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140文字小説:故郷の匂い

飲んだ帰り道、湿った夜空を見上げて同僚が呟く。

「雨の匂いっていいよな。アスファルトから立ち昇るような匂いがさ」

「お、おう。そうだな」

嘘だった。

本当は土の蒸れたような匂いが俺の知る雨の匂いだ。

上京して10年、最後に土の匂いを嗅いだのはいつだろう。

久しぶりに母ちゃんの声が聞きたくなった。

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