「等価交換の法則」試し読み
はじめに
まず、怪しいタイトルの本を手にしていただきありがとうございます(笑)
本書はある種スピリチュアル本になりますが、最初に白状しておくと、私には霊感も予知能力もオーラを見る能力もありませんし、昔そういった能力があったこともありません。
また、手相、タロット、その他占いの類いも全くわかりません。
もちろん、それらを分かっている体で書いているのではなく、まったく分からない状態のまま本書を書いています。
じゃあこの本に書いてある「等価交換の法則」って何?
妄想?
自分で考えた法則?
もしかして「鋼の錬金術師」から学んだ何か?
いえいえ、そういったわけでもありません。
本書でご説明する「等価交換の法則」は確かに存在しますし、それは霊感や占いに長けていなくても、あるいはスピリチュアルな何かに全く興味がなくても誰でも理解し納得できることです。
簡単に言うと、
・報酬に対して代価を支払わなければならない。
・代価に対して報酬が支払われる。
・報酬と代価は「等価」である。
・報酬と代価に論理的、社会的因果関係はない。
ということです。
例えば、後に述べますが、ある歌手が国民的スターになったことと、その歌手の実母が殺害されたこと、この二つに明確な因果関係はありません。
スターになったから母親を殺されたというのはあまりにも暴論です。
しかし「等価交換の法則」では、その歌手がスターになるという報酬を受けた代価として母親が殺害されたと考えます。
馬鹿馬鹿しいと思うかもしれませんが、同様の事例は世界中にいくらでもあります。
それについては本編でじっくり見ていくとしましょう。
ちなみに、次のような出来事は「等価交換の法則」とはいいません。
例えば、
・ダイエットを頑張ったから痩せて綺麗になった。
・一生懸命勉強したから志望校に合格できた。
・仕事で結果を出したから出世した。
・経営していた会社が損失を出したから倒産した。
・不摂生がたたって生活習慣病になった。
・浮気をしまくったから恋人に振られた。
これらは単なる原因と結果であり、当たり前のことです。
そうではなく、一見原因不明の幸運や不幸に何らかの法則を見いだすのが「等価交換の法則」です。
そして、その法則をコントロールし、よりよい人生を歩もうというのが本書の狙いです。
お金を要求したり、何らかの団体に勧誘するようなことは一切ありません。
現時点ではまだ信用してもらえないでしょうが、少しでも興味が湧いたなら本書を読み進めてください。
できるだけロジカルに、分かりやすく、そして誰でも応用できるように「等価交換の法則」をご説明していきます。
第1章 等価交換
1 等価交換は実在する
次のようなニュースや特集を観たことはありませんか?
・誰もがうらやむような大成功を遂げた起業家やタレントに起こる不幸。
・キラキラした芸能活動の裏で一人苦しんでいた胸中を女優が独占告白。
・鳴かず飛ばずの芸能生活引退後、起こした事業が大成功。
・長い下積み生活が実り、一躍時の人に。
・発売当初は全く売れなかった商品が、偶然の出来事をきっかけにロングセラーに。
芸能やゴシップに興味がない人でも、生活していれば必ずこうした話は目につき、耳にすると思います。
私はこうしたサクセスストーリーや不幸話には興味がないのですが、それでも週に一回程度は必ず見聞きしていると思います。
そしてその都度不思議に感じていました。
というのも、こうした話にはどこか共通点があるからです。
では何が共通しているのか、成功や失敗、幸運や不幸には何か法則があるのか……。
そんなことをぼんやりと考えていたとき、ふとある言葉を思い出しました。それが冒頭で引用した「鋼の錬金術師」の有名な台詞です。
もう一度、今度は全文を引用します。
人は何かの犠牲なしに何かを得ることはできない。
何かを得るためには、それと同等の代価が必要になる。
それが、錬金術による等価交換の原則だ。
あの頃僕らは、それが世界の真実だと信じていた。
「鋼の錬金術師」(荒川弘・エニックス)
物語はこのテーゼを元に進められるのですが、本書で重要なのは前半部分です。
そう、芸能人や有名人のゴシップは、必ずといっていいほど幸福と不幸、下積みと成功といったプラスとマイナスの価値が同時に存在しているのです。
そして、それらの価値はほぼ同等(等価)であるように思えます。
