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雷というリスク

 どうも、ふじみスポーツクラブの上杉健太(@kenta_u2)です。埼玉県富士見市で、誰もがいつまでも、自分に合ったスポーツを続けられる地域社会の実現を目指して、総合型地域スポーツクラブの運営をしています。

 とうとう8/2(月)から埼玉県にも緊急事態宣言が出されることになりました・・・。ここ富士見市は、現在もまん延防止等重点措置の指定地域になっていて、公共施設の利用制限などについてはほぼ緊急事態宣言下と同じだったわけですが、もしそれがさらに厳しくなるのだとしたら、もう屋内施設に関しては既に利用予約をしている人も完全に使えなくなる可能性が高いです。
 ふじみスポーツクラブの場合、さらに影響を受けるのはコーディネーショントレーニングですね。でもこれは今でも月に1回、会場が休館日の際は外の公園でやっているので、その方法で継続は可能。ちょうど日陰も多い公園で人は少ないので大丈夫そうです。
 ただ、ふじみ野ふぁいぶるクラブさんから請け負っているテニスと、8月からスタート予定だった体操教室(コーディネーショントレーニング)についてはどうなるか・・・・・・・・・。このあたりもクラブの収入にダイレクトに影響するところなので、やっぱり緊急事態宣言が出るのは痛いですね・・・。

 とはいえ、ここはとりあえずは富士見市の対応を待つしかないという段階なので、いったん置いておきます。すぐにこちらも対応できるだけの心構えだけはしておいて。

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 今日は、『雷というリスク』をテーマにお話したいと思います。というのも昨日はふぁいぶるクラブさんでのテニス指導だったのですが、関東は非常に不安定な天候で、朝からずっと雷が鳴っているような状況だったんですね。でも、テニスの時間(夕方)には雷は止んできて、「何とかできそうだな」と思ってコートに行くと、開始5分前くらいからまた雷が鳴り出して、結局中止にしたんです。

 雷による中止って、「これくらいならできたんじゃないか」と思う人がどうしてもいて、それによって運営側は中止判断を躊躇してしまうことが結構あるんですね。でも雷は本当に怖いので、今日は私の学び直しも含めて、雷についてお話しておきます。雷の事故の事例を聞くと、雷の中やるのはやめておいた方がいいなと思えますから。本当に。

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落雷事故の事例

 スポーツ活動(クラブや部活、スポーツ大会など)の主催者がゾッとする裁判の判決事例がありますので、それを紹介します。これはフェニックス法律事務所さんのサイトに掲載されているものを、まとめ直したものです。

【どんな裁判?】
大阪府高槻市で開催されたサッカーフェスティバルの試合中に落雷を受けて重度の後遺障害が​残った競技者(事故当時は高校生)​が、大会主催者であった高校や高槻市の体育協会などを訴えた。

【判決は?】
主催者(高校と体育協会)は3億円以上の賠償責任を負うことになった

【主催者のその後は?】
破産した

【落雷事故の経緯は?】
豪雨→雷注意報発令→雨が止む。上空の大部分は明るくなるが、一部で暗雲が立ちこめ、雷鳴も聞こえた。ただし​雷鳴は大きな音ではなく、遠くの空で発生したと思われる程度のものであった。その中で試合が開始した。→試合中に競技者に落雷。

 このように、人に落雷があった場合、かなり高い確率で重度の障害が残ったり、死亡に至ります。確かに雷が人に落ちる確率は低いようにも思えます。でも、毎年何人かは日本国内で落雷にあっているし、それほど珍しいことでもないんです。さらに、いくら確率が低くても、それが起きた場合の被害がめちゃくちゃ大きいということが落雷事故の特徴です。

 特に、この事例のように、「これだけ離れていれば大丈夫だろう」「遠くで鳴っているだけだ」と思ってやっていたら急に落雷があったという事例は他にもたくさんあるんです。音や光が見えたら油断してはならない。それが雷なんです。

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 文部科学省のホームページにも落雷事故の事例がいくつか載っているので、こちらはそのまま引用して紹介します。

