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紫苑

今年の夏はなかなかハードだ。
学芸員実習、就職予定先等でのアルバイト、舞台監督の本番、室内楽の本番
毎日てんやわんやでスケジュールもぎっしりな中で修士論文の調査&執筆を進めなければならないと思うと本当に気が重い。

大学内の美術館での実習を終えた先週のこと。
一息ついてネットで調べ物をしていたら、あるニュースが目に留まった。

https://www.hmv.co.jp/news/article/220812124/

世界的ピアニスト、クリスチャン・ツィメルマンが今春に母国ポーランドの作曲家シマノフスキの作品をレコーディングして来月発売される。簡単に説明するとこのような内容のニュースであるが、筆者が最も驚いたのがそのレコーディング場所である。

広島県福山市のふくやま芸術文化ホール、リーデンローズだ。

久々に聞いた懐かしい響き。中学・高校の吹奏楽部の定期演奏会や市の大会で何度も舞台に立ったホールだ。中間考査中の土曜日にシエナのツアーに行ったこともあった。10代の思い出の半分はこのホールと共にある、というのは過言だが笑。

母校の定演はOB会主催ゆえか「OB合同演奏会(通称OB演)」という名称で開催されている。現役学生のステージ・OBのステージ・合同ステージの計3部構成だが、帰ってくる先輩方が少ないパートの現役生は貴重なショートブレイクである第2部にも駆り出された。筆者も中3~高2の計3回、このトライアスロンを経験した。演奏する曲も増え、第1部と第2部間の休憩で早着替えする必要がある。とにかく疲れたが楽しかったので良しとしよう。

現役生の時はこの演奏会(から翌月頭の文化祭まで)が1年のハイライトだったので、部員一同が死力を尽くしていた。当然、自分もOBになっても毎年ここに帰ってくるだろうと思っていたが、結局帰ったのは大学1年と2年の時だけ。他の演奏会の出演を優先したい、院試のためになるべくスケジュールを空けたい、当たり障りのない言い訳はある一方で当時の自分の無力感もあった。

折角上京して藝大まで行ったのに自分は何もこの演奏会に還元できないんじゃないか…

大学受験のモチベーションに「OBとしてOB演に良い影響を与える」というのがあったために、この現実はかなり自分の精神に応えた。非常に身勝手な理由だが、こうして19歳の夏を最後に一旦福山から離れることになった。

この後の人生で何が起こったか。

オペラの合唱に乗った。
お芝居に興味を持ってレッスンにも通ってみた。
知らない土地に1人旅してみた。(しかもアイドルのライブのために!)
全く違う本番のGPと本番を行ったり来たりした。(この話はいづれ)
院試を受けて、卒論を書いた。(これ大事)

学生オケの運営に携わるようになったのをきっかけに、色んな演奏会でステージマネージャーの下に付いたり、自分もやってみて、裏方について少しずつ経験を得られた。
オペラの制作や演出助手を経て、自分で演奏会の企画もしてみた。

19歳の夏の無力感に報いたいという気持ちがあったかどうかはさておき、目の前のことに必死に取り組んでいたら、点と点が線でつながり、視界が少しだけ開けて、あっという間に5年が過ぎた。その間にコロナ禍が訪れ、一昨年と昨年は遠方のOB・OGはリモート出演に止まり、リーデンローズに戻ることは叶わなかった。

今年は13日の土曜日に無事行われた、とのこと。
3年ぶりに全国からOB・OGが集い、本番が近づくにつれて後輩たちのSNSが楽しそうな練習風景であふれかえった。

懐かしい風景がフラッシュバックするが、光陰矢の如しとはこのことを言うのだろうか。ちょっと上の先輩の中には結婚や出産を経た人もいるし、散々迷惑をかけてしまった後輩たちが今や居酒屋でしこたまお酒を飲んでるのを見ると、写真でもビックリする。(「俺はいつの間にかマルチバースに送り込まれたのか?」というつまらないジョークは置いといて)
社交辞令だとしても後輩から「先輩帰らないんですか?」と連絡が来たら会いたい気持ちが増してしまうもんだ。

話はツィメルマンに戻す。リーデンローズを選んだ理由として、彼の友人の豊田泰久さんが音響設計を手掛けたことが挙げられる。(上記URL参照)
この豊田さんも母校の吹奏楽部の先輩にあたる。
※とある機会にご本人にお会いした際にご同席されていた奥様も吹奏の先輩であることを知った。仰天。
という訳でOB演の前日というタイミングでツィメルマンのニュースを知ったことは自分にとって運命的であった。(意外とこういうのを信じてしまう)

今年のお盆は残念ながら帰れなさそうだ。『カムカムエヴリバディ』を半年間見ていた視聴者として終戦記念日に岡山に帰ることは大きな意味を持つが、それはまた今度に持ち越しになりそうだ。来年帰られるかどうかはまだ分からないが、その際はOB演にも顔を出せたら幸いです。今なら何かしてやろうとか肩肘張らなくても帰れる気がする。「こんな人も昔この部活にいたんだな」ぐらいに思ってもらえたら、現役生にとっても何かプラスに働くのかな?

その前にやるべきことを1つずつ。
楽器の練習もコツコツ。(現役生になめられないためにも笑)
ツィメルマンの新譜を心待ちにしながら、
そして修論に頭を悩ませながら、
来週の公演に向けて最善を尽くします!
はい、宣伝。
※ご興味のある方は是非ご連絡ください。

平日18時半開演ですが、是非多くの方にご覧になって頂きたいです!
マエストロから急遽舞台監督に指名されました…
大変だ。。。頑張ります。

大学院に入ってからご縁を感じる局面が増えました。
このご縁を忘れることなく日々精進して参る所存です。

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