バナナリストラ
ある日、男が外回りから会社に帰ってきて廊下を歩いていると、なにか柔らかいものに足をとられて、転んでしまった。
「いてててて…」
腰をさすりながら、男は立ち上がる。なぜか廊下は水びたしだ。
「なんなんだいったい…」
男は自分が踏んだ柔らかいものを探す。すると廊下の先に黄色くて細長い物体があるのを見つけた。
「なんでバナナの皮が廊下に落ちてるんだよ」
男はブツブツ言いながらそれを拾い、会社にあるシュレッダーで細断した。ゴミ箱に捨てなかったのは、それだけ頭にきていたからだ。
次の日、男は会社からクビを言い渡された。
男が勤めていたスポーツメーカーでは、社長と幹部たちが話し合っている。
「実験結果からみると、やっぱりあの靴の素材は、水に濡れると滑ってしまう性質があるな」
「雨の日は問題になりますね。改良していかなくてはなりません」
「それにしてもあの男、大切な素材をシュレッダーにかけやがった。いったいいくらかけて作ったと思ってるんだ…」
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
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