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簡単なカウンセリングの方法と練習法

授業でカウンセリングの初歩的な練習をするときに使っているプリントの内容です。学生の声を反映して毎年ちょこちょこ直してます。

A3用紙一枚に収めるために、かなりいろいろ省いたりしてます。御必要に応じて、付け足したり、いろいろ修正なさったりして、御自由に御使いください。
(※文中の「クライエント」は悩みがあって相談に来た人という意味で、「カウンセラー」はその相談を受けている人という意味です)

傾聴技法(話をよく聴く)練習

① 「かかわり行動」の練習
※基本姿勢:やや前傾、つま先を相手に向ける。自然な笑顔。相手の表情や言葉等から、自分の目線や姿勢、声の調子や座る位置が相手にとって心地よいものになっているかどうか感じ取り(あるいは直接訊いて)、調節する。相手の話を聴くに徹し「聴いていますよ」というサイン(うなずき等)を出す。

② 「観察」の練習(感情の反射を含む)
相手の表情や動き、姿勢、呼吸、服装、髪型、顔色…等々を、五感だけでなく全身で感じとる。
呼吸を合わせたり、しぐさをさりげなく真似したりして自分の心身の状態を相手のそれに近づける努力をする。
感じ取ったことを伝えて確かめる、例「あなたは今、…という感情を感じていましたね?…(表情)や…(動き)からそう思いました。」等。
違っていたら、やり直し。

③「 開かれた質問」(開かれた質問→傾聴→傾聴した内容をもとに開かれた質問→傾聴…を繰り返す)

「今日はどうされました?」「どんなことがあったのですか?」(事柄)
「そのときどんなことを考えていましたか?」(思考)
「そのときどのように感じられましたか?」(捉え方・感情)
「それに対してあなたはどんなことをしましたか?」(行動)
「その結果どうなりましたか?」(結果)
「それはあなたにとってどんな意味をもちますか?」(意味) 等々

傾聴した内容を伝え返して理解が正しいことを確かめた後に、理解した内容を基に質問をする

例「○○についてもう少し詳しく話していただけますか?」等

※「なぜですか(理由)」はクライエントも分からないことが多く、『責められてる』と感じられることもあるので、なるべく使わない。
例えば「なぜそう思うのですか?」とは訊かず「そう思ったきっかけは何ですか?」等と訊く。

④ 「閉ざされた質問」
開かれた質問に答えるのが心理的にきついクライエントには「はい」、「いいえ」あるいは一言で答えられる質問をいくつか訊いて話しやすい雰囲気を作る。

⑤ 「最小限の励まし」の練習
適度にうなずく、「それから?」「そして?」等と話を促す。相手の強調した言葉をそのまま繰り返す。

⑥ 「繰り返し」の練習
クライエント役が、今の自分の気持ち、今感じていること、今心配していること、自分の性格などについて話す。それをよく聴いてカウンセラー役は、「あなたは…なのですね?」等と繰り返す

※ネガティブなものは「あなたは…と感じている(思っている)のですね」等と繰り返すことで、相手の言葉を否定せずに、その内容はクライエントがそう感じている(思っている)だけで事実ではないかもしれないと暗に示す。
例「あなたは御自分を暗い性格と感じているのですね」等

※ネガティブなことばかりが出てくるときは下記の積極技法の④「ほめる・認める」で解説している例外探しの質問コーピングクエスチョンスケーリングクエスチョンを活用してポジティブなものを話すきっかけをつくる。

⑦ 「言い換え・明確化」の練習
話をよく聴き、クライエント役が述べた言葉のうち、重要な言葉だけを残して、他の部分は別の言葉で表現する(このとき、言いたいことがより明確になるように表現する)。

⑧ 「感情の反射」の練習
傾聴や観察したことから、クライエント役の気持ちを推測し、「あなたは…という経験(事柄)をし、それがあなたには○○と思えた(思考)、なので…(感情)と感じているのですね?」等と訊きながら、感情を表情やしぐさ等も使って映し返す。違っていたらまた傾聴しなおす。

⑨ 「要約」の練習
クライエント役が話したことの、もっとも大事な点を要約して、「…(要約)…。あなたが言おうとしているのはこういうことですね?」等と訊いて確かめる。違っていたらまた傾聴しなおす。

