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「紡ぐ、鉄輪展。」 あとがき

円城寺と風我と一緒に「○」(わ)というタイトルで行った今回の展示。本当にたくさんのご来場ありがとうございました。

まずは、1週間を終えてみての率直な感想を綴った後に、ここに至るまでの様々な想いや苦労をまとめさせてもらいます。


今回の展示を終えて

率直な感想を言うと、「本当にたくさんの人たちに支えられて今の自分があるのだなぁ」と、改めて考えさせられる1週間でした。

今回が特に今までの展示と違ったのは、本当に多くの地元の方々にお越しいただけたことです。

今回はそんな地域の人々の思い出や記憶を辿る様に、僕なりに今の鉄輪を丁寧に紡ぎ出しました。展示会場では何度も話しましたが、戦後からその街並みを残している鉄輪という地域。鉄輪の今と昔を比べるだけの展示でしたが、そこに花を添えてくれたのは、そこに住む人々や湯治客、若者からお年寄りまで、いろんな時代をいろんな立場で生きてきた、人々の記憶でした。


こんなにたくさんの人々に愛されている街って素敵だな、と。

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あかねの想い

今回僕がこの展示に参加することになったのは、あかねが兼ねてよりやりたかった“鉄輪への恩返し”が形になったからでしょう。

”今の鉄輪を未来に紡ぐ”というテーマで製作された「Imagine」(詳しくは次で。)というZINEは、お世話になった鉄輪の人たちへの”ありがとう”がたくさん詰まっています。

今回の展示は元々このImagineのポップアップショップという名目で借りようとしていたところを、どうせならいろんなクリエイターで”今の鉄輪を紡ぐ”というテーマで展示会にしてしまおうということで始まりました。

あかねはあえてプロデューサー側に回ることで、僕たちはのびのびと展示をすることができました。自分はあまり前に出ず、陰でみんなを支えるという、控えめな彼女らしいやり方で、結果としていろんな人に感謝を伝えることができていると感じています。

僕もこの展示を通して、みなさんに”ありがとう”を届けられていたらいいなと思っています。



Imagine -鉄輪の今を紡ぐ-

Imagineの製作に取り掛かり始めたのは去年の夏前だったと思います。コロナ禍で紆余曲折ありましたが、ようやく去年の秋に出版することができました。

僕はこれまで様々なタイプの撮影をしてきましたが、紙媒体を一から作り上げるということをしたことがありませんでした。

”今を紡ぐ“という単純だけど難しい撮影に、色々と考えを巡らせたこともありましたが、今ときちんと向き合うことで、今というものの儚さと美しさに気付くことができたのかもしれません。

Imagineの写真は全てフィルムで撮影しました。印刷紙は写真が生えるように、しかし持って帰るのに大きすぎないようにと、あかねがこだわって選んでいます。

そんなこだわりの一冊に携われたことを誇りに思います。そんな一冊に向き合ってくれる人がいることを、とても嬉しく思っています。



眠っていたカメラ

Imagineの表紙の写真はことぶき屋の前の鉄輪銀座通りの写真です。会場にも展示していた通り、ここは昔のままの道筋がきちんと保存されています。

これを撮影したカメラは、実はスクランブルベップの隣にある民宿ひろみやのみほさんから頂いたPentax SP。押し入れの奥の方から引っ張り出して来たそのカメラには、埃がかぶって、レンズにはカビが生えていました。

しかし、どうしてもこのカメラで今の鉄輪を残したいという想いがありました。綺麗に掃除して、フィルムを装填して、シャッターを切ると、なんと綺麗に写っていたのです。その時、Imagineの写真はこのカメラで撮影すると決めました。


「どうしてもこのカメラで今の鉄輪を残したい。」


それは、過去と未来を”今”が紡ぎ出した瞬間でした。

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”ふつう”を大切に。

「この鉄輪でいい。」というキャッチコピーが表しているように、今回の展示では、”すでにそこにある良さ”に焦点を当てました。僕は、ただ過去と現在と未来を比較するはずだったこの展示を、年末に急遽このテーマにしようと持ちかけました。

しかし、これは急なように見えてただ「気づいていなかった」だけでした。

すでに自分が大切にしたいことは知っていました。すでにそこにあって、それでよかったのです。

そんな中で「ふつうの鉄輪ってどんなだろう」と、自分なりに目一杯目を凝らしながら撮影した写真は本当にふつうで、見る人によってはインパクトが薄くてわかりにくい展示だったかもしれません。けれど僕は、いつもそこにあっていい空間を作りたかったのです。


あそこに行けば、誰かがいる。それはまるで温泉のような空間。

そこから見える風景が普通であることに安心する。それはまるで古びたベンチのような居場所。


そんな空間であって欲しかったのです。



「これでいいんだ。」

僕は、別府の街が大好きです。その理由は、過ごせば過ごすほどにいろ見えて来て、人、歴史や自然、3つの間の関係性、そして今は「これでいいんだ。」という”暮らし方”が僕にとっての魅力になっています。

ある人が言っていました。「別府は暮らしの百科事典だ。」と。

その通りだと思いました。別府に来る前までは、上下関係競争社会の狭苦しい空気に揉まれて、「こうあるべき」「こうすれば幸せ」なんていう価値観の押しつけが、当たり前でした。

しかし、別府にはいろんな生き方をしている人がいました。なかには思わず「それでいいのか。」と言いたくなる人もいたりします。何も気を張らずに、温泉に浸かって、市場で野菜を買って、昼から酒を飲んで。

人より優れてなくてもいい。人と違っている必要はない。別府は、人に価値観を押しつけない街。”ふつう”の街だったのです。

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最後に

今回の展示では、今まで以上に積極的にクリエイティブ製作を行いました。インスタストーリー、ポスター、会場デザインなど、今までなんとなくで済ませていた部分をきちんとやってみることにしました。

気付いた方もいると思いますが、今回のクリエイティブは良品計画風に仕上げています。無印の数々のプロダクトをデザインして来た深澤直人さんと、”このままでいい”という考え方を教えてくれた良品計画に敬意を込めて。

実は主催者のあかねも、少し前まで無印でバイトしてたそうです。面白い巡り合わせですね。

それはさておき。改めまして、今回の展示に足を運んでくれたみなさま、ありがとうございました。僕にとってこれは新たな門出です。また別府で色々できたらいいなと思っているので、ぜひ僕を別府に呼び戻してくださいね。

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