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事業にかかわるスタートアップ法務について考えていることー白と黒とグレーのはざまで

0 はじめに

法律事務所でさまざまなケースに触れた後、note株式会社では、1人法務からはじまり、現在は法務室長・クリエイターエコノミー協会の事務局長などをしています。

1 事業にかかわるスタートアップ法務のマインド

スタートアップは、会社として、早期に大きく成長していくことが求められています。
そのため、法務としても、違法なこと=「黒」は許されませんが、
なるべく事業部を後押しするようにリスクマネジメントしていくことが重要だと思っています。
そのため、

  • 事業部から「黒」な「方法」があがってきたからすぐ諦める

  • グレーだから一切やらない

  • 検討に時間をかけすぎる

といったことは、なるべくしないようにしています。

2 グレーをなるべく白に近づけていく

グレーなものについては、まず、グレー度を検討します。
1人では判断に迷うケースでは、メンバーや顧問弁護士などとブレスト・相談します。
手元資料がそこまで充実していないこと・リソースの問題もあるので、ある程度まで調べたら見切りをつけ、顧問先を含めたトータルのリソース配分の最適化につとめています。
そのうえで、白に近いものはそのままとして、グレー度の高いものは、なるべく白に近づける方法を考えます。
もちろん、クリアに違法でなければなんでもよいわけではなく、レピュテーションリスクなども考慮します。事業規模が大きくなるにつれ、レピュテーションの許容度が変化し、それに伴ってグレーの許容度も変わっていくものと考えています。リスクベースで考えたときに、事業規模が大きくなるほど、影響範囲が大きくなるためです。
結果として、○年前の回答と違う、みたいなことも発生します(ときに、法務室の成長に伴う回答変化もありますが、会社の成長とともに法務室も成長しています。)。
なお、会社のカラーによっても許容度は変わるように思います。
どこまでのグレーを許容すべきかというのは、ケースによっては悩ましい部分があり(法務がリスクをとる側面もあり)日々の情報収集、場数の中で、感覚を磨くようにしています。

3 法改正の動向も意識する

個人情報保護法などでしばしば発生しますが、特に、新しい分野で、違法ではないが、あまりにもやんちゃなことを続けていると、穴を塞がれるおそれもあります。また、特に、新しい分野では、業界の動向によっては、規制が走ることがあります。
そのため、余力があれば、省庁などの動きを、各省庁や業界団体などを通じて、フォローできると、早期に対応の準備をすることができ、さらには、実務に即した改正になるよう働きかけをすることもできます(それによって良い方向にもっていけるかというと、ハードルは相当高いものではありますが)。

4 事業部からの「黒」な「方法」の提案に対しては、代案を考える

「黒」な「方法」の提案があったとき、ダメですということも大事ですが、それと同じくらい、代替案を出すことも大事です。もちろん、どうやっても「黒」なものは、「黒」であることを伝えることにはなりますが、「グレー」や「白」の代替案がないか考えます。
長期的な施策の場合は、いわゆる「ルールメイク」といわれる動き(解釈変更、法改正、グレーゾーン解消制度、規制のサンドボックスなど)をすることも一案と考えています。

5 手を尽くしても「黒」になるものは「黒」という

他方で、どうやっても「黒」なことには、「黒」といいます。事業部を後押しすることは重要ですが、それはあくまでも「黒」=違法でない範囲で、になります。
事業部と密接になっていくと、後押ししたい気持ちになるかもしれませんし、事業部の圧もあるかもしれませんが、「黒」は許容できないリスクなので、「黒」は「黒」といいます。

6 スタートアップ法務の醍醐味

スタートアップ法務では、リスクを見積もるだけでなく、そのうえで、どちらがよいか、経営や事業部から直接聞かれることが多く、難しいことながら、それが事業に反映される姿を間近で見ることができるのは、醍醐味なように思います。
また、このような、スタートアップのなかでしていることを踏まえて、外部からアドバイスできる方というのは、きっと重宝されるのだろうなとも感じています。

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