※傾聴し理解できたと思ったことは伝え返して合っているか確かめる。「いいえ違います」と答えられたら「私はまだよく理解できていないようです。もう少しお話を聴かせてください。」等と話を続ける

(ベテランのカウンセラーでも、他者の心を100%理解するのは不可能ですので、多少は間違えて当然です。むしろ「分かったつもり」になるのがとても危険なので、慎重に傾聴して伝え返しましょう。また、違っていたらクライエントが「違います」と指摘できる雰囲気や信頼関係を作っておくのも大事です)。

※傾聴技法においては自分の意見、理屈や評価は言わず、ひたすら聴く姿勢に徹する。

対決技法(カウンセラーとクライエントの対決ではなく、クライエントの中の矛盾の指摘)
クライエントの言葉・行動・思考における矛盾点をありのままに提示する。(自分の意見や見解は言わない)。例「…と思われている一方で、…とも思われている。それでどうするべきか迷われているのですね?」等


積極技法(こちらから働きかける)練習

① 「指示・助言・ 情報提供」
1、クライエントに問題解決に必要な指示・助言・情報を受け取る心身の準備があるか傾聴で見極める(例、これから伝える内容と一致する経験を相手から傾聴技法で引き出す、等)

2、明確・特定的・具体的にタイミングよく指示・助言・情報提供をする

3、どう受け取ったかを開かれた質問で訊き、回答を傾聴する(例「これを聴いてどう思われましたか?」等→傾聴)

② 「論理的帰結」
クライエントが決断や行動を起こそうとしているとき、その結果(ポジティブ・ネガティブ両方)を考えることを支援
例「では、おっしゃられるように、もし…したらどんな結果になるでしょう?」等

(「論理的帰結」を使う前に、傾聴技法を使ってクライアントにいくつかの選択肢を考えさせ、それらの選択肢一つ一つに対して「論理的帰結」を行い、各選択肢のメリットとデメリットを比較検討させる)

③ 「解釈」(物事をより良くとらえる)
1、クライエントの情報をなるべく多く集める(感情・態度・行動・状況、等)それらを新しい視点から再構成・再定義する。クライエントがその新しい解釈を受け入れることができそうか、よく観察・傾聴して確かめる。

2、大丈夫そうなら伝える。

例「…という出来事によって、…という変化があなたにもたらされたのかもしれませんね」等(断定せず、あくまで可能性として提示する)

3、伝えた後はクライエントがどう受け取ったか傾聴する。

④「ほめる・認める」
クライエントの良いところや努力、使える資源等を傾聴で引き出して具体的にほめたり認めたりすることで、さらにそれを伸ばしたり、活用を促したりする。

もしもクライエントがネガティブなことばかり話すときは

例外探しの質問(例「いつもそうですか?そうでないときはありませんでしたか?」等)や

コーピングクエスチョン 大変な状況に耐えている相手をほめたり認めたりして「そんな大変な状況でもなんとかやっていけているのは、あなたにどんな強みや使える資源、助けてくれる人や制度等があるからでしょうか?」等と訊いて、良いところを引き出す、

あるいは

スケーリングクエスチョンの活用

例1
「理想の状態を10、最悪を0とすると今いくつですか?」
相手「うーん…2くらいかな…」(ゼロと答える人はあまりいません)
「ゼロではないのですね?では、どういった点が良いのでしょうか?」

例2
「理想の状態を10、最悪を0としたとき、過去に最も良かったときはいくつでしたか?その時はどんなことやどんなものがプラスに働いたのでしょうか?」
相手「あのときは○○が良かったから…」
「○○が良かったのですね。それを今回も活用する方法を考えましょう」

等のテクニックにより、引き出した良いところや強み等を最大限活かして、問題を解決できるように支援する。

※積極技法を使うときの1-2-3の原則
1、相手の話を傾聴し、相手がその積極技法を受け入れる準備ができているか確かめる

2、積極技法を使う

3、使った後、相手がそれをどう受け止めたかを、開かれた質問(例「これについてどう思われますか?」等)で訊き、回答を傾聴する。


練習すると、誰でも簡単に出来るようになりますし、日常や仕事で使うといろいろと役に立ちます(*^_^*)お試しあれm(_ _)m

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