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アパレル販売員のこれからの働き方


今回は少し考える機会があり、アパレル販売員の働き方がこれからどう変わっていくかについて考えてみました。

少しおおげさなタイトルをつけましたが、緊急事態宣言下の現時点で考えられる予想が半分、これからこんなサービスあったら面白いだろうなという気持ち半分で、外出制限がかかる状況下での販売員さんの働き方について自分の考えを書きたいと思います。

※私自身販売のプロではありませんが、一部有料にさせていただきました。前半はこれまでの販売方法についてまとめたもの。後半はこれからの販売の仕組みの提案とそれに伴う販売員さんの必要なスキルについて書いています。有料部分は、ちょっといいアイスを食べるつもりで読んでいただけたら嬉しいです。


緊急事態宣言を受けた今の現状


コロナウイルス拡大を受けて出された緊急事態宣言で、業種問わずたくさんのお店が休業や営業時間を短縮していることと思います。

緊急事態宣言が出され営業再開のめどが立たない中、会社によって販売員の役割は多少異なると思いますが、店舗運営が主な業務である多くの販売員の方は、自宅待機で働きたくても働けない状況が続いていると思います。

会社側としても今回のように一斉に店舗が休みになることなんてこれまでなかったでしょうし、それぞれの販売員の方が店舗運営以外の業務を兼務していないことが多いと思うので、各販売員をどうマネージメントするか難しい問題だと思います。

コロナウイルスは今回のピークが過ぎても、第二波、第三派がくるかもしれないとも言われていますし、こなかったとしてもコロナ以前と同じようにお店に来てもらえるとも限りません。

もちろん気兼ねなく外出できるようになるのが一番ですが、万一そういう事態に再びなってしまった時に、単に休みにするのでなく、販売員さんが持っている大切なスキルをちゃんと活かせるよう備えておく必要がありますし、そこに新しいサービスがあるんじゃないかと思います。


これまでの販売方法は主に3種類


販売方法ごとに何がこれからも大切で、何が必要なくなりそうなのか。その取捨選択と、何をプラスすれば良いのか。それを考える上で、これまでの販売方法を見直すことはとても大切だと思います。

これまでの販売方法は、

①対面で販売(フィジカルな体験)
②ECで販売(静的なデジタル体験)
③通販的な販売(動的なデジタル体験)

の3種類に大別されます。

①はずっと昔からされてきた直接会って販売する方法。
②はECモールや各ブランドごとにあるオンラインサイト上で販売する方法。③はTVでの通販番組だけでなく、インスタライブなどのSNS上で商品紹介をし、ECサイト等で購入していただく方法。

③は最終的に②と同じくECサイトで購入していただくケースが多いですが、②が情報の発信するブランド側と顧客側でコミュニケーションが一方向なのに対して、③はブランド側と顧客側がリアルタイムでコミュニケーションをとれるところに大きな違いがあります。コミュニケーションの有無で、便宜的に②を静的なデジタル体験、③を動的なデジタル体験と分けました。

多くのブランドの売り上げの大半は、①対面による販売で、販売員さんがたずさわっている方法になります。

アパレルのEC化率は2018年時点で12.96%(経産省 平成30年度電子商取引に関する市場調査より)で、サイズや素材感、色の感じなど、実際に試着してみないとわかりにくいなど、ハードルが少し高かったため今も比率は高くありませんが、スマホを利用した③の普及や実店舗とECを連動させるなどして、年々割合は増えています。

今回のコロナで、売上の大半を占めている①が大きなダメージを受けているので、いかに他の方法で売上を立てられるかが鍵になります。また、今後①ができなくなったり縮小せざる得なくなった場合、そこにかけていたリソースを②や③のどこに回せるのか考えることが大切だと思います。


それぞれの販売方法の特長


もう少し各販売方法について掘り下げようと思います。

①対面で販売(フィジカルな体験)

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この販売方法の強みは、

・実際に手にとって商品を見たり試着したりできるので、感覚で決めやすい

身体で感じられるフィジカルに得られる情報は、デジタルで得られる情報よりも圧倒的に鮮明なので、ECなどのように頭の中で考えなくても、感覚的に買うか決めやすいと思います。

