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アナログバイリンガル

僕の人生の分岐点は、大学4年の時。
子供の頃から英語が得意で、海外を飛び回る仕事に就きたかった。
大企業から内定をもらい、付き合っていた彼女に報告に行くと、彼女は意気消沈していた。
「実は父が病気なの」
彼女の父は造り酒屋を営んでいる。言葉にはしないが、一人娘の彼女に継いでもらいたいそうだ。
僕の勤務地は決まっていないが、海外の可能性がある。
僕は迷わなかった。彼女と人生を歩むこと。そして彼女の父の造り酒屋で働くことを決めた。

彼女の父は、それから5年後に亡くなった。
僕に最後の言葉を遺しながら。
「君には日本酒を愛し、日本の伝統を守る心がある」

それからさらに時間が経った。
日本酒は海外でも愛されるようになり、僕の得意な英語も役に立っている。

彼女の友達が遊びに来た。7歳になった僕達の娘を見てびっくりしている。
「かわいい! お姫様みたい」
「最近パパに似てきたのよ」
「本当にかわいい。よかったね、パパと同じブロンドの髪と青い目で」

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