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忘れさせないための批評

後の葉に流へむと欲ふ

『古事記』序文 ※書き下し

 日本で生まれたポピュラー音楽が世界で評価され始めて時間が経った。特に最近は「シティポップ」と呼ばれる70~80sのニューミュージック・歌謡が人気が高く、世界への評価の向上と日本での評価の向上が共に起こり、リイシューなども盛んになっている。
 日本の名盤でも、こうした流れを受けてかシティポップの名盤が取り上げられる機会が多くなったように感じる。別の価値観が入り込むことで、「良い・悪い」の基準が変容したわけである。


 これまでただ単に音楽を聴いてきただけの私だったが、ここ2年ほどのライフスタイルの変容もあってYouTubeを視聴する機会が増えた中で、音楽YouTuberのみのさんのチャンネル「みのミュージック」の動画を見るようになった。
 そこで私は、いわゆる「名盤ランキング」、「『音楽好き』のリスナー」との乖離を痛感することになる。

 私の聴いてきた音楽がさっぱり取り上げられないのだ。まるで最初からそんな音楽などないかのように。

 それは、単に周囲の知人と私が聴いているジャンルが全然被らないといった種のものではない。単純に知らないのではなく、話題に出さない、嫌いという印象を受けることもある(筆者の強い思い込みのせいも大きいが)。
 ただ、それ自体を私はそこまで悪いとは思わない。私が「これが好き!」を永遠に続けて音楽を聴いてきたように、彼等も琴線に触れる好きな音楽を大なり小なり中心に据えて聴いているだろうからだ。

 しかし、「音楽批評」における現状はその場合好ましくない。「音楽批評」に携わる人の偏りが大きくなる結果を招くためだ。

 そこでこのnoteでは、これまであまり音楽を批評する、音楽史を紡ぐ上で語られてこなかったポピュラー音楽を中心に論を展開してみたい。


 先ほど話題に出したみのミュージックの動画の締めの部分で、紹介したサイトに取り上げられていないジャンル・アーティストについてみのさんがいくつかの視点を挙げていた。

①歌謡が少ない
②アイドルが少ない
③(90年代などの)王道J-POPが少ない
④演歌が少ない

上記の動画の11:15ごろから

 これについてみのさんは「紹介待ち」と指摘した。確かにそうであると思う。ただ紹介するためには、国内で紹介するための文言を整えなければならない。深く語られもしていないものを紹介することは難しいだろうからだ。実際、国内批評シーンでもこれらのジャンルは評価が遅れている。

 そこでこのnoteでは紹介をするための論をまず立ててみる、という試みをやっていく。意見や反論などもどんどん受けつけて、論を固めていきたい。


 また論じ方も工夫しようと思う。既存のアルバムやその影響力を軸にした論はもちろんやっていくが、それらは既存の批評と相性が良い形式であるため、私が語ろうとしている音楽とはミスマッチの可能性もある。そこで、シングル・曲に注目する、ベストアルバムに注目する、という手法を取ることもしていく(特にベストアルバムは黙殺されるケースも多いように思うが、「紹介」としてこれ以上のものはないだろう)。


 我々一人一人のリスナーが稗田阿礼や太安万侶となり、音楽を語り、「後世に伝える準備」を整える。新たな価値観を手にした日本のポピュラー音楽批評は、また新しいステップに入ることだろう。このnoteを微力ながらその第1歩としたい。


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