ガリバー旅行記読了

先日、兼ねてから読んでいたスウィフトの『ガリバー旅行記』を読み終えた。1980年に出版された平井正穂訳のものだ。この物語は主人公ガリバーが世界各地の不思議な種族の土地に迷い込み、そこで幾何かの時間をすごした後、故郷へと帰るという動きが繰り返されている。

現在一番有名な話はリリパットつまり小人族の国への旅であり、ガリバーが地面に倒され、縛り付けられているシーンであろう。しかし、原作は小人の国だけでは終わらない。

概要

全文は四篇からなり、その国の生活、文化、政治が語られ、時には戦争にも巻き込まれる。

それぞれ、

一篇 小人の国、リリパット国

二篇 巨人の国、ブロブディンナグ国

三篇 空中島、ラピュータとそこから故郷イギリスまでの特徴ある国々

四篇 馬が支配する国、フウイヌム国

が、ガリバーの訪れた国である。

設定は作りこまれ、その国の風土、言語、生活がうまく組み立てられ、大人にしか見えない皮肉で貼り合わされている。

本文は、古い本のため難しい用法が用いられているところもあったが、内容は比較的簡単であった。文章を簡易にすれば子どもでも読めるであろうし、事実、簡素化されたものを見かけたことがある。

詳しい内容は書くのがめんどくさく、また、読もうと思っている読者諸君の意欲をそぐことにもなりかねないので割愛させていただくが、第四篇だけは少しだけ紹介させていただきたい。


風刺(ややネタバレあり)

子どもの頃の心だけで読めば、単なる面白い小説であるが、大人になってから読むとこの小説は風刺に富んでいることに気づく。四篇は特にその印象が強い。人によく似た生物ヤフー(フウイヌム族はガリバーのことをその種族の名前で呼び、ヤフーはガリバーのように外から来たものが退化してヤフーになったのではないかと推察している)が馬と同じ見た目をしたフウイヌムによって統治されている。そこではヤフーは人類の醜悪化した部分のみを強調した存在として描かれている。それはヨーロッパの生活を痛切に批判したものであったが、現代の日本に生きる僕たちに対してもぶっ刺さってしまった。

人は今も昔も変わらず、醜悪な生き物だと感じざるをえず、自分がその一人であることを嫌が応にも自覚してしまった。

まさに表紙に書かれているとおりであった。

最後に

読書好きのみならず、すべての人に読んでもらいたい小説だった。この本を読み、自分の人生を、ひいては人類の営みを見直す機会が創られればと思う。

子どものころに夢に描いた冒険が、こんなにも自分の人生を批判するものになるとは、風刺とは恐ろしいものです。

ちなみに余談ではあるが主人公ガリバーは言語チートキャラである。ヨーロッパの主要言語をほとんど堪能に扱え、その国々に行ってからはその国独自の言語を一から学び半年ほどで会得している。また、医学や航海術に精通し、サバイバル技術にも長けている。十分にチーターである。

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