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「解説者の流儀」戸田和幸 洋泉社

解説者=解いて説くー「難解だからこそ、全ての人のために言語化する」

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皆さんはどの様な解説者が好きでしょうか。

解説者と一括りにいっても多くのタイプの解説者がいると思います。

例えば、松木安太郎さんの様なリアクション大きめな解説者、片山真人さんの様な選手との距離が近い解説者。

私は、戸田和幸さんの理路整然とした解説が大好きです。

日本の解説者の中でこれ程に、プロフェッショナルな姿勢で向き合っている方はいないんじゃないでしょうか。


本の内容に入る前に、ザックリですが戸田さんの経歴を紹介します。

生年月日:1977年12月30日 神奈川県相模原市出身

桐蔭学園高等学校を卒業後、1996年清水エスパルスに入団。

2002年日韓W杯では日本代表に選出

2003年イングランドプレミアリーグ トッテナムに移籍

2004年に再び清水エスパルスへ加入

その後、国内外のクラブを渡り歩き、2013年にシンガポールリーグのウォリアーズFCにて現役引退。

2014年からサガン鳥栖を中心に解説者としてのキャリアをスタートさせる。

徐々に活躍の場を広げていき、現在はJ1とプレミアリーグを中心に解説。


ざっくりとですが紹介させて頂きました。

さて、本の内容に入っていきます。文章書くのは、そこまで上手くないので特にお伝えしたい内容を3つに絞って紹介します。

①サッカーを言語化する

実況・解説を聞いていると実況者から「今のプレーはいかがでしか?」の問いかけに「ナイスプレーでしたね」「ナイスプレスでした」で終わらせる解説者の方を聞いた事があるかと思います。

そこは戸田さんは違うんではないかと。

解説というのはプレーに対しての感想や批評ではなく、ナイスプレーに至ったまでの起点を見つけ、そこまでの流れや動きを言語化するのが解説。地上波では、代表のみお祭りっぽく見る人から超マニアまで沢山の層が見ている為、言葉の深さ、長さは変える。有料コンテンツではその逆でお金を払ってサッカーを見たい人が集まる訳だから専門用語やピックアップする内容も変わる。

試合前に、よく「注目選手をあげてください」とアナウンサーが振ってくるのもお目にかかるだろう。大抵は、「メッシ選手です。」とサラッと答え「得点力とドリブルが凄い。」と理由を付け加える。

しかし、戸田さんは安易に「注目選手」を答えない。

日本は野球や相撲といった1対1といった謂わば「サムライ文化」がある。こういった競技で注目選手を挙げるのは間違いではない。

サッカーは違う

ピッチ上の22人がチーム戦術、個人戦術の中で時にはロジカルに、時にはパッションを全面に出し、共通認識を持ちながら戦う。そこから1人だけを切り取って注目選手にあげるのはチームに対して失礼。メッシ選手やCR7選手だって綿密なチーム戦術の中で周りに活かされ戦っている。

戸田さんが注目選手をあげる際は、一連のプレーの中からどうしてそいったプレー、得点に繋がったからこの選手が注目という事情を説明してからあげる。

また、「イラクのメッシ」といったテレビ局が見出しで使いたがる言葉も注意している。

2015年アジアカップでイラクのある選手を「イラクのメッシ」と称して欲しいという依頼があったそうだ。しかし前年に戸田さん自身、その選手のプレーを分析で見ており、とても「メッシ」には似ても似つかぬ選手だった。ここで、普通に言ってしまう解説者もいるかもしれないが、こういった誤った情報を口にしてしまうと自分の価値が下がり信用されなくなる。この場は、アナウンサーの方が「イラクのメッシ」と紹介した。

この他にも、紙媒体での仕事でも事前に文章を自身で確認してから提出する。あるサッカー情報サイトで戸田さんの発した言葉が断片的に切り取られ代表CBを批判したかのように書かれた。確かに発した言葉ではあるが話の前後が切り取られ、全く別の方向にすり替わり、違う内容になっていた。

解説者である以上「言葉」を大切に扱うのは大事なこと。

構成後の文章を一度確認し、自身で手直しする程「言葉」を大切にしている。この「解説者の流儀」を読んでいると戸田さんの「言葉使いへの熱意」「文章の息使い」といった熱量が存分に感じられる。



②サッカーは「○○〇〇」な姿勢で

皆さんは普段サッカーの試合をDAZNでどのように見ていますか?

