チリ政府が中間層支援のための行政系ウェブサービスを9ヶ月でローンチした話
カバー写真出典:Apolitical
Apoliticalという世界の行政の取り組みをレポートするメディアから。チリ政府が中間層のセーフティネット構築のために作った行政系ウェブサービスの解説記事なんですが、リサーチから施策立案、実行までの流れが鮮やかでした。
リサーチを通したデザイン
まずフィールドリサーチの結果以下の問題があることがわかり
Information about benefits is unclear and not standardised:
市民が既存の行政サービスを認知してない。
Disjointed management between government silos:
縦割り行政のせいで必要な情報にアクセスするコストが高い
Supports and services are not adequate or do not exist:
そもそもサポートが十分じゃない
これを解決すべく以下の施策を行い
New benefits and services:
サービスの拡充。高額治療への医療費控除や公的な健康保険の保障対象拡大など。
Network management:
既存の官僚的なシステムの複雑さ(および遅さ)を改善するための情報システム構築
Improving information and user guidance:
ユーザー(ここでは市民)参加型でオンライン資料を改善。あとネットにアクセスできない人のために対面の経路も確保
最終的にウェブサービス「Class Media Protegida」(訳すなら"被保護階級のためのメディア"?)をローンチ。市民が自分のデジタルIDを入力すると、その人が受けられる公的サービスが表示されるというシンプルで効果的なもの。なおリサーチからプロトタイピング、ローンチまで9ヶ月とのこと。
モダンなサイトです
官僚主義のコストに挑む
フィールドの声を聞いて、役に立つツールを構想し実現する。同時に制度の方もより良く作り変えていく。地に足ついたプロジェクトって、いいですよね(スペイン語わからないので実際どれくらい効果発揮してるのかわからないですが...知ってる方いたら教えてください)。
あとこの記事はチリのLaboratorio de Gobierno("政府研究所"?)事務局長のロマン・ヨシフなる人物によって書かれてるんですが、冒頭のセクションがいきなり「The cost of bureaucracy(官僚主義のコスト)」から始まっています。このプロジェクトが官僚主義的な行政システムの「重さ」にウェブサービス開発のノウハウでもって取り組むものでもある、というのはいろいろ示唆的だなと思いました。
特にこのサイト名で調べると出てくるツイート、「とにかくこのサイトを使え。そしたらどういう公的サービスが受けられるかわかる。」というダイレクトな内容になってるのが複数あって、何はともあれよくできたアウトプットだなと思った次第です。
参考
The Smart Enough Cityは書評もあります。あわせてどうぞ。
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