“顔”をつくる必要性

　総合型地域スポーツクラブ　マネジャーの上杉健太(@kenta_u2)です。現職の一般社団法人たかぎスポーツクラブの最終出勤日まで、あと1ヶ月ほどとなりました。それはつまり、私の次のチャレンジの始まりも近いことを意味しています。ドキドキとワクワクで一杯です。・・・と言いたいのですが、今の私の状況はというと、たかぎスポーツクラブの次の体制作りと予算作りで手一杯です。退職すると言っても、私はたかぎスポーツクラブを見放すつもりはありません。立ち上げこそしていませんが、ここまでクラブを作り上げてきたという自負があり、猛烈な責任を感じているので、必ず何とかします。「上杉がいなくなったらヤバイ」と言っている人たちに1年後、「ほらみろ。大丈夫じゃないか」と言ってやります。（上杉がいなくなったらヤバイと言われて悪い気はもちろんしない笑）

　さて、今日は『“顔”をつくる必要性』についてお話したいと思います。実は昨日、地元紙『南信州新聞』さんの取材を受けていて、その記者のかたが私の退職のことを大変驚き、残念がってくれて、そして「次の“顔”は誰がなるの？」と質問してくれました。正直私は、「はい？顔？」となったのですが、「やっぱり組織は顔が大事だよ。これまでは上杉くんが顔だったでしょ」と仰っていて、私が顔になっていたかどうかは置いておいて、考えてみると確かに“顔”は大事だなと思ったので共有させていただきます。

”顔”とは

　組織における”顔”とは、その組織を代表する人という意味でいいと思います。ただし組織図の話ではなくて、その組織の名前を聞いてパッと思い浮かぶ人のことです。イメージ（各自の頭の中）の問題ですね。つまりこれは、実際の代表者と、”組織の顔”は別の可能性もあるということです。例えば『ジャニーズ』と聞いて、『ARASHI』を思い浮かべる人もいれば、『SixTONES』を思い浮かべる人もいれば、『ジャニー喜多川』を思い浮かべる人もいると思います。人によってその組織の顔は違います。
　先ほどの『南信州新聞』の記者さんは、私をたかぎスポーツクラブの顔と言ってくださっていましたが、それはあくまでもそのかたにとってのイメージということですね。会長はずっと別にいますし、事務方のトップもずっと別にいます。私は立場上で言えば、クラブの顔になったことなど一度もありません。ただ、一つだけ私がクラブの顔であったことを客観的に実証できることがあるとすれば、『名前』と『顔』を誰よりも晒しているということです。
　私は地域おこし協力隊として喬木村に移住してきた”よそ者”でした。村の人からしたら、どこの誰だか分からない人間でした。そんな信用も何もない人間が総合型地域スポーツクラブのマネジメントなんてできるわけがありませんから、私は意図的に”顔を売る”をしてきました。とにかく私のことを知ってもらって、信用してもらうという作業です。具体的に言えば、まず全てのクラブの活動（当時は『教室』と言っていました）に出ること。これを1年間やりました。当時は太極拳の型を完璧に覚えていました(笑)　そして、地域のイベントに出たり、村のテレビに出たり、『いいだFM』というローカルラジオに出たり、新聞に出たり、とにかく露出しまくりました。さらに、一番顔を売れるのはコーチをすることだと思っていたので、指導もたくさんしてきました。最初は小学生と大人向けのテニスのクラスを２つ開講し、それ以降、テニスのクラスはどんどん増やし、さらに学習、コーディネーショントレーニング、スポーツ広場（不特定スポーツの場）と指導する種目も増やしていきました。2020年11月現在、指導しているクラスは、テニス9クラス、コーディネーショントレーニング2クラス、スポーツ広場1クラス、学習1クラスとなっています。これは2名の職員インストクラクターにも引けをとらない数なので、指導現場での露出だけでも”顔”と認識されるには十分あるのかなと思います。さらに、私は今年度を除けば、クラブへのメール発信などで『クラブマネジャーの上杉です』と名乗ってきました。事務的な連絡の時も、少しだけ自分のプライベートな情報を入れたり、クラブについての考えなどを入れ込んだりして、キャラクターもセットで発信をしてきました。これも露出です。
　”顔”というのは、こうやってなっていくのだと思います。リアルの顔を多くの人に見せることと、名前を見せること、そしてそこにキャラクターやメッセージを乗せることによって、組織の顔として認識されていくのだと思います。
　もうバレたと思いますが、私はクラブの”顔”に意図的になろうとしていました。ずっとクラブでやっていくつもりでいましたから。でも事情が変わって退職することを決めた1年ほど前から、私は自分の名前をクラブ内で露出させることを極力避けてきました。”顔”が突然いなくなるわけにはいかないので、”顔”をちゃんと別に作らなければいけないと思ったからですね。
　まぁとにかく、組織における”顔”というのは、その組織の名前を聞いた時に思い浮かべる人のことであって、多くの場合それは、最も多く顔や名前を露出している人がなっていくものだと思います。

