ステージ撮影について
ステージ写真を撮る上で大切な事は、露出と予測。
クラシック演奏の様に大きく照明が変化しない場合は別として、
ライティングに演出が入るものは全て露光との戦いになる。
ステージ上の目まぐるしく変化するライティングと目潰しと言われる客席に向けた明かりまであるので、露光をカメラまかせにすると間違い無く失敗する。
対抗できる手段は露出をマニュアルで設定すること。
加えてゴーストやフレアのコントロールができるレンズを選ぶ必要があり、
撮影できる時間が限られている事から様々な変化に対応しやすい機材で
撮影するのが望ましい。
私の場合、高輝度の階調を優先する設定で白飛びしない露出にして、
手持ちでブレないシャッター速度を確保できるように感度を設定する。
音楽系のステージはプレーヤーにしっかり明かりが当たるが、
ダンスや芝居の場合は極端に暗くなったり表情が見えないような明かりも
あるので、明るいレンズを用意するのも必須となったりする。
明るいレンズを、と書きながら
EF100-400を使ったのは必要なレンズであったからに他ならない。
撮影場所は関内ホール(小ホール)のステージサイドで距離がある事からよりアップを撮りたくなった時に対応できるようにチョイスした。
勿論、暗いレンズなので2段絞った感覚でf/7.1で使う事が多く、
結果的に感度をISO1600にするのも決まりになっていた。
そのISO1600という感度はステージ写真ではボーダーな値だった。
何故なら、高輝度部分を優先するとどうしても全体的にアンダーに写る事から
画質がザラつきやすく、それ以上感度を上げると使い物にならない
と感じていたからだ。
ただ技術の進歩は恐ろしい。
DXO PhotoLabのノイズリダクション「DeepPRIME」最新版の
「DeepPRIME XD」を使うとISO3200でも余裕で使えるくらいの効果がある。
そのため、状況によってはISO6400でも使うようになったのだ。
※DXO PhotoLabを使わない人には、RAWデータのみを加工できるPureRAWが
用意されている。
RAWで撮影していないとこの想像を超えるノイズリデューサーは使えないが、ステージ撮影においては色温度の変更ができるRAWでの撮影は必須。
そのため、違和感なく利用していたが、RAWデータはファイルサイズが大きい事から現像用機材にもそれなりの対応が求められてしまう。
ちなみにこの写真は、DXO PhotoLabでモノクロ化まで行い、
PhotoshopCCでリサイズとコントラスト調整などを行ったものだ。
トップライトならではの陰影と、歌っている空気感を出すためのフレーミング
だが、こういった被写体の場合は曲を聴きながら表情がどう変化するかを予測して
シャッターを切るしかない。
音楽の場合はリズムがあるのでまだ楽だが、シャッターのラグとライティングの
タイミング、そして被写体の動きを予測してシャッターを切る感覚は、
どうしても経験が必要になってくる。
つまり経験を積む事でしか上達できないのだが、考えてみればどんな写真撮影でも
上達には経験が必要なのかも知れない。
それに加えてステージ写真の場合、撮影できる場所に制限が多い事が当たり前
なので、狙いたいフレーミングが可能なポジションが使えるかどうか、
制限があるのならどのタイミングなら可能なのかを、
主催者や舞台監督他と話し合って許可をもらう必要もある。
(この写真も、リハ中だけ許可がもらえた場所で撮っている)
この日はミラーレスと5D4で撮っているが、ステージに関しては5D4のOVF
の方が圧倒的に撮りやすい(特に連写)。
ミラーレスはEVFならではの失敗しない安心感はあっても
ファインダーの明るさと環境光との差の大きさで撮りにくいので、
目に自信が持てる人は無音シャッターが求められる場合を除いて
一眼レフで撮った方が楽だろう。
とは言え、既にデジタル一眼レフカメラが徐々に減ってきている現状では、
嫌でもミラーレス一眼カメラに対応しなくてはいけない。
そしてそれは慣れる事で違和感も薄れ、
無音シャッターが使える事からクラシックや芝居などの本番撮影にも対応できる
利便性で、ステージ撮影においてデジタル一眼レフは駆逐されるだろう。
現在のメイン機R5はその高画素故に手ブレが起きやすく、
ボディ内手振れ補正があってもシャッター速度を上げないと歩留まりが悪い。
加えてRシリーズはボディにしろ純正レンズにしろ高額な上に、サードパーティー製の専用レンズも無いに等しいので、財務省からも突き上げがある。
「Rの画素数でボディ内手振れ補正が付いたボディを出してくれませんかね?キャノンさん」と呟いたらR6MarkⅡを出してくれたけど、
私の撮影スタイルでは5D3相当の画素数じゃちょっと足り無い。
なのでR5とRでステージ撮影に対応するようになってしまうだろう・・と思っているけど、どうなる事やら、です。