総合型地域スポーツクラブならではの広告戦略
総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしています、上杉健太です。今日は、これまで私がクラブマネジメントをしてきて気付いた『総合型地域スポーツクラブのならではの広告戦略』についてお話してみたいと思います。私がクラブの会員募集等の広告を通じて得た気付きを共有させていただきますが、必ずしもすべてのクラブに当てはまるものではないと思いますので、もし役立ちそうな内容があったらうまく転用していただけたらと思います。
最初に結論を言うと、総合型地域スポーツクラブは、年に1回捨てられない紙媒体をなるべく多くの人に配れるといいと思っています。
それはなぜか。順にお話していきます。
まず前提として、ホームページにはクラブの全ての情報が載っていて、入会を検討している人が検索すれば訪問できるようになっていることとします。スポーツクラブの入会時期の多くは4月で、その検討時期は概ね1~3月という感じだと思うのですが、それ以外にも個人個人では「習い事を変えようかな」とか、入会検討タイミングはやってきます。でもそこはコントロールも予測もできないところで、さらに言えばそこにかけるコストは正直言って勿体ないので、そういったかたに入会してもらうには、1年中通用するホームページを実装しておくことが必要です。
というわけでまずは、紙媒体が良い理由についてご説明します。紙で配る理由の一つは、WEB媒体はホームページがあるから、です(笑) 当然、WEBも紙も、両方やるという、ただそれだけのことです。
そしてもう一つは、家庭にクラブの広告を滞在させるということです。順番にご説明します。
まず、紙媒体にも以下のように色々なものがあります。
・折り込みチラシ
・新聞
・情報誌
・DM
※この内、DM(ダイレクトメール)はどんな場合も効果的だと思うので、ここでは割愛します。リストや予算がクリアできてDMがやれるならシンプルにやった方がいいと思うので。学校や幼稚園・保育園で配るチラシも、対象を指定できるという意味でDMと同じだと思いますが、やはり超効果的です。
まず、新聞と情報誌は、うちではあまり効果がありませんでした。これはおそらく、すぐに捨てられてしまうことが一番の原因だと思います。また、こういった媒体の広告欄は、高額な広告料を出さない限り、他の似たような広告と一緒になってしまうので、並べて見られてしまい、メッセージが伝わりにくい。要するに、”同じようなもの”として見られてしまうのではないかなと思います。気づかれないリスクも高いですね。
同じことが折り込みチラシにも言えます。曜日にもよりますが、新聞にはいつも大量のチラシが折り込まれますよね。そうすると、いくら頑張って作ったチラシも、他のチラシに埋もれてしまってまとめて捨てられてしまいます。家庭からすると、そういうチラシは明日も明後日も明々後日も届くので、どんどん捨てていく必要があるからですね。
じゃあ紙媒体はダメなのではないか、ということになりますよね。ここで大切なのは、広告の生存期間をどう設定しておくかということかなと思います。例えばスーパーの折り込みチラシの場合、下手したらその日だけ見てもらって来店さえ決めてくれれば、もうすぐに捨ててくれてもいいと思って配っていることもあると思います。クーポンさえ切り取ったらあとは捨てていいチラシもあるかもしれません。生存期間は数時間でOKというつくりですよね。一方、総合型地域スポーツクラブの場合は、数か月以上継続を前提に入会をするものなので、今日チラシを見てすぐに入会に行くということはほとんどありません。現在の習い事などとの比較検討が必要ですし、生活リズムの変更も検討しなければなりません。チラシを見ても、すぐに動けないんです。よって総合型地域スポーツクラブが出すチラシは、『瞬発力』で勝負してはいけないということです。
となると総合型地域スポーツクラブが出す紙媒体の広告は、持久戦に耐えられるものとして設計する必要があります。要するに、家に取っておいてもらうということですね。ポイントは以下のようなものかなと思っています。
・単独である
・束がある
・情報量が膨大
・一覧性が高い
順番にご説明します。
