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スタートアップのストックオプション設計のコツ - 権利行使期間の実務ポイント


はじめに

本記事は、以下の方々に向けて書かれています。

  • スタートアップを立ち上げ、初めて従業員へのインセンティブ設計を検討している経営者の方

  • スタートアップで経理を担当し、ストックオプション制度の実務を任されている方

  • スタートアップ支援を始めようとしている税理士・会計士の方

私は日々の実務の中で、「税制適格ストックオプションの権利行使期間をどう設定すべきか」という相談を多く受けています。
本記事では、法定要件を踏まえつつ、実務で活用できる具体的な設計のポイントをご紹介します。

税制適格ストックオプションの基本要件

税制適格ストックオプション(以下、税制適格SO)では、税制優遇を受けるための要件として、「付与決議の日から2年を経過した後でなければ権利行使できない」ことが定められています。
つまり、これが最短の権利行使開始時期となります。

実務における権利行使期間の設計例

1. 基本的な期間設定パターン

多くのスタートアップでは、以下のような期間設定が一般的です。

  • 付与日から3年後に権利行使可能

  • 付与日から4年後に権利行使可能

これらの設定により、法定の2年要件を満たしつつ、より長期的な人材定着効果を狙うことができます。

2. 段階的な権利確定スケジュール

より洗練された設計として、以下のような段階的な権利確定(ベスティング)を組み合わせるケースもあります。

  • 付与日から3年後:付与数の25%が権利行使可能

  • 付与日から4年後:さらに25%が権利行使可能

  • 付与日から5年後:残りの50%が権利行使可能

3. 業績連動型の権利行使条件

単純な期間経過だけでなく、以下のような条件を組み合わせることで、より戦略的な設計が可能です。

  • 売上高が○○億円を達成した後に権利行使可能

  • IPO後1年経過後に権利行使可能

  • 営業利益率が○○%を達成した後に権利行使可能

設計時の実務ポイント

  1. 目的の明確化 会社の成長フェーズや人材戦略に応じて、適切な期間設定を行うことが重要です。

  2. 従業員との対話 権利行使期間の設定理由を従業員に説明し、理解を得ることで、インセンティブとしての効果を高めることができます。

  3. 定期的な見直し 市場環境や会社の状況変化に応じて、新規付与分の権利行使期間を見直すことも検討しましょう。

まとめ

税制適格SOの権利行使期間は、法定要件である2年を最短としつつ、会社の状況や目的に応じて柔軟な設計が可能です。人材定着と企業価値向上の両方を実現するため、戦略的な制度設計を心がけましょう。

畠山謙人について

畠山謙人 / Hatayama Kento
会計士・税理士
シードスタートアップの税務顧問
スタートアップの資本政策アドバイザー

シード期のスタートアップに特化した会計士・税理士。
資本政策と財務戦略の最適化を通じて、スタートアップの成長加速を支援。創業期特有の課題に寄り添い、適切な資金調達と持続可能な成長を実現するための伴走型アドバイザーとして活動。
実務に即した会計・税務・資金調達の知見を発信しながら、スタートアップエコシステムの発展に貢献できるよう日々奮闘している。

畠山謙人のXアカウント

https://twitter.com/kandmybike

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