大成功した人ほど大失敗し、長く苦しい下積み生活をした人ほど劇的に売れ、華やかに見える人ほど陰では誰よりも苦しんでいます。
つまり、芸能人や有名人、大成功した起業家などは、ただの努力や研鑽あるいは才能だけで有名になり成功したのではなく、それと同等の代価を支払ってきた(あるいは成功した後に支払っている)ということです。
しかもその成功と代価にはほとんど直接的な因果関係はありません。
では偶然やこじつけかというと、そうとも言えない説得力がどこかにあります。
例えば、大成功したタレントが突如大病を患ったり、社会的弱者が大成功して億万長者になったり、そういった例を見たとき我々はどこか心の奥深くで納得してしまいます。
それこそが本書でいう「等価交換の法則」の入り口です。
「鋼の錬金術師」が大ヒットしたのは、このテーゼが単なる設定ではなく、実際にどこかで毎日起こっている出来事であり、誰しもが心の奥に持っている考え方だからでしょう。
2 等価交換の解説
では改めて等価交換について考えてみましょう。
等価交換には「報酬」と「代価」という二種類の価値があり、またそれぞれに二種類の状況があります。
等価交換における価値
報酬(プラスの出来事)
お金、名声、権力を得る。
受験の合格、異性にモテる、勝負ごとで勝つ。
自身や家族が健康である。
突然の幸運など「いいこと」や自分にとってプラスとなること全般。
代価(マイナスの出来事)
お金、名声、権力がない、それらをなくす。
受験に失敗、異性からモテない、勝負ごとで負ける。
自身や家族の健康や生命を害する。
突然の不幸、不運など、「悪いこと」、自分にとってマイナスとなること全般。
この報酬と代価、言い換えれば良いことと悪いことが「等価」で「交換」されるというのが等価交換の基本的な考え方です。
良いこと(報酬)を10得れば悪いこと(代価)も10起こる、そして最終的には収支が0になる、それが等価交換の法則です。
ただし、そのいいことと悪いことに直接的な因果関係はありません。
ここが難しいところです。
ではそれらをいつどのように受け取り、あるいは支払うのでしょうか?
3 等価交換における報酬と代価
いいことがあった分同じだけ悪いことがある、悪いことがあった分同じだけいいことがある(しかもそれぞれに明確な因果関係はない)……それは皆さんの実体験からもなんとなくわかると思います。
ではそれらはいつどのようにして起こるのでしょうか?
等価交換における報酬と代価は、次の二種類に分類できます。
報酬の先払い(代価の負債)
まず「いいこと」が報酬として先払いされるケース。
その分の代価は後払い。
報酬の先払いが続けば続くほど見えない負債が貯まっており、どこかで必ずその分の代価を支払わなければならない。
報酬の後払い(代価の先払い)
代価(悪いこと)を先に支払っており、その分の報酬。
報酬はおおむね代価に見合っている。
代価に心当たりがあれば報酬の量に見当がつく。
幸福感、高揚感は薄いが納得がいく。
ちょうど代価の分だけ報酬を得れば後に負債は残らない。
もっとざっくり言うと、いいことが先に起こるか、悪いことが先に起こるかの違いです。それぞれの出来事だけ見ると、いいときは浮かれてしまい、悪いときは悲観してしまいますが、等価交換という視点で見たとき、いいこと・悪いことの次に来るものが予測できるのでそれぞれに対する感じ方や対応も変わってくるはずです。
とはいえ、ざっと説明しただけではわかり辛いと思うので、有名人を例にこれらを再度検証してみましょう。「報酬」「代価」それぞれ最も分かりやすい出来事をひとつだけ挙げてみます。
第2章 等価交換の実例
1 有名人の等価交換
本章では誰でも知っている有名人に起こった等価交換の実例をご紹介します。
なお、第5章ではさらに多くの有名人に起こった等価交換を列記しています。
報酬の先払い(代価の負債)
宇多田ヒカル(1983年生まれ)歌手、プロデューサー
〈報酬〉
16歳で歌手デビューし、ファーストアルバム『First Love』(99年)は累計765万枚の売り上げを記録。日本で最も成功した歌手のうちの一人。
〈代価〉
2013年(宇多田30歳)、母・藤圭子が死去。警察で自殺だと断定された。
つんく(1968年生まれ)歌手、プロデューサー
〈報酬〉
1992年、シャ乱Qのヴォーカルとしてデビューした後、モーニング娘をプロデュース、社会現象を起こす。
〈代価〉
2014年、喉頭がんを煩い声帯を摘出。
