好きな映画の要素

 若尾文子さんのこと。「キノ×コン!」のこと。父親のこと。映画祭のこと。映画館のこと。映写のこと。映画製作のこと。オフィス桐生のこと…… 何を書こうか迷っていたら、いつの間にか4ヶ月以上経ってしまった。
 上記については、書きたいことが山ほどあり、すぐにまとまらない気がするので、今回は、好きな映画の要素についてストレートに書いてみたいと思う。以前ブログやSNSで書いた文章を部分的に引用しながらまとめてみる。

 私が好きな映画には、以下の要素が入っていることが多い。これは、これまで映画を観てきて、好きな映画のタイトルを並べてみたときに、自己分析して見えてきたものだ。

1. 「時間」をうまく使っている
2. 群像劇
3. 会話劇
4. 脱獄もの、刑務所もの

 第1の要素はいろいろなパターンがある。タイムスリップしてみたり、時系列を入れ替えてみたり、時の流れを感じさせたり、限られた時間の中で緊張感や感動を生み出したり。時間を操作し話を盛り上げる手法は面白くなる要素が満載だ。作品としては、各パターンで以下のようなものが挙げられる。
 タイムスリップものでは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ、『サマータイムマシン・ブルース』、『ある日どこかで』、『オーロラの彼方へ』、『バタフライ・エフェクト』、『ファイナル・カット』、『デジャヴ』など。ネタばれになってしまう作品も多いのでこのへんまで。
 時系列入れ替えものでは、『パルプ・フィクション』、『運命じゃない人』『スター・ウォーズ』シリーズ、『ゴッドファーザーPARTII』、『愛を乞うひと』、『羅生門』など。この中でもいろいろなパターンがあり、1本の作品の中で入れ替えたり、シリーズで製作順を入れ替えてみたり。
 時の流れを感じさせる作品は、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』、『ニュー・シネマ・パラダイス』、『カラーパープル』、『レジェンド・オブ・フォール 果てしなき想い』、『紙の花』、『初恋のきた道』、『ゴッドファーザー』シリーズ、『ウォーリー』、『男はつらいよ』シリーズなど。これもいくつかのパターンがあり、1本の作品を観ていくうちに時の流れを感じたり、シリーズを観ていくうちに感じたり、設定で感じたり。
 限られた時間という設定の作品は、『恐怖の報酬』、『生きる』など。他にもいろいろあるはずだ。
 そもそも「時間」というものは常に流れている。映画を作ること自体にも時間がかかる。映画というものの完成形は、時間をかけないと観ることができない。必ず尺が存在する。当然ながら映画の中でも時間が経過するわけで、全ての映画にある要素とも言えてしまうかもしれない。中でも、その「時間」をうまく使っていると強く感じられる作品に惹かれるのだ。

 第2の要素は多くの人物が登場し、それぞれの関係性によりドラマが生まれ、物語が展開されていく。群像劇と言えば、グランドホテル方式、ロバート・アルトマン、ローレンス・カスダン、一連のディザスタームービー、一連のブラット・パックムービー(懐かしい!)、『ラブ・アクチュアリー』、エミリオ・エステベスの『ボビー』、ポール・ハギスの『クラッシュ』、ウェス・アンダーソンなどが思い浮かぶ。タランティーノ、ドラマでは「ツイン・ピークス」、「LOST」などもそうだ。日本では、溝口、小津、黒澤も群像劇的要素がある作品を撮っている。「忠臣蔵」、寅さんもある種の群像劇か。最近の日本作品では『桐島、部活やめるってよ』に代表されるが、『恋の渦』、『3泊4日、5時の鐘』、『退屈な日々にさようならを』、『うつろいの標本箱』、『恋愛依存症の女』、『お嬢ちゃん』など、粒ぞろいだ。
 群像劇の醍醐味のひとつとして、「こことここが実は繋がっていたのか!」、「こことここがここで繋がるのか!」といった小さな興奮状態がある。ある種のサスペンスだ。これを感じた瞬間、「ああ、この映画好きだなー!」とか、「この映画は間違いない!」というモードになる。これが何度か続くと、登場人物が愛おしくなってきて、いつまでもこの世界に浸っていたい、この人たちを観ていたいというところまで達するのである。これには時系列も重要なファクターとなる。「繋がりの美学」とでも言おうか。私は、人と話したり、人と行動をともにしたり、人間観察をしたり、とにかく「人」が好きだ。映画でも「役者」で観ることにこだわるのは、そこから来ているのだと思う。

 第3の要素は群像劇と似た部分もあるかもしれない。洋画ではウディ・アレン、タランティーノ、邦画では小津が思い浮かぶ。映画における会話というものは、進みながら、状況が変わってきたり、人物が魅力的になってきたりと、作品に深みを与えるものだと思う。説明台詞は逆に薄っぺらくしてしまうので、それは映画的会話ではないはずだ。『十二人の怒れる男』、『情婦』、『アラバマ物語』、『ア・フュー・グッドメン』、『妻は告白する』、『白い巨塔』などの法廷ものも会話劇になるだろう。やはり、群像劇と同じく「人」が好きなために、その会話に惹かれるのだろう。

 第4の要素は分かりやすい。要素というよりもジャンルになってしまうかもしれないが。刑務所、収容所などから脱獄するアイデアが面白く、緊張感も高い。作品としては、『第十七捕虜収容所』、『抵抗 死刑囚の手記より』、『穴』、『大脱走』、『暴力脱獄』、『パピヨン』、『アルカトラズからの脱出』、『ショーシャンクの空に』、『ライフ・イズ・ビューティフル』、『グリーンマイル』、『るにん』などが挙げられる。どうしたことか、傑作しかない! ちょっと路線を変えると「女囚さそり」シリーズ、「イルザ」シリーズなどの女囚ものもある。
 製作国も様々で、時代背景に関わる場合が多く説得力もある。刑務所ではなく、密室や島など、限られた場所、空間に閉じ込められて、脱出を試みるという図式はとにかく面白い。ここでも出すが、例えば「LOST」、傑作ドラマだ。脱出を試みなくても、その中だけの話、ワンシチュエーションという状況もアイディア次第で限りなく面白くなる。『彼とわたしの漂流日記』などはその良い一例だ。
 
 これらの要素がなくても好きな映画は存在するが、複数の要素が混在していることも多い。今後も映画鑑賞していく上で、さらに追求していきたい。そして、今後、もし企画段階から自分で映画を作るとしたら、必ずこれらの要素の何かが入ってくるだろう。

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