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嘔吐恐怖症を自分で克服した話

ネットニュースで嘔吐(おうと)恐怖症の記事をたまたま見て、そういえば自分が嘔吐恐怖症だったこと、そして自分で克服したことを思い出しました。
同じ症状で苦しんでいる人がいるらしいので、自分の体験やどうやって克服したのかを書いておきます。

嘔吐恐怖症

嘔吐恐怖症とは、吐き気や嘔吐、また他人の嘔吐や吐瀉物に対して恐怖を抱く症状で、パニック障害や不安障害の一種だとか。
自分が吐くのが恐いというのと同時に、他人が吐いているのを見るのも恐いというのが特徴のようです。
さらに、それらが原因で社会生活に支障を来すこともあるそうです。
詳しくは検索してください。

自分の症状

まず前提として、嘔吐恐怖症に対して病院で診察していませんので、医師の正式な診断はありません。
ただ、ある時期(長くて3年ぐらい)特に吐くことに対して強い恐怖を持っており、一番ひどかったときは外に出るのにプレッシャーを感じていました。
たぶん広場恐怖が併発したのでしょう。
この辺も診断を受けていないのではっきりとは分かりませんが。

ちなみに、ひどいときでも毎日朝から晩まで吐くことに恐怖を感じて生きていたわけではありません。
基本はなんともないのですが、ちょっとでも『あ、気持ち悪いな』とか『吐くかも』と思いはじめるともうダメで、そこから不安や吐き気がずっと続きます。
ただ僕の場合、実際に吐きはしません。
これは人によって違うのかもしれません。
嘔吐恐怖→嘔吐という流れの方もいるのかもしれません。
まあとにかく生活の大部分が「吐く」という現象に支配されていたことは間違いありません。

嘔吐恐怖症になったきっかけと歴史

嘔吐恐怖症に関しては結構はっきりとしたきっかけと、それに至る歴史があるので述べておきます。
そもそも僕は小さい頃から体が弱かったのですが、吐くということがほとんどありませんでした。
一番古い記憶は中学生のときで、朝起きたらめちゃくちゃ気分が悪く、朝ご飯を食べていると吐き気がして、母があわててもってきた鍋かなにかに吐いたことを覚えています。
あのときの真っ黄色の胃液は今でもはっきりと覚えています。
ただ、それ以降どんなに体調を崩しても吐いた記憶はありません。
お酒も強いのでどれだけ無茶飲みしても吐きませんでした。

そして横浜に引っ越してから体を壊し、生活習慣や食事を見直してだんだん回復してきたある日、痛んだものを口にして気持ち悪くなり、20年ぶりぐらいに吐きました。
このとき言い知れぬ恐怖感を覚え、そこから突然吐くということに敏感になってしまいました。
喉にちょっと食べ物が詰まったりすると『やばい、吐くかも、恐い、どうしよう……』と急激に血の気が引いてき、パニックに近い状態になってしまいます。
それがだんだんちょっとした咳や喉の痛み、寒気、体のだるさなどでも起こってき、何もないときも「吐き気が起こったらどうしよう?」と不安に思うことが多くなってきました。

嘔吐恐怖症は吐かない人がなる?

たぶんですが、嘔吐恐怖症は僕みたいな普段全然吐かない人間がなる気がします。
普段わりと吐く人は嘔吐を恐いとは思わないでしょう。
普段全然吐かない人が突然吐いたり、そういった状態を見たりして嘔吐恐怖が誘発されるのだと思います。

特徴(自分の場合)

さて、そんな嘔吐恐怖が年単位で続いていく中で、だんだん特徴が掴めてきました。

①なんだかんだで吐きはしない

嘔吐への恐怖感や吐き気、それに伴う不安感に悩まされながら日々過ごしていくうちに、『あれ、なんだかんだで結局吐きはしないよな…』ということに気づきました。
吐き気はどこまでも吐き気でしかなく、そこから吐くところまではいきません。
つまり、これは何かの妄想だということが分かってきました。

②体を暖めれば治る

どんなに強い吐き気や不安も、体を暖めれば必ず治るということも発見しました。
これが嘔吐恐怖症の人全てに当てはまるかどうかは分かりません。

日常回復

なんだかんだで結局は吐きはしないというのと、嘔吐恐怖の一時的なおさめ方が分かってから日常生活が回復していったと記憶しています。
いつ頃、どんな風にというのは全く覚えていませんが(たぶんそれが嘔吐恐怖症を克服した証拠)、とにかくたいしたことないというのが分かってから楽になっていったと思います。

克服のきっかけ

嘔吐恐怖症の克服のきっかけははっきりと覚えています。
上記のように嘔吐恐怖があまり気にならなくなってきたある日、道を歩いていたらなにかのきっかけでまた『あ、吐きそう、吐いたらどうしよう…』と不安になってきました。
そのときふと『あれ、そもそもなんで吐いたらダメなんだろう?』という考えがよぎったのです。
その瞬間不安は突然消えました。
そう、冷静に考えたら吐いたらダメなんていう法律もないし、そういうマナーすらも存在しないんです。
もちろん道ばたやお店で吐いたら迷惑はかけてしまいますよ。
でももし吐いてしまったとしても、汚いとは思われるけどわざとじゃないし仕方ないって誰もが思うはずなんですよね。
お店のテーブルで突然おしっこをしたらもはや人間失格ですが、突然吐いたとしても仕方ないで済まされるはずです。
……と思った瞬間、本当に魔法のように嘔吐恐怖が消えました。

その後

その後嘔吐恐怖症だったことすら忘れて生活してきました。
ただ、吐くこと自体は今も嫌いだし、誰かが吐いているのを見るのも(映画などでも)以前と同じくらい嫌です。
ちなみにこれを書いていて「嘔吐」「吐く」という言葉を使ったり漢字を見るのも嫌だと再確認しました。
ただ、吐くことやそれらを想像すること、想起させる文字を見ることと、強い不安やパニックはもう結びつかなくなりました。

そして先日、冒頭のように嘔吐恐怖症を久々に思い出した直後、食べ物が喉につまって咳が出て苦しくなったのですが、冷静にうがいをしたり水を飲んだりして対処している自分を確認し、『ああ、やっぱり嘔吐恐怖はなくなったんだ』とちょっと感慨深い気持ちになりました。
嘔吐恐怖症の頃だったら血の気が引いて不安とパニックで歩き回りながら急いで冬物のコートを着て体を暖めていたことでしょう。

結論

僕の場合は「吐くことはダメなことじゃないし、仕方ない」と再認識できたことで嘔吐恐怖症を克服できました。
これが誰にでも効くかどうかは分かりませんが、もしかしたらちょっとは楽になる人もいるかもしれません。
あと、嘔吐恐怖症は別件での体調不良から回復していった時期に発症したので、そもそもの健康状態や基礎体力、メンタルなどとも関係していると思われます。
もしかしたら嘔吐恐怖症の専門治療よりも生活習慣を見直した方が克服の近道になるのかもしれません。
この記事が嘔吐恐怖症克服の助けになれば幸いです。

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