クロヤ ケント

0から1を生み出すことがしたくて文章を書いています。 普段はTwitterで140文字…

クロヤ ケント

0から1を生み出すことがしたくて文章を書いています。 普段はTwitterで140文字小説を投稿中。 noteにはTwitterに投稿した作品を加筆、修正したものを掲載しています。 今後は短編・長編も掲載できればと思っています。 物書きさんと繋がりたい

最近の記事

140文字小説: 紙飛行機

俺が作る紙飛行機は少しもうまく飛ばなかった。 遠くまで飛んでいくお前の紙飛行機がとても羨ましかった。 同じ新聞紙で作ったはずなのに、まるでそれだけ神様が摘みあげたように高く高く飛んでいったっけ。 またあの土手で紙飛行機を飛ばそう。 そんな辛気臭い病室から見る空は、お前には狭いだろうから。

    • 140文字小説:夏休み

      小学3年生の夏休み、僕は彼と出会った。 黒煙が立ち上る円盤、そこから出てきた生物は人ではなかったが、不思議と恐怖は感じなかった。 残りの夏休みは毎日コナラの木の下で語り合った。 地球のこと。彼の星のこと。 言葉はわからなかったけど、不思議とお互いの考えていることは理解できた。 あれから9年、僕は地球人で一番貴重な夏休みを経験する。 最初の星は車輪銀河の端っこ、七色の月が照らす惑星だ。 *Twitter掲載時より加筆したので厳密には140文字ではありません⋯⋯

      • 140文字小説:ビールの味

        金曜日。ビールのプルタブに指をかける。 プシュッ!という音は脳への終礼の合図だ。 今週もがむしゃらに頑張った。 泥臭く頑張るなんて、近頃の若者にとってはダサいのかもしれない。 そんなこと構うもんか。 事実、この瞬間のビールは旨いんだ。 「とりあえず生」よりも、「頑張った生」が俺はいい。

        • 140文字小説:お盆 2021

          「ダメですよ、おじいさん!」 「ちょっと孫やひ孫に会いに行くくらいええじゃろ」 「みなさん自粛してるんですから、私たちも自粛ですよ!」 「お墓参り行けない分もちゃんとお線香あげたかい?」 「うん、パパ! ご先祖さまもジシュクなの?」 「そうだな、ご先祖さまも今年は自粛だったりしてな」

        140文字小説: 紙飛行機

          140文字小説:夢までの距離

          どこまでも追いかけてくる月が怖くて、夜道は母の影に隠れて歩いた。 母より体が大きくなる頃には、月は追われるものではなく、追いかける存在となっていた。 「月に勝つ」と書いたら進路指導で怒られた。 「日本人初の月面着陸となるロケットが今打ち上げられました!」 長かった鬼ごっこは俺の勝ちだ。

          140文字小説:夢までの距離

          140文字小説:タイムマシン

          世界屈指の科学者と評された彼はタイムマシンを完成させた。 しかし、現在の最先端の技術を持ってしても、任意の時間軸に飛ぶことは難しかった。 このタイムマシンでの行き先はただ一つ、脳内で最も鮮明に残っている瞬間。 メリットばかりではない、使用者によっては最悪の瞬間に飛ばされる可能性もあるわけだ。 彼はスイッチを押した。 目の前には完成したばかりのタイムマシンがあった。

          140文字小説:タイムマシン

          140文字小説:故郷の匂い

          飲んだ帰り道、湿った夜空を見上げて同僚が呟く。 「雨の匂いっていいよな。アスファルトから立ち昇るような匂いがさ」 「お、おう。そうだな」 嘘だった。 本当は土の蒸れたような匂いが俺の知る雨の匂いだ。 上京して10年、最後に土の匂いを嗅いだのはいつだろう。 久しぶりに母ちゃんの声が聞きたくなった。