安室奈美恵(1977年生まれ)歌手
〈報酬〉
90年代にミリオンセラーを連発し、「アムラー」と呼ばれる安室のファッションを真似たフォロワーが大量発生、社会現象となる。
〈代価〉
1999年、母親が義理の弟(安室の叔父にあたるが血縁関係はない)に殺害される。
ベッキー(1984年生まれ)タレント
〈報酬〉
14歳でテレビデビューし、その後人気タレントに。
〈代価〉
不倫報道でバッシング、休業。
報酬の後払い(代価の先払い)
浜田雅功(1963年生まれ)お笑い芸人
〈代価〉
軍隊式スパルタ教育で有名な日生高校に3年間通い、過酷な青春時代を過ごす。
〈報酬〉
漫才コンビダウンタウンを結成し、国民的スターとなる。
松本人志(1963年生まれ)お笑い芸人
〈代価〉
貧しい家庭に生まれる。
〈報酬〉
漫才コンビダウンタウンを結成し、国民的スターとなる。
孫正義(1957年生まれ)実業家、資産家
〈代価〉
在日として朝鮮人集落に生まれ、差別を経験する。
〈報酬〉
ソフトバンク創始者。日本有数の実業家、資産家となり、世界長者番付では何度か日本一の富豪に輝いている。
又吉直樹(1980年生まれ)お笑い芸人、小説家
〈代価〉
芸人になるも長い下積みを過ごす。
〈報酬〉
2015年に発表した処女小説「火花」で芥川賞を受賞。単行本は累計239万部売り上げ歴代1位となる。
以上、分かりやすい例を挙げてみました。この時点で不満を持つ人もいるでしょう。例えばこうした文脈だと、「宇多田ヒカルや安室奈美恵は何の代価も支払わずに売れた、だから売れた代価として家族を亡くした」と言っているに等しいです。
もちろん私はそうは思いません。デビューまでの道のりは楽ではなかったでしょうし、安室奈美恵は尋常ではない努力家であると聞いたことがあります。
また、社会現象になるほど売れることの代価が家族を自殺や殺害で失うことなら、ダウンタウンの二人はどうなんだ? となるのも当然です。
はっきり言いますが、そこに明確な答えはありません。
ただ、いいことがあれば同じだけ悪いことが起こる、その逆も然りという法則がこの世界に存在するのは間違いないようです。
さて、これらは有名人のスケールの大きな話ですが、今度は我々の日常にある等価交換を探ってみましょう。
2 一般社会における等価交換
変身
身の回りの人で、それまでは全然目立たなかったのに、ある時期から急に頭角を現してきた人はいませんでしたか?
・小学生のときは平凡で目立たなかったのに中学生になった途端急に成績が上がった。
・中学生ではじめた部活で突如才能を開花させた。
・それまでモテなかったのに高校に入ったらなぜか急にモテだした。
・ブスだった子が大学に入ったら急に綺麗になった。
・入社時は誰もが見下していた新入社員がぐんぐん出世した。
このように、人がどこかで急に変身するケースは、等価交換でいうと「報酬の後払い」になります。
先に代価を支払った分、どこかの時点で報酬を受け取るようになったのでしょう。
転落
一方で、順風満帆な人生に見えたのに、ある時期から急に転落するケースもあります。
・日本有数の企業に勤めていた親が突如リストラに遭い貧乏暮らしに。
・小学生のときはガキ大将だったのに、中学生から急にいじめられる。
・中学生のときはスポーツ万能で学校のヒーローだったのに、高校で挫折。
・高校では学校一の秀才だったのに大学ではついていけず引きこもりに。
こうしたケースは等価交換でいうと「報酬の先払い」になります。
人よりいい思いをした分、後からその代価を払わされた例です。
このような変身や転落は必ず誰の身にも起こりますが、等価交換の法則を知っていれば良いことが起こっても気を引き締められるし、悪いことがあっても良いことと引き替えなんだなと納得できるようになります。
3 ことわざ、故事、古典文学に見る等価交換
こうした等価交換の法則を古人・先人はよく知っていたようで、ことわざや故事、文学作品の中にそうした主題を盛り込むということが行われてきました。
ここではそれらをいくつかご紹介しましょう。
勝って兜の尾を締めよ
〈意味〉
勝ったからといっても油断せず、よりいっそう心を引き締めよという教訓。
「勝利」という報酬の後には必ず何らかの代価を支払わなければならないということを古人も知っており、そのことを広く知らしめるためのことわざだと思われます。