まず、【単独である】ですが、これは要するに新聞や雑誌などの媒体ではなく、チラシやパンフレットなど、自分のところの情報しか載っていない媒体だということです。いらない情報がたくさん載っているものは、なかなか取っておいてもらえないので、どうしても単独でやらないと持久戦には持ち込めないかなと思っています。切り抜いて取っておいてくれる人なんて奇跡なので、期待してはいけませんよね(笑)
次に、【束がある】ですが、これは安っぽいかどうかと言ってもいいかもしれません。感覚的に、ペラペラの紙だとすぐにボロボロにもなりますし、捨てちゃってもいいか、ということになりますが、ある程度しっかりした紙で、お金がかかってるように見えるものって、捨てるのにちょっと抵抗感があったりすると思います。もちろん、それでも内容が全くいらないものであれば捨てられるのだと思いますが、新聞折り込みなどの場合、束で他と差別化できたりするので、分厚さは大切だと思っています。
3番目の【情報量が膨大】は、場合によっては広告のセオリーから外れるお話かもしれませんが、私は持久戦に持ち込むにはこれが一番重要だと思っています。例えばお子さまがいらっしゃる家庭に、地域の習い事が完璧に網羅された冊子が届いたら、捨てなくないですか?今やっていることをやめる気がなければ、すぐにそこに掲載されている習い事への入会を検討することはないにしても、「いつか使えそう」と思ってとっておきません?それがちょっと高そうな紙で作られていて保管できそうだったり、おしゃれはデザインだったら、なおさら保存しておこうとなると思うんですね。総合型地域スポーツクラブは、多種目で多志向で多世代のクラブですから、基本的にはメニューは他の団体より豊富なはずです。訴求を絞って瞬発力で勝負する広告より、むしろ「うわ。たくさん載ってる。すぐに読めない」と思ってもらって、「いつか読もう」と取っておいてもらった方がいいんです。やがて習い事を変えようかなと思ったタイミングで読んでくれますから。なので総合型地域スポーツクラブの出す紙媒体の広告は、情報をなるべく絞らず、とにかく盛沢山で、すぐに読めないものを作った方がいいと思っています。
最後の【一覧性が高い】も重要な要素です。今は多くの人がスマートホンで情報を集めていると思います。でもネットの情報って、基本的には能動的なアクションでしかたどり着けないんですね。自分でワードを入れて検索したり、URLを入力したり、リンクをタップしたり。でも、そういう人を待つだけじゃダメだから紙媒体を”強引に”届けるわけです。で、私なんかが完全にそういうタイプなのですが、ちょっと興味をひかれる紙の広告があっても、「また購入のタイミングになったらネットで見よう」となって、紙の広告は捨てちゃうんですよね。つまり、紙媒体の広告は、自分のクラブのホームページの機能と差別化しておかなければなりません。「ホームページがあるんなら、後でホームページを見ればいいや」と思われて、その紙の広告を捨てられたら、結局忘れられてしまいますから。この紙の広告自体が「使えそう」とか「見たい」と思ってもらわないといけないんですね。総合型地域スポーツクラブの広告の場合は、膨大な情報量の一覧性を高めることでホームページとの差別化を図るといいと思っています。スマホはすぐにみられる便利さがありますが、下へ下へスクロールして順番にしか見られないという不便さがあります。総合型地域スポーツクラブのメニューは膨大ですから、それでは正直に言うと全てのメニューを見るのはかなりしんどいんです。それに対して紙の広告の一覧性を高めておけば、比較検討もできますし、何よりもパッと見て量が分かるという利点も出ますから、変に広告にストーリーやメッセージを仕込むよりも、ババババババーっと情報を並べちゃう方がいいのかなと思っています。ただし、デザインは大切です。色分けして種目や対象が視覚的に分かるようになっているとか、アイコンで人気のクラスが分かるようになっているとか。そういう便利ポイントも仕込んで置いて、「とっておこう」と思われないといけません。
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総合型地域スポーツクラブ研究所
総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…
総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5