「音楽をヒントに、自分の常識や感覚を疑ってみる」

音楽心理学で研究された不思議な現象の一つに「和声感」というものがあります。


これは、
「ある音を聴いたときに、その音と一緒に聞くことが多かった和音が(実際に鳴ってなくても)一緒になっているように感じる」
という現象です。


 簡単な曲をコンピュータに純音のみで演奏させて聞かせ、そのうちの一音をその音によくつけられる和音に入れ替えてもう一度聞かせます。


 そして、「一回目と二回目は同じでしたか?」と訊くと、
音楽的な訓練を受けている方が注意深く聴いていた場合は音が変わったことに気付くのですが、
 そうでない場合は『これまでの経験では、だいたいいつも、この音と一緒にこの和音がなっていた、今回は聞こえなかっただけで実際はなっていたんだろう』と脳が判断し、脳内で情報を補うので(例えば、ハ長調では、ドだけをならしたときも、ソだけをならした時もドミソが聞こえたように感じます)気づきません。

(ピアノでミスタッチをしても気づかれる場合があるのと気づかれない場合があるのには、この和声感が関わっているようです。)


 我々がイノベーションを起こそうとするとき「自分の常識を疑う」ということをしますが、実は、常識以前に「世界がどう見えているか?あるいは、どう聴こえているか?」も、これまでの経験に縛られて補整されていることがあるのです。


 そしてそうした感覚の補整をオフにして「未経験の子供のように」見たり聞いたりするには、専門的かつ高度な訓練及び、注意深い観察が必要なことがこの「和声感」の研究からわかります。


 このように自分の感覚の補整を直すのは高度な訓練がいりますが「自分の感覚は実際とは違うかもしれない」と疑って計測機械等を使用することはすぐにできます。


 音楽をヒントに、自分の常識や感覚を疑ってみましょう。

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