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株式会社リストラ

男が歩いていると「株式会社リストラ」という表札が見えた。
「ここは沢田さんの家のはず。引っ越したのか」
男がのぞき込むと、中から紳士が出てきた。
「すみません、知り合いの家だと思ったので。リストラとは珍しい名前ですね」
「イントネーションが違いますな」
「は?」
「リスト、一拍おいてラです。ラのリストを作る会社です」
「…どういう意味ですか?」
「ラから始まる言葉は少ないと思われがちですが、本当に少ないか検証するのです」
「それになんの意味が?」
「あなたはラから始まる言葉を思いつきますか?」
「…ラクダ」
「ありきたりですな」
「ラッパ」
「しりとりの定番です」

その頃、株式会社リストラの社員が、男の家を物色していた。
「金目のものはないか?」
「今探してる。社長時間稼いでくれるかな?」
「せいぜい15分だな。めぼしいもの見つけたらずらかるぞ」

「雷鳥、落花生、楽天家…」
「素晴らしい。どんどん出てきますな。あなたこそ我々の会社に必要な人材だ」

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