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仕事を替えたいと思った人へ

信用スコアという言葉を最近よく聞く。
デジタル化の中で、個人のスキル、能力をデータで可視化する動きのことだ。
例えば、最近よく目にするフードデリバリーの例で言えば、デリバリースキルが高く評判の良い配達員は信用スコアがアップし、より仕事の依頼が集まりやすくなり、より良い顧客が集まる仕組みがデータを介在し構築される。
これは、配達員だけでなく、フード注文をする顧客側も信用スコアが可視化される、相互評価だ。
フードデリバリーシステムに限らず、タクシー配車システム、宿泊利用など様々なところで信用システムがデータ化され流通し始めている。

この信用スコア、山口周さんの言葉を借りると「一回性」の関係を回避し、サステナブルな関係性の循環を生み出すシステムである。
わかりやすく言えば、一回性というのは、『一度で終わる単発的な人間関係であったり、ビジネスの関係』である。
この一回性が前に立つと、海外旅行でのぼったくりタクシーのように「二度とこの客と会わないから、取れる時に取ってしまおう」という発想が生まれてしまい、サステナブルに信用スコアを高めて仕事の好循環を生み出し、長い目で見た収入アップという発想は生まれ辛くなる。
そういう意味では、この信用スコアはデジタル化と多様性を背景としたデータ社会におけるとても面白い産物だ。

この信用スコアは、社会の中で日常では単発的な関係性になってしまうケースに、一回性を回避しサステナブルな循環を生み出すには有効だが、その信用スコアを、日常的に企業が自社の人事施策等で活用するケースを最近よく耳にする。

これについては申し訳無いが、僕は賛同しかねる。日常がサステナブルな関係が前提になっている会社の中で、あえてその関係を「一回性の回避に利がある信用スコア」でデータ化する必要が僕には見当たらない。
極論では、家族の中で信用スコアは馴染まない。それは企業もそうだ。人事セクションは、もし信用スコアを活躍させたいなら、参考データとして活用するなど副次的に運用すべきことだ。

とは言え、信用スコアは一回性と反する会社組織内では不要としても「信用」という根本的な概念は磨くことが大切だ。

そう、ここからが本題である。

下積み時代の仕事に関して、ある後輩から最近質問を受けた。

「いつまで、このような下積みの仕事が続くのでしょうか?」

切実な質問の響きだ。

が、少し発想を変えるとこの(下積みの)時代の仕事こそ「信用」という概念が一番培っていきやすいチャンスと捉えることが出来る。
企業のような人と人の関係がベースとして根強く残っている組織では、「信用」がどれだけ(たとえ目に見えなくても)蓄積出来ているかが重要だからだ。

言い方を換えると、信用スコアが数値化されずに、観念的に運用されている状況と言えるのかもしれない。
例えば、プロジェクトがスタートする際に、
「〇〇君なら何度か仕事を共にしたが、とても信用出来る奴だ」
という評判が信用として人と人を結びつける。

そして、そこでは理屈では割り切れない難しいプロジェクトには、信用スコアでは乗り越えられない過去からの信用の蓄積が活きてくるからだ。

最近、部署異動したい、仕事を替えたい(転職したい)、ということを社内でもよく耳にするようになった。別に悪いことではないし、そういう意思を持つことは自由だし重要だ。

が、「信用」という蓄積された事実を携えて意思表明するのと、蓄積されずに(時に現実逃避含め)意思表明することでは、意味合いも迫力も説得力も大きく異なってくる(180度違ってくる)。

「請い請われて前向きに動き出す」

それが転職や異動のあるべき姿だと思う。

だからこそ、改めて自分を大切にし、自身を磨き続けること、それが結局のところ異動や転職の近道なのかもしれない。

繰り返すが、会社の人事は「一回性の回避」を前提とした信用スコアに頼り出すと歯車は噛み合わなくなる。あくまでも参考データとして活用したいものだ。

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