○被災生徒:高等学校2年生男子
死亡障害種:電撃死
〈体育的部活動:野球〉
 練習試合を実施していた。午後の開始早々に雨が降り,約20分後,雨も上がり雲も切れてきて青空も見えてきたので,公式審判員と両校の監督とで,試合を続投することになった。マウンドに本生徒が立ち,ボールを投げ,キャッチャーから返球されたその時,突然雷が本生徒の頭に落ち倒れた。救急車の手配,心臓マッサージ,AED等の救急処置を続け,その後ドクターヘリで病院に搬送され,措置を受けたが同日死亡した。
※「学校事故事例検索データベース」(独立行政法人日本スポーツ振興センター)より

○被災生徒:高等学校2年生男子
死亡障害種:下肢切断・機能障害
〈学校行事:運動会・体育祭〉
 体育祭の午後からの応援合戦中,本生徒がスタンドで応援していた際,近くで落雷があった瞬間,足から下半身にしびれが走った。
※「学校事故事例検索データベース」(独立行政法人日本スポーツ振興センター)より

○被災児童:小学校4年生男子
死亡障害種:電撃死
〈登下校中:下校中(徒歩)〉
 雨が降り,遠雷の音が聞こえていたが,本児童が下校を始めた午後2時頃は雨も降っておらず雷の音も聞こえていなかった。その後,また雷の音が聞こえ始めた。本児童は1人で下校中,雷が鳴り出したので,とっさに雷を避けようと農道に入り,持っていた金属製の水筒に落雷し,倒れたものと思われる。後ろから下校していた他の児童が助けを求め,救急車で病院へ搬送されたが死亡した。
※「学校の管理下の死亡・障害事例と事故防止の留意点〈平成16年版〉」に掲載

 雷がいかに怖く、油断してはならないものかよく分かります。もし自分たちの活動が雷の被害にあったらと考えてみてください。突然目の前が真っ白に光り、大きな音が響いたと思ったら、次の瞬間には目の前の仲間が、倒れて息をしていない。ほんのちょっとした「大丈夫だろう」が、そういう悲劇を生んでしまう可能性があるんです。

 参加者、特に子どもは遠くで雷が鳴っているくらいでは「やりたい!やりたい!」と言うかもしれません。でも、だからこそ大人は雷の危険性を説明し、毅然とした態度で中止または中断の判断を下し、安全確保に動かなければならないんです。

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雷の回避方法

 では落雷の危険性が高まっている時はどのようにしてそれを回避したらいいでしょうか。このあたりはちょうど私が住んでいる埼玉県のスポーツ協会さんが指針を出されているので、それを参考にまとめたいと思います。

<雷の予測>

 そもそも大事なのは、落雷の危険性が高まっていることに気が付くということです。その為には、以下の4つの状況に注意しておく必要があります。

(1)入道雲が発達したときや、頭上に厚い雲が広がったとき
(2)AM ラジオの雑音が頻繁になったとき(ただし、最近のラジオは雑音が入りにくい設計となっています)
(3)天気予報、気象情報に雷注意報が出ているとき
(4)携帯型雷警報器(ストライクアラート:12、000 円程度)が雷の電磁波を
検知しているとき(検知範囲は半径 60km の円)

 個人的には、ラジオと携帯型雷警報器は現実的なツールではないのかなと思います。大事なのは、まずは天気予報を事前にチェックすること。雷注意報などが出ている場合はもちろん警戒しておかなければならないし、例え雨マークがなくても、「大気が不安定」などのワードが確認できれば、これも警戒するサインです。
 そして現場での空のチェックです。雲の形や量、音、光。天気予報の段階で少しでも警戒要素がある時は、これらの空模様を常に気にしておくことが大事です。

どんなに遠くても、かすかにでもゴロッ(雷鳴)またはピカッ(雷光)を認識したら、すぐにでもグラウンド(屋外プールを含む)に落雷する危険があると考えて対処しなければなりません。

