違法の冷蔵庫

「卵の賞味期限が近づいてます。早めにお食べ下さい」
冷蔵庫が中の食品を確認し、注意のアナウンスをする。
新機能がどんどん追加される冷蔵庫の進化は止まらない。

「冷蔵庫が食品の種類や量を確認し、バランスの良い食事や、食べ過ぎを抑える提案をします」
新商品発表の会場で、宣伝している声が聞こえる。
「まったく……商売上がったりだな」
会場の隅で男がつぶやくのを聞きつけ、別の男が声をかける。
「耳よりな情報がありますよ」
突然声をかけられた男は驚く。
「誰だ君は？」
「進化する冷蔵庫にお困りの方を助けるため、冷蔵庫に細工をする会社の者です」
「どういうことだ？」
「冷蔵庫の機能を少し悪くするのです。食べ控えは、食品関係の方にはあまり喜ばしいことではないでしょうから」
「私はそういう仕事はしていない」
「ではスポーツジムの方ですか？　ダイエット目的で入会される方が減りますからね」
「そういう仕事でもない」
「ではあなたの職業は？」
「私は……医者だ」