネイティブではないので、発音は完璧ではないけど、語彙や文法はビジネスで通用するレベルなので、ぼくのレベルにあわせて韓国語を話すより、日本語の方が手っ取り早いのだろう。

先日、ファミマに、ランチのハムカツサンドを買いに行こうとエレベーターに乗っていたら、ひとつ下のフロアから安さんが乗ってきた。外の喫煙所まで行くというので、散歩がてらついていって、あれこれ日本語で話をした。他に外国語は話すか聴いたら、アメリカに1年留学していたので英語ができる、というので英語ではなしかけたら、日本語ではなく英語で返事が来て、ずっと英語で会話をした。

ぼくは日本語のネイティブで、安さんは韓国語ネイティブ。どちらかの母国語ではなすときは、どうしても格差がでて、これ通じないかもしれないから無難な表現にしておこうとか、お互い遠慮がある。

英語だとぼくらのレベルが近くて、おたがい遠慮がなく話せる。おしゃべりしてるときの顔も、日本語の時は、ただニコニコしてるだけだけれど、英語のときは、真剣な顔をしてるし、会話の数も、スピードもずっと早い。これからは、英語で話すことにする。


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