君に贈る火星の
火星での調査隊に参加して2年。
彼の楽しみは、遠く離れた地球にいる娘との会話だ。
「大きくなったね」
「うん。もうすぐ3さいになるの」
「そうかぁ。誕生日プレゼント何がいい?」
「うーんとねぇ。おいし…」
「おいし…あぁ石のことか。火星には見たことない石がいっぱいあるよ」
「ふーん」
「パパがきれいな石選んでおくね」
彼が事故で命を落としたのは、それから1ヶ月後だった。
数年後、火星で彼と一緒にいたという男が、妻と娘のところにやってきた。
「これは君のために、パパが集めた石だよ」
娘は不思議そうに石を見ている。
「今日は君にお願いがあって来たんだ。この石を調べることで、火星の色々なことが分かる。もしよければ譲ってくれないかな」
「いいよ」
妻がびっくりして娘に聞く。
「本当にいいの? パパのプレゼントだよ」
「わたし石がほしいなんて言ってないよ」
「えぇ?」
「おいしいハンバーグって言おうとしたのに、パパが最後まで聞いてくれなかったんだよ」
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