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「本当にやりたいと願う仕事」と「生きるために稼ぐ仕事」は一致しない時もある。

今日は私のエグゼクティブ・コーチとしての起業体験を紐解きながら、起業するときにどんなことを考えて自分の対象顧客や提供サービスを決めるのかというお話をします。

前回のnote記事↓では私がコーチングをアメリカで学んだお話をしました。

その学びを修了し、帰国してから私が真っ先に考える必要があったのが、コーチングを提供する「対象顧客」をどこにセットするのかということでした。

私は当時、外資系企業に働く日本人の苦悩を癒やしたいと思っていました。もう少し広く捉えると、海外経験者が日本に戻ってくると直面する「グローバル社会での振る舞い方と日本独特の習慣の中での振る舞い方とのギャップ」に苦しんでいる人を癒やしたい、という思いを持っていました。これは自分の実体験がベースになっている思想で、同じようなことで苦しんでいる人に、コーチングという手法を使って手を差し伸べたい、ということを意味しています。

当然、コーチングを提供する「対象顧客」も、外資系に働く帰国子女という「個人向け」のサービス提供というものを掲げる方向で考えるわけですが、それを私の当時のコーチであり師匠のアンソニーに伝えたところ、ほぼ一蹴された、というと言い回しでは甘く、鼻で笑われたという方が的確な表現だったと思います。

アンソニーが実際にどんな言葉を使ったかは覚えていないのですが、やり取りとしてはこんなものでした。

「いいか、よく考えてみなよ。自分はコーチングにいくら投資できたんだっけ?1ヶ月に数万円だよね。そして同じような対象者にコーチングしようとしているわけだから、相場は大体同じになるよね。だとすると何人にコーチングをすれば生計が立てられると思う?例えば15人程度の顧客が常時いれば生活は賄えるかもしれない。それだけの顧客を獲得するための営業とはどんなものだろうか。」

当時の私は「対象顧客」に強いこだわりを持っていたので、そんな師匠の言葉など殆ど耳に入ってこない状態で、「あ、その計算根拠いただき!だったら、営業は得意だから毎月15件取ってくればいいってことね」なんてもんでしたが、そこで師匠に言われた言葉で我に返ります。

「あのね、いま話しているのは最低限の収益の話ね。生きていくのに必要な分を賄う話。それに、毎月毎月、その目標を達成しないと生きていけないってことだよ。独立開業するときに、サラリーマンのときより生活水準を上げたいとか思わなかった?少なくとも、自分だったら事業主になったらいい生活したいし、好きな車にも乗りたいと思うな。それにね、事業主の稼ぎというのは給料ではなくて、自分に対する投資を継続していくための資金だったり、急な出張や税金の支払いなど突発的なことに対応できる資金のプールとか、そんなことも考えなくてはいけない。そうすると、おそらく今の想定の倍は稼がなきゃいけないはず。」

そんな指摘もあり、私は収入の中心を企業向けのサービス提供とすることにし、個人向けのサービス提供は趣味程度に細々と続けていくことを選ぶことにしました。せっかく独立開業するのに、最初っから妥協したように思えて、かなり理不尽でしたが、生計を立てていかなくてはいけないことは明らかだったので、選択肢は限られていたように思います。

この選択のお陰で、私は師匠から企業研修の仕事を振ってもらえるようになりました。企業研修の仕事は準備も大変で、人前で話すというあまり得意ではない分野での仕事でしたので気のりはしませんでしたが、終日研修を3〜5日こなせばその月の経費をまかない余りある収入になるので、収入を安定させるための手段として最高でした。この経験を積むことで、企業向けのコーチングの仕事も入り始め、企業向けの研修講師&コーチという肩書で名前が売れていくようになります。つまり、結果的に良い選択だったということになります。

こういったサービス設計を起業時にしっかりしておくことは大事ですし、何を選ぶかによって未来は大きく変わってくるのです。


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