・販売員の方と話しながら買い物ができる

個人的にはこれが最大の強みだと思うのですが、自分では何を選んでいいか悩んでしまう人や、誰かと相談しながら買い物をしたい人にとって、適切なアドバイスをくれる販売員がいると買い物がしやすいと思います

また、気になったの商品を見に来店したことがきっかけで、売られている商品よりもお店自体や販売員の方に顧客様がつくことがあります。

これは、SNS上の発信だと初めから『人』に興味を持たれないとコミュニケーションをとってもらえませんが、店舗の場合まず人でなく商品なのでハードルが比較的低く、適切な距離感を保ちながらコミュニケーションをとれます。

そうして関係性を築けると顧客様にとっては安心して買い物ができる場所であり、お店側としてもリピートも期待できます。


逆にこの販売方法の弱みは物理的に移動しないといけないこと。また、運営に人員が多く必要になることや固定費が発生することです。コロナ禍では、これが大きなネックとなっています。


②ECで販売(静的なデジタル体験)

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続いてECでの販売ですが、この販売方法の強みは

住んでいる場所に関係なく、家にいながら買い物ができる

これはもう言うまでもないことだと思いますが、コロナ禍のような移動制限や物理的な接触が制限される状況下では大きな強みです。また、①の強みとは反対のことですが、販売員の方と対面で話すのが苦手な方もいるので、そういう人たちにとって一人で買い物できるECは、好ましい環境かもしれません。

・運営にかける人員を少なくできる

サイト運営にも人員は割かれますが、展開する店舗数が多いブランドほど、必要な販売員の人数よりも少なくすることができます。

・販売機会のロスを減らせる

店舗販売だと、『その店舗にはないけど他店だとある』のような状況がよくあると思います。その場合取り寄せしたり、急いでいたり近ければ他店の案内をしたりしますが、そのままキャンセルされることもあると思います。ECだと在庫管理をまとめているのでそういったことが起こらず、在庫がある分は販売できます。


逆にこの販売方法の弱点は、店舗等で試着してない商品だと、自分の体型にとってのサイズ感や素材感、色などが届いてみないとわからないこと。
また、ECサイトや自社サイトに何度も訪れてもらえるような仕掛けが必要なこと。対面だとできていたお客様ごとに合わせた提案ができず、商品の説明しかできないことなどがあると思います。

ECで買うメリットよりも、実店舗へ買いに行く方が良い面が多かったことがEC化率が伸びなかった要因のひとつだと思います。

ただ、今でも写真のみ、またはショーの動画だけ載せたサイトが多いですが、最近では商品説明用の着用画像の種類(体型ごとだったり着方などのバリエーション)を増やしたり、動画を載せるなどして情報量を多くしています。

今後はARやVRを活用した販促も増えていくと考えられるので、ECだけで買い物をする人たちにも、よりわかりやすくなっていくと思います。


③通販的なEC販売(動的なデジタル体験)

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この販売方法は基本的に②と同じECでの販売ですが、②にプラスでSNSを活用して販促をすることで、ECが苦手としていたコミュニケーションを取り入れることができました。外出制限中、最も力を入れられている方法だと思います。

・顧客側とSNSでコミュニケーションをとりながら販売できる

インスタライブ等で質問に答えながら商品紹介をするので、ECで買うときに気になった点を解消してくれたり、写真だけでは気づかなかった商品の魅力を伝えられます。

また、ECサイトでは興味を持った商品しか見られることはありませんが、こうしたライブでブランド側からオススメを提案できるのも強みの一つだと思います。

・定期的に顧客側と接点を持てる

定期的にライブ配信を行うことで、顧客側にどういう活動をしているのか認識されますし、配信で気になった商品などを見にサイトにきてもらえるような宣伝効果も期待できると思います。


ただ、この方法は②よりも顧客側とコミュニケーションがとれますが、それだけで充分とは言えません。質問できるとはいえ、視聴者数が多い場合は全てに答えられないこともあります。コミュニケーションが一方向ではなくなりましたが、まだ1対1のコミュニケーションのようなやりとりをするのは難しそうです。

