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大好きなタイを嫌いになりそうな、たった一つの理由

 「微笑みの国」タイに魅了されてから、ずっと通い続けています。行くたびに、様々な感動がある国。大好きな国の一つです。

 ただ、今回の渡航中、あるものを見て、「ちょっとタイが嫌いになるかも」と思った出来事がありました。果たして「あるもの」とは?


パタヤで「ワーキングストリート」を歩いてみたところ

 シラチャに和風カフェを開いたトン君と夕食を食べた後、パタヤに到着。チェックインしてシャワーを浴びた後、せっかくなので飲みに出てみました。向かったのは、パタヤ最大の歓楽街、ウォーキングストリートです。

飲み屋街がひしめくタイ・パタヤのウォーキングストリート=2023年8月30日

 ビールが飲めるバーや、ゴーゴーバーなどがひしめく通りです。「せっかくならば社会勉強に通りを往復してみようか」と思い、歩を進めてみました。ただ、きらびやかなネオンや、大音量のダンスミュージックに頭がクラクラ・・・。

 それ以上に、「この通りを早めに立ち去ろう」と思った理由があります。それは、「大麻を売るお店の多さ」です。

大麻を販売する店。この大麻の葉を掲げた店の多いこと・・・=2023年8月31日

2022年に解禁。ただ使用目的は・・・

 タイでは、産業用大麻の利用促進のため、2022年6月に大麻を規制薬物のリストから除外され、自宅での大麻栽培も可能になりました。アジアで初めてのことです。また、大麻入り飲食の提供も可能になりました。一方で、娯楽目的での大麻使用は依然として禁止されています。

 ただ、この大麻を扱う店の多さは、明らかに「娯楽目的」と思えるものばかり。ビーチ沿いにも、大麻商品を扱うスタンドが並び、屋台でも大麻が入ったと思われる商品が多く並んでいました。そして、大麻の葉を大きく掲げたお店から、テンション高く出てくる外国人観光客・・・。「ここにいてはいけない」と感じ、トン君からおススメされたパブに、逃げるように行きました。

雰囲気の良いパタヤのパブ。これはまた別の機会に紹介したい=2023年8月30日

日本でも増える大麻関連の事件

 大麻は、「ゲートウェイドラッグ」の一部とみなされています。覚せい剤やコカイン、ヘロインなどのより強い薬物への「入口の薬物」とされ、軽い気持ちで手を出してしまうと、だんだんと抜け出せなくなり、さらなる薬物依存が進んでしまう、という意味です。

 日本でも、大学生が大麻の栽培や所持などで逮捕される事件が増えてきました。理由は分かりませんが、もしかしたらタイ旅行で初めての大麻を経験し、さらに日本でも依存が進行してしまった人もいるのでは、と邪推をしてしまいます。

決して大麻に近づかないように

 タイは、お酒に関しては規制が厳しく、11:00-14:00、17:00-24:00のみ販売ができます。これは、昔、お昼休みから公務員がお酒を飲み、昼からは酔って仕事にならない、という事態があったから設定された法律だということです。

 一方、大麻については、解禁されて1年以上が経ち、タイでも中毒者が増加。2023年5月に開かれたタイの総選挙でも、「大麻」が争点になったほどです。

 在タイ日本大使館では、「娯楽目的の使用は依然として禁止」「日本に持ち込もうとすると処罰の対象」「幻覚などの健康被害が進む」などの理由から、「安易に手を出さないように」との注意喚起をしています。

 世界屈指の観光立国であるタイ。大麻に頼らずとも、ビーチや寺院、料理、買い物など、魅力はたくさんあります。ぜひ、そんな観光の魅力をさらに発信してもらいたいなと思います。同時に、私たち外国人観光客も、タイでは大麻に近づかない。そんな意識が必要だと思います。

山路健造(やまじ・けんぞう)
1984年、大分市出身。立命館アジア太平洋大学卒業。西日本新聞社で7年間、記者職として九州の国際交流、国際協力、多文化共生の現場などを取材。新聞社を退職し、JICA青年海外協力隊でフィリピンへ派遣。自らも海外で「外国人」だった経験から多文化共生に関心を持つ。
帰国後、認定NPO法人地球市民の会入職し、奨学金事業を担当したほか、国内の外国人支援のための「地球市民共生事業」を立ち上げた。2018年1月にタイ人グループ「サワディー佐賀」を設立し、代表に。タイをキーワードにしたまちづくりや多言語の災害情報発信が評価され、2021年1月、総務省ふるさとづくり大賞(団体表彰)受賞した。
22年2月に始まったウクライナ侵攻では、佐賀県の避難民支援の官民連携組織「SAGA Ukeire Network~ウクライナひまわりプロジェクト~」で事務局を担当。
2023年6月より、地球市民の会を退職。同8月より、個人事業「人とヒトの幸せ開発研究所」を立ち上げ、多文化共生やNPOマネジメントサポートなどに携わる。

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