 とにかくこれです。雷鳴・雷光を確認したらすぐに避難行動に移りましょう。

<避難行動>

 まずは安全な場所へ移動することです。安全な場所は以下を参考にしてください。

a.建物等
コンクリート建造物や自動車等の中に避難します。木造建築物は比較的安
全空間ですが、電線などが通っているので壁から 1m 以上離れて部屋の中央
にしゃがんでいるのが良いでしょう。

b.屋外の高さ 4~30m の物体の保護範囲
高さ 4~30m の物体(樹木や電柱等)の近くで、45 度以上(つまり高さ15m なら半径 15m)に見上げる場所も比較的安全です。ただし、物体の傍にいると側撃を受けるので、必ず4m以上離れて姿勢を低くしてください(木の幹に近すぎると非常に危険です。コンクリート電柱の場合は 2m)。

c.屋外の高さ 30m 以上の非常に高い物体の保護範囲

高さ 30m 以上の物体(送電線の鉄塔や大型クレーン等)の場合は、その保護範囲は30m 以上には拡大しないので、物体から4m(送電鉄塔は 2m)以上 30m 以内の位置で姿勢を低くします。

 安全な場所が確保できない場合は、とにかく身を低くしておきましょう。
 屋根があれば安全というわけではなく、例えばスポーツイベントなどで設営したテントなどはより危険な場合があるので、テントの中に避難するのは間違った方法のようです。

<スポーツの再開>

 雷が去ったと確認できれば、スポーツは再開できます。実はここも埼玉県スポーツ協会さんは基準を示してくれています。

(1)最後の雷鳴から 30 分が経過すれば、雷雲は去ったと判断できますので、スポーツを再開してもかまいません。20 分でも概ね OK ですが、確実性を重
視するならば 30 分を基準とします。

(2)しかし、最近の地球温暖化、ヒートアイランド現象等による不安定な大気
によるものと考えられる雷雨では、次から次へと雷雲が発生して飛来しま
すので、必ずしも 30 分間の中断で再開にこぎつけられないケースも多く
なっています。

(3)その場合は、ラジオや電話などで雷注意報の解除を確認してからスポーツ
を再開してください。

 まずは20~30分間、雷が見える範囲・聞こえる範囲で確認できないことを確認しましょう。それから、それ以外の要素で危険性がないことを確認したら再開しましょう。

 ただ、例えば1時間とか2時間の活動で30分の中断はかなり大きいですから、そういった場合には中断よりもいっしょ中止にしてしまった方がいいとも考えられますね。毎週行っている定期活動なら尚更かもしれません。

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落雷にあった場合の応急処置

 最後に、それでも落雷にあってしまった場合の応急処置についても紹介しておきます。

 落雷によって死亡に至る場合、大量の電流が一度に流れることにより、そのショックで呼吸や心臓が停止することが原因だそうです。なので、すぐに心肺蘇生法(人工呼吸+心臓マッサージ;胸部圧迫)を行うことで助かる可能性がかなり高まります。

 心肺蘇生法といえばAEDが思い浮かびますが、実は落雷による心停止にAEDが有効かどうかは分かっていないそうです。それでも、胸部圧迫などを行っても回復しない場合は迷わず使いましょう。AEDはスポーツ施設なら必ずどこかに設置されているはずです。ない場合は管理者に必ず確認しておきましょう。落雷に限らず、AEDは命を救う超重要アイテムです。

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 ということで今回は、『雷というリスク』というテーマでお話しました。リスクはその発生確率と被害の大きさで測られるものだと思いますが、とにかく雷はその被害の大きさが尋常じゃない。死ぬ。重度の障害が残る。スポーツ大好きな私が敢えて言います。”たかがスポーツ”でそのリスクをとるのはやめておいた方がいい。安全をとりましょう。雷のリスクを知らない人はきっとこう言います。「これくらい大丈夫だろう」。はたまた、雷による中断や中止の後にこう言います。「できたじゃないか」。これらの発言は”無責任の立場”から発せられるものなので、主催者は耳を傾けるべきではありません。参加者の安全を守り、そして主催者自身を守るために、正しい判断と毅然とした態度をとりましょう!誰かの何かの参考になれば幸いです。
今回もお読みいただきありがとうございました!
ではまた!

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総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5