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法人登記における代表者住所の一部非表示にいたるまでの道のり

2024年4月16日、省令改正がなされ、同年10月1日から、一定の要件のもと、法人登記における代表取締役等の住所の一部非表示措置をとることができるようになりました。
クリエイターエコノミー協会では、2022年7月頃から、この問題に取り組んでいましたが、クリエイター、フリーランス、スタートアップをはじめとして、さまざまな方の活動を後押しできる結果となり、本当によかったです。


1 きっかけ

この活動をはじめたきっかけは、当時、協会の会員から、「クリエイターが活躍しはじめ、ステップアップするために、法人を作りたいという相談を受けるが、個人住所が出てしまうというデメリットの説明をすると、諦めてしまうケースがある」という具体的なお話を聞いたことでした。
代表取締役の住所について、プライバシー保護の観点から、登記事項から外すべきではないかという議論は、2003年頃から議論されており、その後も、繰り返し取り上げられていたことは、以前から知っていましたが、生の声を聞き、改めて、なんとかできないかと考えました。

2 はたらきかけ

協会では、それまでも、polipoliさんや議員の先生方と相談させていただいており、この問題についても、どのように取り組むべきかを相談し、海外の登記制度などを調べたりもしていました。
そのなかで、2022年9月に、インターネット上で取得できる登記情報について、会社代表者の住所を非表示にする改正の動きがありつつも、多数の反対意見などもあるなかで、直前で取りやめとなりました。

他方で、政府では、クリエイターやフリーランス、スタートアップなどを強く推進する動きがでていました。
そこで、民間からも声を上げるべく、シェアリングエコノミー協会、スタートアップ協会、スタートアップデータ標準化協会、Fintech協会、フリーランス協会にお声がけをして、法人登記の代表取締役の住所を原則非公開とする旨の提言を作成し、2023年5月8日、共同して、自由民主党新しい資本主義実行本部スタートアップ政策に関する小委員会に提出しました。

この件については、多くの方から、ご意見をいただき、代表者をはじめとする法人に関わる方々の関心が深い分野であることを改めて感じました。

その後、2023年5月11日には、スタートアップ政策に関する小委員会が、会社登記の際に登記簿に代表取締役の住所が記載されて公開情報になる点についての見直しも求める、「『スタートアップ育成5か年計画』の実現に向けた提言」を、新しい資本主義実行本部の本部長を務める岸田総理に申し入れをしました。

2023年5月25日には、上記に加えて、法人登記の代表取締役の住所を原則非公開とする提言を、共同して、自由民主党スタートアップ推進議員連盟宛にも提出しました。

また、弁護士ドットコムニュースにも取材いただきました。

3 実現に至るまで

その後、さまざまな方にご尽力いただいたおかげで、2023年12月には、省令改正案のパブリックコメントが出され、2024年4月の省令改正に至りました。

4 振り返って

改正に至ったのは、あくまでも、これまで、ステークホルダー間で、さまざまな議論がなされ、スタートアップやフリーランス、クリエイターに対する追い風が吹き、さまざまな団体、議員の先生方、行政の皆様が尽力された結果であって、
協会が果たした役割は、その中で、インターネット全盛の時代に代表者の個人住所が登記上、公開されることで、ネットに晒されて残ってしまう、自宅に知らない人が来てしまうなど、実際にこれだけの実害があって、本当に、変わってほしいと望んでいる方々がこれだけいるということをしっかり伝えることにあったように思います。

また、民間からも声をあげることで、これまで、なかなか動かなかった規制が動くことにつながったことは、特商法の運用に関する見解に続き、とてもよい先例となったようにも思います。

5 今後について

今回の改正で、株式会社の代表者については、一定の手当がなされましたが、NPO・合同会社をはじめとする他の形態の団体においても、同様にプライバシーリスクを抱えています。
まずは、株式会社の代表者についての制度を適切に運用していくなかで、そうした団体にも、広げていければと考えています。

意見募集の結果12「対象の拡大については、いただいた御意見を踏まえ、施行状況も勘案しながら、引き続き検討してまいります。」

6 今後の実務上の運用について

今回の件を受けて、10月1日以降、多くの会社では、登記の際に非表示措置をとっていくものと思います。

これまでの制度で必要とされていた部分のうち、
住所や実質的支配者については、意見募集の結果において、
法律上の利害関係人は、書類閲覧により確認可能と明記されました。

13「住所が記載された書面を閲覧することについて法律上の利害関係を有する者については、登記簿の附属書類の利害関係を有する部分として閲覧をすることにより代表取締役等の住所の確認が可能」
21「上場会社を除き、代表取締役等住所非表示措置を講ずることの申出に当たっては当該会社の実質的支配者を証する書面を添付することを要件としており、当該書面を閲覧することについて法律上の利害関係を有する者においては、利害関係を有する部分を登記簿の附属書類として閲覧することが可能」

また、具体的な手続きの詳細については、今後、通達で明らかにされていくようです(28、32、38)。

なお、
36「今回の改正による代表取締役等住所非表示措置については、申出と併せての登記の申請によって記録される住所に限って講じられるものであり、御指摘の閉鎖事項証明書や閉鎖登記簿謄本に記載された住所を含め過去の住所については対象外です。」
という点は注意が必要です。

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