ソファでくつろぎながら。お酒をひっかけながら。家事をしながら。色んな見方があり、どれも間違いではありません。

戸田さんは、サッカーは「前のめり」な姿勢で見ようと述べています。

ドイツ ブンデスリーガの観客はスタジアムでジッと試合を見る習慣があるそうです。それで相手の出方、自チームの状況を把握。そして、好プレーには惜しみない拍手、ピンチをチャンスに、チャンスには気持ちを増幅させる様な声援を送る。サッカーを知って試合の内容に「前のめり」になるからこそ出来る事です。

DAZNで試合を見る時も、サッカー経験者であれば何もせずともある程度の情報が得られるかも知れません。それでも、机の上でノートを開き「さあ勉強だ」と向き合えば初心者でも経験者以上の情報が得られます。そういった苦痛な時間こそが、サッカーを言語化するスキルを高められる特別な時間だと述べています。

戸田さん自身は解説をする試合を各チーム2試合、計4試合。CL FINALなどのビッグマッチだと各3試合、計6試合見るんだとか。試合数だけでもえげつないんですが、理解できるまで何度も巻き戻し、徹底して理解を深め、長い時では前半、後半の片方だけで2時間分析に要するそうです。やはり、プロフェッショナルは違いますよね。

2018~2019年に私も試合を見ながらノートを取って、プレーを分かるまで何度も巻き戻して確認した所、試合の理解度が上がり観戦力を少しですがあげる事ができました。

初心者でも向き合い方次第では、サッカー経験者を知識や言語化するといった部分で上回れることができるので是非実践してみてください。


③プレビュー、レビュー番組の必要性

日本の現在のサッカー番組では1時間枠で試合のハイライトを流し、専属の解説者がゴールシーンのみをざっくり解説といったのが大半です。

最近では、チームごとに戦術系YouTuberがおり分析、解説しています。

戸田さんはイングランドの番組を例に、プレビュー、レビュー番組の必要性を説いています。

イングランドではBBCでギャリー・リネカーが司会を務める「Match of the day」という番組がある。毎週土曜日の22時から90分、プレミアリーグの全試合ハイライトを流し、振り返る。注目試合ともなれば1試合10分を超え、ゲストの元選手らが試合について語る。そこでは、他人の意見に納得するだけではなく、しっかりと自分の意見も述べる。時には、意見が衝突し合う事もあるが議論する場が設けられている。

日本にもハイライトだけではなく、サッカーにフォーカスできる番組があれば、マスコミを含めたサッカー界全体が変わっていくだろうと述べています。

現在、戸田さんが自身で解説した試合をYouTubeでマグネットを使いながら1時間がつっりレビューしています。

戸田和幸「SHIN_KAISETSU」 https://youtu.be/TTBRMhKaN6o

また有料コンテンツになりますが同じ名前でサッカーの解説を主としたサロン的なものも運営しているので気になる方はググってみてください。

私自身も、山雅においてYouTubeで個々にレビューを発信する場だけでなく、戦術を大勢で議論できる場があればなと思っていますのでアイデア等協力してくれる方いましたらコメントお願いします。


ザックリと「解説者の流儀」戸田和幸を紹介させて頂きました。

Amazonでも購入できますので気になった方は↓のURLよりお買い求めください。

https://www.amazon.co.jp/dp/480031481X/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_zpncFbJPKA8NE

ここまでお読みいただきありがとうございました。

最後に、コメントや評価の方よろしくお願いします。



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