          140文字小説:故郷の匂い

          140文字小説:男子三日合わざれば

          一週間の出張が終わり、久しぶりに我が家に帰る。 玄関の扉を開けるやいなや、息子がミサイルのように股間に着弾した。 たかが一週間、されど一週間。 男子三日会わざればなんとやら。 増えた語彙、上手くなった歯磨き。 ちょっとした浦島太郎気分だ。 腰が痛いのは玉手箱のせいか、君が少しだけ重くなったのか。

          140文字小説:男子三日合わざれば

          140文字小説:無色の可能性

          息子が生まれた時、眼前の無限の可能性に尻込みをしてしまった。 この子は将来タイムマシンを作るかもしれない。 世界に忌み嫌われる大悪党になるかもしれない。 白にも黒にもなり得るその透明な可能性に、底知れぬ期待と責任を感じた。 君の笑顔の一つひとつが未来を作ると信じて、今日もパパは頑張るよ。

          140文字小説:無色の可能性

          140文字小説:10%の笑顔

          左利きは10%の貧乏くじだと思っていた。 駅の改札は不便だし、正直ファミレスの涙型レードルは差別だと思っている。 だけど今日、少しだけこの手を嬉しく思った。 あなたと一緒に行ったラーメン屋、ぶつかり合うあなたの右手と私の左手。 「ごめんね」と恥ずかしそうに微笑むあなた。 この笑顔を見れるひとは十人に一人だから。

          140文字小説:10%の笑顔

          140文字小説:幸せは歩いてこない

          幸せは歩いてこない。 子供の頃は、いつか自分にも父と母のような当たり前の家庭、 当たり前の幸せが勝手に訪れると思っていた。 大人になっても字が自然に上手くなるわけがないように、 自分が前を向かなければ、未来を見なければ世界は何もしてくれない。 幸せは歩いてこない、 だから歩いていくんだね。

          140文字小説:幸せは歩いてこない

          140文字小説:大人ってなんだ?

          早く大人になりたくて大人の真似をしていた。 飲めない酒に、むせかえるタバコ。 うまいと思った試しはない。 それなりの歳になってからは、大人を演じてきた。 大人だったらこう言うだろう、こう考えるだろう。 僕はいつになったら本当の大人になれるのだろう。 周りの人達はいつ大人になったのだろうか。

          140文字小説:大人ってなんだ?

          140文字小説:あなた・涙

          窓際の百日紅が今年も花を咲かせた。 主人に忘れられた花。 プレゼントも写真も何もかも、あなたの香りがするものは全て捨てたけれど、これだけは捨てられなかった。 花に罪はないと思ったから。 なのにどうしてだろう、どんな物よりもこの花があの季節を思い出させる。 今年も桜色の花弁が涙で濡れている。

          140文字小説:あなた・涙

          140文字小説:流星

          幾世を旅した名もなき星のかけらは、銀河の片隅で一つの星に出会う。 その青い引力に惹かれたなら、二度と夜空には戻れないだろう。 それでも構わない、今まで見たどの星とも違うこの色に触れられるなら。 近づくほど熱を帯びる体は生涯でただ一瞬、自ら光を放つ。 旅路の果て、光の足跡に人々は何を願う。

          140文字小説:流星

          140文字小説:ピーナッツバータ

          母が作るピーナッツバターが大好きだった。 市販品と違い、ほのかに塩味が効いたピーナッツバター。 ジャムを頬張る妹の横でそれを食べる時は、少しだけ大人になった気がした。 いま、目の前で眠る皺くちゃの母。 口の中にはあの時のほのかな塩味が広がる。 息子がきょとんとした顔で尋ねた。 「パパ泣いてるの?」

          140文字小説:ピーナッツバータ

          140文字小説:紙ひこうき

          俺が作る紙飛行機は少しもうまく飛ばなかった。 遠くまで飛んでいくお前の紙飛行機がとても羨ましかった。 同じ新聞紙で作ったはずなのに、まるでそれだけ神様が摘みあげたように高く高く飛んでいったっけ。 またあの土手で紙飛行機を飛ばそう。 そんな辛気臭い病室から見る空は、お前には狭いだろうから。

          140文字小説:紙ひこうき