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むとうじぃ

新卒で入った会社は、印刷事業もやっていて建設関係の会社の仕事もおおく請け負っていた。青焼きという、現場で使うような大きな設計図をプリントする部門があって、昔ながらの職人が二人いた。たぶん60歳は超えていて、ひょっとしたら70も超えていたかもしれない。当時のぼくからみると、ヨボヨボのおじいちゃんに見えた。いま、職場にいる、延長雇用の60ちょっとの人とくらべても、うん、やっぱりずっと年上だったと思う。一人の名前はわすれちゃったけれど、もう一人は武藤さんというひとで、武藤じぃと呼ばれていた。

で、その会社では、毎週月曜の朝に、全社員がそろって朝礼をやっていた。当番みたいに誰か1人が司会をやって、各課の報告とか、色々の、役に立つエピソードが録音されたカセットテープ(メモ魔の田中くん、という回だけ覚えてる)を流したり、そんな内容だったと思う。

朝礼のとき、まいど武藤じぃが、たんが絡むからなのか、そのまま死んでしまうんじゃないかってぐらい、ものすごく咳き込むので、みんなが肩をふるわせて笑いをこらえていた。そんなことを、さっきハムカツサンドを食べてて、ひどく咳込んだときに思い出した。もう30年も前のことだけど、武藤じぃは生きてるのかなぁ。生きてたらいいなぁ。


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