また、生地の触り心地のような触覚に関することは、オンラインだけでは解決しづらい問題です。


販売員さんが持っている最大のスキルは
対面でのコミュニケーション能力


前置きが長くなりましたが、ここからがこの記事の本題です。対面での販売が制限された場合、販売員として働いていた人たちはどうすればいいのか。

②と③は、もともと人員が少なくても運営ができるような仕組みになっています。店舗数が少なかったりECを担当する人が少ない場合は、コンテンツを充実させるために、店頭に立てない分そちらに人員を配置してもいいかもしれません。しかし、ある程度の規模になってくるとそれも難しくなります。

そこで、販売員の数の方が多いならそれを会社の強みとして、販売員としてそのまま参加できるオンラインだからできる販売の仕組みを作るべきだと思います。

販売員さんが持つ最大のスキルは、やはり対面でのコミュニケーション能力だと思います。話が上手であったり、上手でなくても話すことが好きだったり。その人に何が似合うか提案する能力が高かったり、色んな着方を教えてくれたり。相手が初対面の人でもちゃんと話せる力は、すごいスキルだと思います。

そのスキルをそのままECに活用できたら、オンラインでの販売に幅が出るのではないでしょうか。


今だからできるオンラインサービス


では、どうすればそのスキルを活用できるのか。私は、ビデオ通話を活用したパーソナルスタイリングに可能性を感じています。

パーソナルスタイリングそのものは、ストライプデパートメントのような企業やスタイリストさんがオンライン上でサービスを展開していたり、オンラインではありませんが伊勢丹も同様のサービスをすでに展開しています。

これまでのパーソナルスタイリングでは、オンライン上でアンケートを記入し、それをもとにして提案する形式をとっている場合が多いかと思います。

この方法、アンケートの記入に手間がかかったり、何が送られてくるかわかるまで時間がかかったりするので個人的には難しいなと感じるのですが、プロのスタイリストさんにちゃんと選んでもらえるのは、自分以外の、しかもプロとしてやっている人に「これ似合うよ!」と言われて選んでもらえるので、それまで自分が似合わないと思ってたものでも少し自信を持って着れるかもというワクワクはあります。

ですが、プロ中のプロでなくても、販売員さんが似合うと思って選んでくれたものでも充分説得力があると思うし、人によっては行きつけのお店に行ったときのようなコミュニケーションがとれる方が魅力的と感じる人もいると思います。


また、今回の外出自粛によって、ZOOMやSkypeなどのサービスを使ったビデオ通話の心理的ハードルが下がったことは、大きな変化だと思います。自宅勤務に伴うテレカンや、外出制限によるWeb飲み会などで一気に広がり、これまでビデオ通話に抵抗があった人も、そのハードルが下がっています。

ビデオ通話を使った販売員さんによるパーソナルスタイリングは、もともとあったパーソナルスタイリングの良さを残しつつ、先に書いた販売員さんが持つ優れた対面でのコミュニケーションスキルをオンラインで活用できるサービスです。

ECがこれまで苦手としていたコミュニケーションの問題を解決する手がかりになりますし、店舗運営以外の販売員さんの新しい活躍の場になると思います。

この販売方法の良いところは、以下のことだと思います。

・物理的な移動がなくてもしっかり対面販売ができる

緊急事態宣言下では、お客様だけでなく販売員の方の移動も制限されてしまいますが、この方法では(販売員の方は自宅から配信するのか、別の場所で配信した方がいいか、考える必要があるかと思いますが)少なくともお客様側は移動の必要がありません。

対面での販売はもともと店舗で行っていたことなので、新しい業務ではないです。また、在庫管理は店舗在庫もEC上にまとめれば良いですし、ZOOMなどには画面共有などの機能もあるので、スタイリング資料などがあれば一緒に見ながら選ぶことも可能です。

・すでに顧客様が持っている服に合う服をセレクトできる

購入する側は自宅でやりとりができるので、自分がすでに持っている服を見せながら、それに合う商品の色や形、着方まで提案を受けられます。ライブ感のあるやりとりができるので、これまでのパーソナルスタイリングのように記入したりする手間がかかりません。