昔から人間は、勝つとすぐ浮かれて足下をすくわれてきたのでしょう。
塞翁が馬(人間万事塞翁が馬)
〈意味〉
悪いことがいいことに転じ、いいことが悪いことに転じるという教訓。
塞翁という老人が飼っていた馬があるとき逃げた。それを見て気の毒に思い慰めてきた村人に塞翁は「これはいいことかもしれない」と平然としていた。すると数日後、逃げた馬は別の馬をたくさん連れて帰ってきた。
そのことの祝辞を言いにきた村人に塞翁は「これが災いになるかもしない」と悲しそうにした。すると後日、塞翁の息子がその馬から落馬し足を骨折した。
お見舞いに来た村人たちに塞翁は「これはいいことかもしれない」と明るい様子を見せた。しばらくすると隣国と戦争がおき、若者は戦争にかり出されたが、塞翁の息子は怪我のため見送られた。その戦争で村の若者が多く戦死したらしい。
これも典型的な等価交換のお話と言えるでしょう。塞翁は等価交換の法則を熟知しており、だからこそ馬が逃げたり息子が骨折しても平然としていられ、一方で逃げた馬が他の馬を連れて帰ってくるというタナボタを素直に喜ぶことができなかったのでしょう。
好事魔多し
〈意味〉
良いことが起こっているときには邪魔が入りやすい。
これは等価交換の報酬と代価がほぼ同時に起こっている例だと考えられます。
等価交換は巡り巡って何年も経ってから自分に返ってくることの方が多いですが、報酬と代価がほぼ同時に起こることも時々あります。
盛者必衰の理
〈意味〉
盛んなもの(こと)は必ず衰えるという真理。
そもそもは仏教の哲学ですが、「平家物語」の冒頭に引用されていることでも有名です。
ここでは「等価」という価値観(報酬と同じ分だけ代価を支払う)は提示されていませんが、上がったら下がる、流行ったら廃れるといったもっと大きく普遍的な価値観を説いています。
お金は使った分だけ入ってくる
ことわざや故事ではありませんが、よく聞く教訓です。
使った分が代価となり、またその分報酬として入ってくると考えるとまさに等価交換です。
実際に私も何度かそれを体験したことがありますが、使ったところと入ってくるところに全く関係がないことにびっくりしました。
若いうちの苦労は買ってでもせよ
〈意味〉
若いうちに苦労しておくと後でそれが財産になる。
故事やことわざではありませんが、昔の人がよく言う言葉です。
近年はこういった昔の言葉を「老害だ」と一蹴する傾向があります。
確かに、若い人からしてみたら余計なお世話だし、楽しんでいるのに水をさされるようで不愉快かもしれません。
また、苦労が必ず財産になるとも限りませんし、楽しく伸び伸びと遊び・学ぶことで、健全かつクリエイティブな人間が形成されるという意見にも賛成です。
一方「若いうちの苦労は買ってでもせよ」という言葉を等価交換という文脈から読み直すと、意味がまた変わってきます。
人間は20代から心身共にゆっくりと衰えていき、中年から老年にかけては日常生活すら困難になることもあります。
そんな中、若いうちに楽をして報酬ばかり得てしまうと、歳をとってからその代価を支払うこととなります。
それよりも若くて体力も気力もあるうちに代価の先払いをしておけば、歳をとってから報酬を受け取りながら楽に過ごせるようになるという人生の教えだと捉えれば素直に飲み込めると思います。
実は私自身も若いうちから苦労を結構しているのですが、30代後半になってから色々と人生が楽になってきました。
そうした出来事も、この等価交換の法則を確信する手助けになっています。
先輩が後輩におごる
こういった習慣は昔からあります。
よく考えればどうしてかわかりませんよね?
おそらくこれも等価交換における代価をすすんで支払っておく行為なのだと思います。
昭和の映画俳優などは、後輩を引き連れて一晩で数十万から数百万おごるなんてのが当たり前だったようですが、その分報酬も莫大だったそうです。
今でも後輩を引き連れて遊び歩くのが好きな芸人さんがいますが、やはりそういった人は売れていますしね。
このように、古人や先人たちも等価交換の法則に気づき、人々を啓蒙しようとしたり、自ら実践してきた跡があります。
とはいえそれらはざっくりしすぎていたり、スケールが大きすぎて現代を生きる我々の実人生にどのように応用していいのかわかりません。
そこで次章からは、日々の生活の中で具体的に等価交換を実践していくための考え方や行動をご説明していきたいと思います。
(試し読み終了)