どうして”顔”が必要か

　私も『南信州新聞』の記者さんの「顔が必要」という意見には賛成です。そう思います。顔がない発信には、メッセージを乗っけられないからです。モノを言うのは口であり、顔です。

「もっと会員が必要なので、皆さんお友達を誘ってください」
「お金が足りなくなるので、会費を上げさせてください」
こういったメッセージを伝えたい時に、「事務局から連絡です」では絶対に伝わらない。事務局は『機能』であり、”顔”ではないからです。「マネジャーの○○です」と”顔”を見せて言うから伝わるんです。つまり”顔”は、メッセンジャーというとてつもなく重要な役割を担っているということですね。メッセージを届ける人です。
　組織を生き生きとしたものにするためには、発信は欠かせません。何も言わない組織は、「死んでいる」と誤解されかねません。メッセージは発信し続けなければいけないんです。だから”顔”は必要なんですね。メッセージを発信し続ける”顔”が。

”顔”の作り方

　”顔”は、実務をしている必要な実はないんです。クラブマネジメントは実際にはしていないけど、人柄が良く、プレゼンがそこそこできれば、メッセンジャーとしての素質は十分。後は誰かがメッセージを用意して何度も何度も発信すれば、たぶんその人は組織の”顔”になれます。ヒーローというものが世間が作り上げていくもののように、”顔”も作り上げることができます。私が私をセルフプロモーションして”顔”に仕立て上げたように。
　まずは、”顔”にする人を決めることですよね。正直に言うと、誰でもいいというわけではないと思います。立場は大切です。総合型地域スポーツクラブで言うなら、理事か運営委員かクラブマネジャーかインストラクターのどれかだと思います。立場がないと、「誰が言うとんねん」と突っ込まれてしまうからです。（突込みになると関西弁になってしまう関東人）
　また、性格とか性質みたいなものもある程度必要です。例えば、暗い人は絶対にダメだと思いますし、声が小さい人もダメだと思います。メッセンジャーですから、ある程度は必要かと。発信の仕方をメールなどの文章に限定することでカバーできるかもしれませんが、文章だけで顔を作り上げるのは至難の業だと思います。なので、『明るく喋れる』というのはある程度必要。あとはみんなの前に頻繁に顔を出せる行動力さえあれば、後は必要ないと思います。発信するメッセージを自分で作れない場合には、支える裏方を用意したらOKです。実際にマネジメントの実務を行っている人がいいでしょう。
　まとめると、組織の”顔”の作り方は、『特定の誰かの”顔”（実際の顔や名前）を露出してメッセージを発信し続ける』。これだけだと思います。ただし、”顔”には責任が乗っかってきます。イメージ上の問題だとはしても、多くの人がその組織の”代表”だと思うわけですから、何か起きた時の責任を取らされる場合があります。クレームをもらうこともあります。矢面に立つ人でもあるわけですから。なのである程度の立場も必要ということなんです。

　これからはストーリー（物語）を売る時代だと言われています。何を買うかよりも、誰から買うかという時代だと言われています。私はあり難いことに、私の挑戦をたくさんの人に応援してもらってきました。もしかしたら、私がクラブの”顔”として機能していたから入会した人やコーチになってくれた人もいるのかもしれません。挑戦する人を面白がってくれたり、応援してくれる人はいるんです。ありがとうございます！！
　時代がそう進むなら、”顔”の重要性はこれからますます大きくなっていくことでしょう。『そのクラブは何をしているか』よりも、『誰が、なぜそれをやっているか』というストーリーを重視して選ぶようになる可能性があるということです。”顔”、重要です！