・販売員の数が多いブランドほど対応できる人数が多くなる

対応できる販売員の数が多い方が、サービスを希望する顧客様へ対応できる数が多くなるので有利です。特に店舗休業で休みになる人数が多い規模の大きいブランドにとっては、休みにするよりも有効なんじゃないかなと思います。

また、フリーで販売員をしている人でも、セレクトショップのようにブランドからの委託という形でサービスを行えると思います。

店舗での接客よりもオンラインでの接客の方が接客時間が長くなるかもしれませんが、その分しっかりとコミュニケーションがとれることのメリットの方が大きと思います。


逆にこのサービスが抱える課題は、

・販売員の提案力の強化が必須

これまでも販売員の方は、お店で接客する時色々な提案をしてきたと思います。しかし、ビデオ通話での接客になると、今までよりもより具体的で個別の提案ができるようにならないといけなくなります。

自分が販売する商品に関しては、スタイリストさんと同じような提案する能力が必要になります。

購入する側が何か買わないといけない気になりやすい

実店舗への買い物だと、ふらっと立ち寄って、少し話だけ聞いて後で買うことができますが、オンラインの対面販売だとなかなか何も買わずに終わることは心理的ハードルが高いように思えます。

どうハードルを下げられるかが、この販売方法がうまくいくかの鍵になると思います。

・ビデオ通話用に、別途販促用の資料が必要

インスタライブよりも1対1のコミュニケーションに重きが置かれるため、販売員側が自宅など近くに資料になるものがない環境で行う場合は、スタイリングの提案用に身長ごとや色の合わせ方などの様々な資料かなと思います。言葉だけだと顧客側がイメージできず、うまくコミュニケーションがとれない可能性があるので。(これはEC自体の課題でもありますが)

・サービスへの導線設計が必要

インフルエンサーの方のように、個人が顧客様に向けて発信する場合は必要ありませんが、ブランドが行う場合はどこをサービスの入り口にするか考えることは必要だと思います。

販売員がそれぞれで行うと、ブランドとしての発信というよりあくまでも個人としての発信として捉えられやすく、インフルエンサーのように発信力が必要になるからで、たくさん販売員がいる場合どうしても差が出てしまいます。

差が出てもいいのは、ビデオ通話がつながった後の販売数であり、通話が始まる前ではないですし、仕事で行う以上受け皿は会社側で作った方が良いと思います。逆に考えると、1つにまとめることで、個人に価値が分散せずにブランド価値を高められるとも言えます。

なので、あくまでもサービスの入り口はブランド側に作り、そこから各販売員の方へ割り振るようにした方が良いと思います。その方が買う側としても利用しやすいでしょう。

その代わり、割り振り方に工夫をして、楽しめるようにできるといいと思います。例えばランダムにしたり、人気販売員を選べたり、似た体型の人を選べたりと様々な方法があると思うので、どの形が一番良いのか考える必要があります。
(個人的に面白そうだと思うのは、販売員さんによって得意なスタイリングの傾向があると思うので、それによって選べるといいかなと思います。)


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ウィズコロナでもアフターコロナでもいいように


これからは物理的な接触を減らさないといけない事態になっても、販売員の方がしっかり働ける仕組みが必要になります。この方法でなくても何か策は考えないといけないと思います。

ビデオ通話を使った販売方法は、先に述べた『①対面による販売』と『③通販的なEC販売』の間に位置する販売方法で、①のオンライン化とも言える方法だと思います。

販売員の方は、これまでよりもスキルアップを必要とされますが、少なくともこれまでの経験をそのまま活かせますし、店頭での販売にしても同様のスキルはあるに越した事はないと思います。特にこれからはECでの販促にAIが積極的に導入されると思うので、AIができる提案とは異なった提案力が必要になると思います。

このままコロナがあるものとして生活しないといけないかもしれないし、コロナが収束してこれまでと同じような生活に戻れるかもしれません。そのどちらにせよ、今回得られた経験や新しくできるようになった事を積極的に取り入れられると、以前よりももっといいサービスができるんじゃないでしょうか。

このアイディア自体、机上の空論かもしれませんが、それでも何かの役に立てば幸いです。



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